『逢見直人オーラル・ヒストリー』
労働関係のオーラル・ヒストリーを続々と出し、遂に今年には『日本的雇用システムをつくる 1945-1995』という大著をまとめた、梅崎、島西、南雲というコンビによるオーラル・ヒストリーの最新作は、元UAゼンセン会長、連合会長代行の逢見直人さんです。
さすがに1954年生まれ、1976年にゼンセン同盟に就職したという年代ですから、戦後活躍していたような戦前生まれ世代とは異なり、血湧き肉躍るような波瀾万丈の物語が展開されるわけではありません。いやまあ、その少し上の世代でも二宮誠さんみたいな伝説の武闘派はいるわけですが、逢見さんは一橋大学の津田真澄ゼミから、政策志向で労働組合に入った知性派なので、そのオーラル・ヒストリーも労働政策が中心になります。とはいえ、若き日に千葉県で小売業の産別最賃を実現するなど、現場での活躍話も入っています。
逢見さんが連合副事務局長からUAゼンセン会長であった時期は、政権交代で労働組合が選挙で応援している民主党が政権に就いた時期でもあるのですが、民主党政権の政策にはいろいろと思うところがあったようです。
逢見 それはありましたね。民主党が政権を取る時に、マニフェストでいろんな政権公約を出すんですけど、財源はどうするんだと問われるわけです。民主党の答えは、「財源はいくらでもある」と。霞ヶ関には、無駄な金がいっぱい残っているんだから、それを財源にすればいいということで、政権を取って事業仕分けをやるんですよ。事業仕分けの中で、1年生議員のことを「少年探偵団」と言っていたんですが、そういう人達が事業を見て何か無駄がないかということを探していって、それを質問するわけですよ。あれも無駄、これも無駄と切り分けられるんですけど、その中には連合が苦労して実現してきたものもあって、そういうものもバッサリ切り捨てられるというのがありました。とにかく、財源を探すために「切ってしまえ」みたいな感じがあって、そこは財源探しのためにせっかくできている仕組みを壊されるということの危機感はありましたね。
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この経歴はかなり異色ですね。龍井葉二や千葉利雄、桝本純は大卒でナショナルセンターや産別組織へ入職しその後も政策マンのような立場を最後まで全うしているのに対して、逢見直人は大卒から産別組織へ入職し、そしてその産別トップの指導者となっているのは一般的な日本の労働運動ではありえないキャリアです。ゼンセンでも高木剛や松浦昭彦は企業別組合の出身ですからかなり珍しいような気がします。
投稿: 希流 | 2023年6月14日 (水) 16時39分