山下ゆさんが『家政婦の歴史』に8点
ブログ書評界の巨匠山下ゆさんに拙著『家政婦の歴史』を取り上げていただきました。8点という採点です。
『新しい労働社会』や『ジョブ型雇用社会とは何か』(ともに岩波新書)などで、日本の雇用システムの歴史や問題点をえぐり出してきた著者ですが、今回は「家政婦の歴史」というかなり小さな話を扱った本になります。
ところが、「家政婦」という1つの職業の変転の中に、日本の労働政策の大きな転換とそこで隠されてしまった矛盾点が見えてくるのが本書の面白さでしょう。
女中と家政婦、似たようなことをしているように見えてその出自は違い、しかし、その出自の違いはGHQの占領政策によって見えなくなってしまう…、このように書くとミステリーのようですが、本書はそうしたミステリーとしても楽しめると思います。
そう、日本の労働法制の裏面を暴く深刻な内容であるとともに、スリルたっぷりに楽しめる歴史ミステリーとしても楽しめるようにと思って書きました。
この後、山下ゆさんは大変丁寧に本書の筋をたどっていただいていますが、そこを飛ばして最後のパラグラフにいくと、
このように、本書は違うものだった女中と家政婦(派出婦)がいつの間にか同じものにされていき、法の保護の狭間に落ち込んでしまった歴史的経緯を描き出しています。
終章のタイトルは「「正義の刃」の犠牲者」となっていますが、GHQのコレットは当然ながら派出婦を切った自覚はなく、日本の役人たちも10年も立たないうちに切り捨てたことを忘れてしまっているという事例です。日本の戦後処理では、在サハリン朝鮮人など、法の狭間に落ち込んでしまい長年に渡って救済を受けられなかった事例がありましたが、実は身近な家政婦が法制度の狭間に落ち込んでいて、しかもほとんどの人がその理由に気づいていなかったというのは、なかなか考えさせられることです。
よ、本書で言いたかったことを見事に言語化していただいています。
« 『家政婦の歴史』に見られる人々のマヌケさ | トップページ | 高谷幸さんが朝日読書欄で『家政婦の歴史』を紹介 »
コメント