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2023年8月13日 (日)

オベリスクさんの拙著総評

51sgqlf3yol_sx310_bo1204203200__20230813093001 オベリスクさんが『家政婦の歴史』を読み終わって、総評をブログに書かれています。

https://obelisk2.hatenablog.com/entry/2023/08/12/080037

 濱口桂一郎『家政婦の歴史』読了。承前。第六章から最後まで読んだが、なるほど、すべて読んでしまうと確かに著者のおっしゃるとおり、ミステリの感すらあって、おもしろかった。それにしても、かなり入り組んでいて手剛く、また悲しいようなミステリであった。ただし、プロット(?)の手剛いところは、きちんと終章でまとめられているので、わたしにも何とかわかったと思う。「家政婦」という存在は、労働法的に制度と運用のねじれの作り出したエアポケットに落ち込んでいて、それに気づいた者は、長いこと誰もいなかったということである。 

そうなんです。いくつものストーリーが絡み合いながら奇怪な帰結をもたらしていくのに、役人も学者も弁護士も裁判官も誰もそのことに気がつかない。現実の日本社会で展開した「悲しきミステリ」を堪能していただいたようです。

ちなみに、

  以上がメインのお話ということになろうが、それ以外にも個人的に蒙が啓かれたところがあった。本書で家政婦と対置される、「女中」である。女中は住み込みで家事を担うわけだが、彼女らはかつて戸籍上、なんと働くところの「世帯」に属する存在だったのだ! これには驚いた。だから、10代が主な若い女性がきわめて厳しい労働条件の下で働かされていたのが実体なのに、法的には家族・親族のような扱いで、当然のように労働基準法などは適用されなかった。まさに、封建的な遺制である。ちょっとわたしは思ったが、(本書からは逸れるけれど)家庭における「妻」も、かつては女中と同じ扱いを受けていたということなのだろうな。労働しているにもかかわらず、それを認められていなかったという意味で。女性と労働。読後の「悲しさ」に、それもあると思う。

ほぼそういう話なんですが、正確に言うと、戸籍上は女中のような家事使用人も主人の「家」の一員ではなく、その親の戸籍に属しているはずです。戸籍というのは、先祖代々の本籍でもって人を振り分ける仕組みですから。本書で言っているのは「世帯」です。女中のような家事使用人は、主人の世帯の一員として、その生活のすべてを主人の支配下におかれるので、労働基準法の適用外となるのです。これに対して、家政婦の源流である派出婦は、そもそも派出先の世帯の一員などではなく、れっきとした他人でした。それが世帯員たる女中とごっちゃにされてしまう悲喜劇が本書のメインテーマとなるわけです。

 

 

 

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コメント

> 女中のような家事使用人は、主人の世帯の一員

女中については、民事ではなく、家事の枠になることの闇ですかね

メンバーシップ型雇用も、そういう側面を共有しているのではないですかね
いや、もちろん、法的には民事なんですが

当事者はいるのにエアポケットと言われてしまうのは、法的位置づけに関係なく、当事者は働き賃金を得ているのに、トラブルが起こるまで顕在化しなかったためかな。
エアポケットにしていたのは学者さんの方でしょう。なんとか会議の方も自分の身分には執心ですが市井のことは関心は引かれないのですね。あれだけ市川悦子さんのドラマはヒットしたのに。

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