前田正子・安藤道人『母の壁』
前田正子・安藤道人『母の壁 子育てを追いつめる重荷の正体』(岩波書店)をお送りいただきました。
https://www.iwanami.co.jp/book/b626360.html
保育園入所のために妊娠中から保活、父親は仕事に忙殺されワンオペ育児、時短を取れば職場では二軍扱い。ある自治体で認可保育園に入所申し込みをした全世帯への調査から見えてきたのは、絡み合いながら母を追い詰める「壁」の存在だった。自由記述に溢れる悲痛な肉声から、浮かび上がる「日本の母の生きづらさ」。
表紙の頭を抱えて悩む女性の表情がとても印象的です。
下記目次のように、保育の壁、家庭の壁、職場の壁という3つの壁に直面する母親の肉声が胸に突き刺さる本です。
はじめに 母親たちの肉声
第1章 母を追いつめる三つの壁
第2章 保育園入所が母親の運命を変える――調査で何がわかったか
第3章 保育の壁「子育て支援」が母を束縛する
第4章 家庭の壁 父親はパートナーか壁か
第5章 職場の壁 性別分業でつながる家庭と職場の壁
第6章 子ども罰とコロナ禍――母の壁は変わるか
おわりに 真に子どもを持つことが祝福される社会を
職場の壁というのは、その職場で働く女性の扱いだけの問題であるというほど単純ではありません。こういうのも職場の壁なんです。
夫の会社は女性活躍や母親に優しいと有名で、、母親になった社員は残業も転勤もしなくてよい。しかし、子育て中の女性社員が増えて優遇されるほど、他の社員にしわ寄せがいっている現状がある。代わりに私の夫のような男性社員は長時間働き、転勤も頻繁にある。そのため転勤族の妻である私は、資格があっても働けない。女性に優しい会社なのに、男性社員やその妻には恩恵はない。不公平でおかしい気がする。
これは、かつて『働く女子の運命』で、「育休世代のジレンマ」で「悶える職場」と二つの本のタイトルを並べて論じたことの延長線上ですが、職務無限定のメンバーシップ型の職場でなまじ女性に優しい施策を実施すると、そのツケが男性や未婚女性社員に回るという構造の現れですね。その結果、ジョブ型社会であれば有利であるはずの「資格があっても働けない」ことになる。
しかしこれこそが終戦直後の日本人が自分たちの民主主義として勝ち取り実現した職場と家庭の有り様の行き着いた姿でもあるわけです。
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このような表紙は以前の岩波書店ではあまりしなかったのでは。
岩波も編集者の考え方が昔と変わってきてるのでしょうか。
投稿: balthazar | 2023年7月 8日 (土) 05時46分