建設業の標準労務費
建設現場の待遇改善へ賃金に目安 下回る契約は行政指導 国交省
大工や左官など建設現場で働く人たちの待遇改善につなげようと、国土交通省は賃金の目安を新たに設けます。
工事の契約の際、目安を大きく下回る賃金を設定した場合には、業者に対して行政指導も行う方針です。
国土交通省の社会資本整備審議会産業分科会建設部会基本問題小委員会は、2023年9月の中間取りまとめ「担い手確保の取組を加速し、持続可能な建設業を目指して」において、請負契約の透明化による適切なリスク分担と並ぶ大きな柱として「適切な労務費等の確保や賃金行き渡りの担保」を掲げ、適切な工事実施のために計上されるべき標準的な労務費を中央建設業審議会が勧告するとともに、労務費を原資とする廉売行為の制限のため、受注者による不当に低い請負代金での契約締結を禁止し、指導、勧告等の対象とすることを求めたようです。これは、建設業という産業政策の観点からの明確な賃金底上げ政策ということができ、大変興味深いものがあります。
この中間取りまとめでは、請負契約締結の際に労務費の相場観を与える役割をもち、廉売行為を規制するに当たっての参考指標としても用いるため、適正な工事実施のために計上されるべき労務費を中長期的にも持続可能な水準で設定し、これを「標準労務費」として、学識者・受注者・発注者から構成される公平中立な機関である中央建設業審議会から勧告すべきとしています。また、施工不良を引き起こしかねず、労働者の処遇を配慮しないような労務費を原資とする廉売行為を受注者が行わないよう制限するため、不当に低い請負代金での請負契約の締結を禁止することを検討すべきとし、併せて、受注者・注文者いずれの発意による廉売行為についても、禁止措置の実効性を確保するための警告、注意や勧告等の仕組みを導入するよう検討すべきとしています。さらに、「標準労務費」を参照した技能労働者への適切な水準の賃金の支払いや法定福利費の技能労働者への支払いを確保するために、法令において、建設業者に対し労働者の適切な処遇確保に努めるよう求めるとともに、標準約款に、適正な賃金支払いへのコミットメント(表明保証)や賃金開示への合意に関する条項を追加することを検討すべきであるとしています。
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