水町勇一郎『詳解 労働法 第3版』
水町勇一郎さんより、メガリスの如き巨大なるテキストブック『詳解 労働法 第3版』(東大出版会)が送られてきました。2年前の第2版からさらに50ページ近く増えて、36+1534ページに達しています。物理的な分厚さでいえば、年刊の川口美貴テキストや最近のピケティの『資本とイデオロギー』とそれほど変わりませんが、恐らく紙の薄さでページ数を極大化しているのでしょう。
https://www.utp.or.jp/book/b10033288.html
働き方のルールを定めた労働法制のすべてが分かる概説書。法令や告示・通達など制度の枠組みを分かりやすく解説するとともに、裁判など実際の紛争事例を数多く採り上げ現在の基準を鮮やかに示す。障害者雇用促進法の改正やフリーランス保護法の制定など法令の新たな動向や、名古屋自動車学校事件(最高裁)判決など近時の裁判例を踏まえた、待望の改訂版。
この2年刊の立法や判例を取り入れているだけではなく、細かなところでいろいろと書き込んでいるところがあります。たとえば、p34では工場法の「職工」の意義について注でやや詳しく論じています。
ただ、ここでの水町説には若干異論もあって、以前季労に書いたように、昭和8年5月24日発労第52号は「近時工場法ノ適用ヲ免レンカ為ニ職工間接雇傭ノ方法ニ依リ或ハ職工ヲシテ社員若ハ組合員タラシムル等工場経営ノ組織形態ヲ変更シテ工業主ト職工トノ間ニ使用関係ナシト為スモノ有之候処工場法ニ所謂職工トハ工業主ニ対シ従属的関係ニ於テ有償ニ工業的作業ニ従事スル労働者ヲ謂フ義ニ有之如上ノ場合ニ於テモ法規適用ノ対象タル工業主及職工間ノ使用関係ヲ否定スルコトヲ得ス従ツテ当然工場法ヲ適用スヘキ次第ニ有之候条御了知相成度」と言っていて、職工概念そのものを明確にしていたと思います。
なお、昨年の家政婦過労死事件については3箇所で触れていて、p59の注104では、「しかし、事業として組織的に編成され定型的な指示を受けて家事業務に従事している者の「家事使用人」性を肯定した点で、同判決には疑問がある」と述べていますが、その趣旨がいささか判然としません。そもそも家政婦はもともと派出婦会の派出の事業に雇用される者であったので、労基法が予定する家事使用人ではない、という私の考えとどう異なるのかもよく分かりません。
« 欧州労使協議会指令の改正に向けた動向@『労基旬報』2023年9月25日 | トップページ | 晴山一穂・早津裕貴編著『公務員制度の持続可能性と「働き方改革」』 »
« 欧州労使協議会指令の改正に向けた動向@『労基旬報』2023年9月25日 | トップページ | 晴山一穂・早津裕貴編著『公務員制度の持続可能性と「働き方改革」』 »
コメント