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2023年10月23日 (月)

最低賃金の日給と時給@『労基旬報』2023年10月25日号

『労基旬報』2023年10月25日号に「最低賃金の日給と時給」を寄稿しました。

 今年2023年は、最も高い東京都の地域最低賃金が1113円、最低の岩手県が893円となり、全国加重平均は1004円と初めて千円を超えました。さらに岸田首相が8月の新しい資本主義実現会議で、2030年代半ばまでに全国加重平均1500円を目指すと発言したことも話題を呼んでいます。しかしこの最低賃金が千円とか千五百円というのは、今から半世紀前にも飛び交っていた数字です。もちろん、時給ではありません。当時の最低賃金は日給建て表示だったのです。労働省/厚生労働省の『最低賃金決定要覧』各年度版によって過去半世紀の地域最低賃金の推移を見ると、日給表示が原則で、括弧書きで短時間労働者用に時給表示が附記されるという形でした。その後日給表示と時給表示が併記されるようになり、21世紀に入って日給表示が廃止されて時給表示のみとなったことがわかります。
 というか、今から半世紀前の1973年というのは、最低賃金はそれまでの業者間協定方式の流れを汲む産業別最低賃金が中心であって、ようやくすべての都道府県で地域最低賃金が設定されたのは1975年度からです。たとえば1973年度には東京都も大阪府は入っていません。この表で、最高値の欄はほとんど東京都ですが、初期には大阪府の方が若干高かったことがあります(正確には、日給表示では大阪が高く、時給表示では東京が高かった)。一方最低値の欄は、近年はほぼ沖縄県ですが、初期には東北諸県や鹿児島県のこともあり、直近の2023年度は岩手県でした。
年度
 
日給表示 時給表示
最高値 全国加重平均 最低値 最高値 全国加重平均 最低値
1973    1120       910     140       114
1974    1450           1015   181.25       127
1975    2064           1650     260       205
1976    2264           1900     310      237.5
1977    2481           2086     345            261
1978    2636           2226     365            279
1979    2796           2372     382            297
1980    2991           2541     405            318
1981    3182           2707     422            339
1982    3352           2858     442            358
1983    3458      2951     452            369
1984    3564     3357    3044     463      423     381
1985    3691     3478    3155     477      438     395
1986    3801     3583    3251     488      451     407
1987    3884     3666    3323     497      461     416
1988    4000     3776    3424     508      474     428
1989    4160     3928    3564     525      492     446
1990    4357     4117    3738     548      516     468
1991    4570     4319    3923     575      541     491
1992    4762     4501    4090     601      565     512
1993    4910     4644    4220     620      583     528
1994    5028     4757    4322     634      597     541
1995    5144     4866    4424     650      611     554
1996    5252     4965    4521     664      623     566
1997    5368     5075    4625     679      637     579
1998    5465     5167    4713     692      649     590
1999    5514     5213    4757     698      654     595
2000    5559     5256    4795     703      659     600
2001    5597     5292    4829     708      664     604
2002           708      664     604
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2018           985      874     762
2019          1013      901     790
2020          1013      902     792
2021          1041      930     820
2022          1072      961     853
2023          1113     1004     893
 さて、ではなぜ2002年度から日給表示が消えてしまったのでしょうか。これは、2000年12月15日の中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告で打ち出されたものなのです。ただ、その考え方は既に1981年7月29日の中央最低賃金審議会答申「最低賃金額の決定の前提となる基本的事項に関する考え方について」において示されていました。すなわち、そこでは「表示単位としては、賃金支払形態、所定労働時間などの異なる労働者についての最低賃金適用上の公平の点から、将来の方向としては時間額のみの表示が望ましいが、当面は、現行の日額、時間額併設方式を継続する」とされていました。それから約20年経って、日給表示をやめてしまう際には、次のようにやや詳しくその理由が説明されています。
・・・しかしながら、昭和56年から約20年を経過した今日、就業形態の多様化はさらに進展しており、パートタイム労働者の比率は、昭和56年の10.2%から平成11年には21.8%と倍加するなど、賃金支払形態が時間給である者は増加し、また、一日の所定労働時間の異なる労働者が増え、そのばらつきは増加傾向にある。さらに、実際に最低賃金の影響を受ける労働者の就業実態を見ると、主に賃金支払形態が時間給のパートタイム労働者が多くなっている状況にある。
 従って、このような経済社会情勢の変化の方向性を見据え、最低賃金運用上の公平の観点及び実情を踏まえれば、表示単位期間については、現行の日額・時間額併用方式から時間額単独方式へ一本化することが適当である。
 最低賃金法制定の歴史をたどると、それが中卒労働者の初任給の規制を念頭に置いたものから始まったことがわかります。つまり正規労働者層の最低限を下支えするものという位置づけであったわけです。ところが、次第にパート、アルバイトなどの時間給による非正規労働者が拡大してくるとともに、正規労働者の初任給は最低賃金よりも遙かに上方に位置するようになり、最低賃金によって直接左右されるのは主として非正規労働者層の方になり、その結果日給表示はあまり意味のないものとなっていき、時給表示の方が適切だと意識されるようになってきたということでしょう。
 ところが、過去十数年間にわたって地域最低賃金が大幅に引き上げられてきたことから、近年正規労働者の初任給が最低賃金に追いつかれるという現象が起こっているようです。連合集計による2023年春闘結果では、基幹的労働者の定義を定めている場合の企業内最低賃金協定の妥結・回答額は、単純平均で月額17万2339円、時間額で1068円であり、基幹的労働者の定義を定めていない場合は、平均で月額17万937円、時間額は1000円だったそうです。時代が一回りし、最低賃金が正規労働者の最低限であった時代に逆戻りしつつあるのかも知れません。そうすると、専ら非正規労働者用ということで時給表示に一本化してしまったことについても、改めて見直す必要が出てくる可能性もあるかも知れません。

 

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