労務屋さんが『家政婦の歴史』を書評
https://roumuya.hatenablog.com/entry/2023/08/01/142950
女中とか家政婦とかいうのは大半の日本人にとってはフィクションの中でしか目にすることのない「関係ない」存在であるわけですが、そんな彼女たちの知られざる歴史と実態が描き出された本です、というとなにやら怪しげな気配もただようわけですが(笑)、基本的には家事労働者供給事業の法制史の本です。とはいえ小説や論評、事件などその時々の風俗もふんだんに盛り込まれており、背景としての(建設労働者や沖中仕といった)労働者供給事業の悪弊なども描かれていて読み物としても興味深く、私のような労働政策周りの人間にはまるで歴史ミステリーのような面白い本で、実際ほぼ一気読みしてしまいました。しかしまあまったくの善意に立脚した法規制が想定外の弊害をもたらすという図式は近年も繰り返されていて派遣労働というのはそういうものなのかもしれません。
この「歴史ミステリー」という言葉は、まさに私と文春の編集者とが狙っていた線です。
すべて公開された資料を厳密に読み解いていくことによって、誰も気がつかなかった歴史の隠された真実を明らかにするというのが、本書のモチーフでした。
なお私は本書で主役級の扱いで出てくる大和俊子という起業家にたいへん興味をひかれたのですがざっと調べた限りでは伝記とかの資料はないのね。
そう、本書で一部取り上げた当時の婦人雑誌の記事以外には、大和俊子という一世紀前のニュービジネスの旗手について書かれたものはほとんど存在しないのです。
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