職安法の解像度を上げる本は・・・
hamachan先生の最新刊を読むと職安法の解像度が爆上がるな。新書だし職安法を学ぶ際の副読本にも最適だと思った。
『家政婦の歴史』を高く評価していただくのは大変有難いのですが、とはいえ本書はあくまでも派出婦、家政婦という特定分野の歴史を追いかけた本なので、職安法全体の歴史については、本書の元になった労働政策レポート『労働市場仲介ビジネスの法政策-職業紹介法・職業安定法の一世紀』を見ていただいた方が、その全貌をつかめると思います。
https://www.jil.go.jp/institute/rodo/2023/014.html
約一世紀にわたる労働市場仲介ビジネスに対する規制の有為転変の歴史をたどり、職業安定法の将来像を考える上で役立つ情報を提供する。
労働市場仲介ビジネスに対する法政策は、ILO条約に沿って容認から規制、禁止へ、その後再度規制、容認へと転換してきた。その中でGHQの労働者供給事業禁止政策によって家政婦が有料職業紹介事業に移行したため、家事使用人とされてしまった。また、1980年代に問題となった求人誌規制はいったん消えた後、近年になって募集情報提供事業規制として登場した。
第1章 前史:職業紹介法制定以前
第1節 職業紹介事業の発生
第2節 営利職業紹介事業の取締り
第3節 労働者募集人の実態
第4節 公的職業紹介事業の始まり
第5節 ILO第2号勧告の制定
第2章 職業紹介法時代
第1節 職業紹介法の制定
第2節 職業紹介法による営利職業紹介事業の規制
第3節 職業紹介法下の営利職業紹介事業
第4節 労働者募集取締令
第5節 労務供給請負業の問題
第6節 派出婦会の登場
第7節 ILO有料職業紹介所条約・勧告
第3章 改正職業紹介法時代
第1節 職業紹介所の国営化と勤労動員政策
第2節 民営職業紹介事業の原則禁止
第3節 労務供給事業の規制
第4節 労務者募集の規制
第5節 労務報国会の結成
第6節 戦時統制と労務供給事業
1 従業者移動防止令
2 労務調整令
3 その後の省令改正
第4章 職業安定法体制の成立
第1節 職業安定法の制定
第2節 有料職業紹介事業の推移
1 有料職業紹介事業の厳格な規制
2 旧労務供給事業対象職種の有料職業紹介事業化
3 家政婦と家事使用人
4 家政婦紹介所の実態
5 その後の有料職業紹介事業
6 1949年法改正
第3節 無料職業紹介事業の推移
第4節 労働者募集の規制
第5節 労働者供給事業のほぼ全面的な禁止
1 労働者供給事業に対するスタンス
2 労働組合の労働者供給事業
3 請負と労働者供給事業の区分
4 供給労働者の使用禁止
5 コレット旋風
6 労働者供給事業規制の緩和
第5章 新たな労働市場仲介ビジネスの胎動
第1節 ILO有料職業紹介所条約
第2節 人材紹介型ビジネスモデルの展開と規制緩和
第3節 有料職業紹介事業の推移
第4節 労働者募集規制の見直し
第5節 労働者派遣法の制定
第6節 労働者派遣立法と連動した職業安定法の見直し
第7節 求人情報提供事業の規制の試み
1 求人情報誌規制をめぐる対立
2 民間労働力需給制度研究会報告書
3 審議会における議論の収縮
第8節 人材スカウト業、アウトプレースメント業への規制の試み
1 民間労働力需給制度研究会報告書
2 審議会における議論の収縮
3 最高裁判決による決着
第9節 国外にわたる労働力需給調整に関する制度の整備
1 民間労働力需給制度研究会報告書
2 審議会における議論の展開
3 1993年省令改正
第10節 家政婦と介護労働をめぐる問題
1 民営職業紹介事業への認識
2 新たなシステムの模索と介護雇用管理改善法
3 介護労働への労働者派遣システム導入の試み
第6章 労働市場仲介ビジネスの自由化時代
第1節 1997年の擬似的ネガティブリスト化
1 行政改革委員会規制緩和小委員会の意見
2 経済審議会行動計画委員会雇用・労働ワーキンググループの意見
3 中職審の建議
4 技巧的な省令改正
第2節 ILOの方向転換と第181号条約
1 ILO第96号条約に対する圧力の増大
2 ILO民間職業仲介事業所条約・勧告
第3節 1999年改正職業安定法
1 行政改革委員会から規制緩和委員会へ
2 雇用法制研究会
3 中職審の建議
4 1999年改正職業安定法
5 個人情報保護法制の先駆
6 有料職業紹介事業の完全ネガティブリスト化
7 無料職業紹介事業
8 労働者の募集
9 供給・派遣制度
10 その他の規定
11 求人情報・求職者情報提供と職業紹介との区分に関する基準
第4節 2003年改正職業安定法
1 手数料問題の推移
2 2003年改正への推移
3 2003年改正職業安定法
4 家政婦の労災保険特別加入と紹介手数料
第7章 情報社会立法としての新・職業安定法の時代へ
第1節 2017年改正職業安定法
1 規制改革の動き
2 求人トラブルをめぐる法政策の動き
3 雇用仲介事業等の在り方に関する検討会
4 労政審の建議
5 有料職業紹介事業関係の改正
6 労働条件明示義務の強化
7 求人申込みの拒否
8 募集情報等提供に係る改正
第2節 2022年改正職業安定法
1 リクナビ事件の衝撃
2 労働市場における雇用仲介在り方研究会
3 労政審の建議
4 募集情報等提供事業への規制
5 求人情報の的確な表示
6 個人情報の保護
第3節 フリーランスの労働市場仲介ビジネス
1 個人請負型就業者研究会
2 2022年改正時の議論
3 フリーランス新法における規定の試み
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