拙著短評ともう一つ
拙著『家政婦の歴史』に、読書メーターで「てくてく」さんの短評:
もう一つは、「古本虫がさまよう」というブログなんですが・・・・・
http://kesutora.blog103.fc2.com/blog-entry-6015.html
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冒頭から脱線で恐縮だが……。
「家政婦」と聞くと思い出すことがふたつある?
ひとつは、わが家には「家政婦」がいた。通いのおばさん。小学生の時か……。朝、通いでわが家にやってくる。午前8時?
洗濯とかやってくれていたのかな。昼御飯は、食卓で一緒に食べることも。おばさんは弁当をもってきていた。そのあと、夕方まで…。
母親は専業主婦だったが……。家政婦がきていたのは数年ぐらい。弟が生まれて育児がいろいろとあって、その分、家事をやってもらっていたのか? 実家は田舎でそこそこ広いから、庭掃除とかやることはあったのかも。正味3~4年ぐらい?
あと大人になってから知った「家政婦」(文学)の世界。これは「兄嫁文学」「未亡人文学」「看護婦文学」「女教師文学」と同じレベルでのもの。ただし、1983年からテレビ放送された『家政婦は見た』あたりから。フランス書院文庫でも「家政婦」モノが今はたくさん出ているが、昔はあまりなかった分野だとは思う。
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昔ながらの「女中」的な「家政婦」は核家族化もあって廃れていた。いっときの「ハイボール」のようなもの。近年、派遣婦としての家政婦が介護やらで『家政婦は見た!』で復活? 短時間の清掃等々をダブルインカム族のためにやってくれるようになってきたのかな?
ともあれ、家政婦の歴史を真正面から捉えて、生真面目な筆致で分析した書。
本書の「はじめに」も『家政婦は見た!』から話が始まっている。そしてある家政婦の「過労死」をめぐる裁判に触れ、家政婦は労働基準法に定める家事使用人にあらずという判決は不当であり、間違っているとの指摘。本格的な法律解釈書でもあるのだ。
いや、脱線は大いにけっこうなんですが、「家政婦は労働基準法に定める家事使用人にあらずという判決」じゃなくて、「家政婦は労働基準法に定める家事使用人であるという判決」というか、そもそも原告側もそれを争っていなくて、原告、被告、裁判官と当事者みんながそれを前提にしているけれども、それは間違っていると、本書の著者だけが史料に基づいて叫んでいるという構図なんです。
戦前からの派出婦の歴史、戦後のGHQのお達し(とりわけ、スターリング・コレットなる担当官の個人的見解(一知半解?)による「労働者供給事業の[ほぼ]全面的禁止」)による法律制度の改変等々による変化、戦後の派出婦会の隆盛等々……。
矢次一夫氏の『臨時工問題の研究』(労働事情調査所・1935年』や『この人々 私の生きてきた昭和史』(光書房)などの引用分析まだ出てくる。矢次さんも「家政夫」の仕事をしていたこともあった?
そのほか、個人的に注目している女流作家・由紀しげ子さんの作品に「女中っこ」というのもあるそうな。
うーーん、「戦後」は派出婦会は存在を許されず、家政婦紹介所という世を忍ぶ仮の姿を纏わざるを得なかったので、「隆盛」はしていないですし、矢次一夫は家政夫なんていう吞気な仕事じゃなくって、まさに監獄部屋の人夫として何年もただ働きさせられていたんです。
そこから話がだんだんとエロい方向に向かっていきまして、
ドラマは特に見ていないが、初期の市原悦子さんだと「おばさん家政婦」のイメージだが、そのあとのドラマでは松島菜々子さんも担ったとか。それだとフランス書院文庫的イメージもありうる。男(松岡昌宏)が演じる「家政夫」もあったということで、「家政婦」と「家政夫」と使い分けるようになっていればベターだと思うけど?
最新の「家政婦」事情を勉強するために、関連文献を読む必要があるかな?
望月薫氏の『溺れ家政婦: 恥ずかしい命令でも従います』 (フランス書院文庫) や、村崎忍氏の『僕の家には美しくていやらしい家政婦がいる』 (フランス書院文庫)など?
それらの本は未読だが、草凪優氏の『家政夫はシタ』 (双葉文庫)はマイブログで紹介ずみ。いうまでもなく『家政婦は見た』や『家政婦のミタ』のパロディ版? 以下再録風になるが……。
リストラされた40代の中年男が主人公。「一人会社」で、「家政婦」ならぬ「家政夫」となり、掃除や片づけなどあらゆる雑用仕事をこなす。奥さんはいる。
要請を受けて、行く家、行く家、なぜか美人妻、専業主婦、キャリアウーマンばかり。そしてなぜか誘惑され、なるようになってしまうという男のメルヘンを描いた佳作だった? ううむ、こんな酒池肉林の世界が、得られるのなら、リストラされなくとも早期退職してフリーになりたいものだ?
しかし、美人家政婦なら、家政婦としてのサラリーのみならず、メルヘンのサラリーももらえそうだが、家政夫の場合は、メルヘンのほうは現物支給のみ。
男女差別はやはり、「家政労働」という「同一労働」にあっても、「時間外労働?の有無」によって存在するようだ。
草凪さんの小説は、男女平等社会構築のためにも、これでいいのだろうか?と思案させる平成版プロレタリア小説であった。
そういう「関連文献」はわたしも未読ですが、そもそもあまり関連していないような気もしますが。
ちなみに、後に右翼の大物になる矢次一夫は若き日にポン引きに騙されて監獄部屋の人夫生活をしていたのであって、家政夫の酒池肉林の世界にいたわけではありませんぞ。
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コメント
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「古本虫がさまよう」というブログの著者さん、何と言ったら良いのか、論評するのに困るのですが(^^;
別記事で池上彰・佐藤優「日本左翼史」を取り上げています。
その中でどうして西尾末広を取り上げないのかと語りつつ、西尾末広氏の伝記として梅澤昇平氏の本を挙げています。
その出版社を見て卒倒しそうになりました(^^;
身内にこの出版社の本を読みまくっている人がいまして、困っております(^^;
そう言う人にはあまり近づきたくないですね(^^;
投稿: balthazar | 2023年9月13日 (水) 19時23分
いやまあ、どんな本を読まれても自由ですが、せっかくなら内容を正確に紹介していただけたらなお良かったのに、とは思います。
あと、確かに「家政婦」でネット検索すると、そのテのいやらしいのがぞろぞろ出てきますが、本書はそういうのではないので・・・・
投稿: hamachan | 2023年9月13日 (水) 23時12分