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2023年6月 7日 (水)

高原正之「「毎月勤労統計不正」を巡る風説 そして誰も確認しなかった」

大正大学社会共生学部公共政策学科の高原正之さんより、『大正大学公共政策学会年報』第3号に掲載された「「毎月勤労統計不正」を巡る風説 そして誰も確認しなかった」の抜き刷りをお送りいただきました。通常は雑誌論文の抜き刷りの贈呈の場合はブログで紹介することはないのですが、今回はご本人から「ブログやマスコミでのご発言など何らかの形でこの内容が伝わるように発信していただければ有難い」とのお申し出があり、統計学的な判断はできませんが、法制的な問題点についてはその趣旨が理解できたと思うので、ご紹介しておきます。

もっとも、私は統計処理については専門的な知見を有しないので、詳細は当該論文自体に当たっていただくことが望ましいと思います。当該論文は大正大学のリポジトリに収録されているので、関心を持たれた方は是非リンク先で高原論文自体に目を通していただきたいと思います。

https://tais.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2212&item_no=1&page_id=13&block_id=69

毎勤の問題は2018年から2019年にかけてマスコミやとりわけ国会で炎上状態になりましたが、そこで前提とされていたことは当時の法制度に照らして間違っていたというのが高原さんの主張です。

 毎月勤労統計の 2004 年 1 月分の調査から、それまですべての都道府県で 1 であった常用労働者 500 人以上規模の事業所の抽出率が、東京都に限り 3 分の 1 に引き下げられた。抽出率が 1 であることは、全数調査であること統計学的には同義ではない。しかし、これを全数調査であると誤解して、この引下げが 500 人以上事業所は全数調査するというルールに反するという報道・議論が、2018 年末から 2019 年にかけて、盛んに行われた。この結果、毎月勤労統計を作成する厚生労働省への信頼は低下し、毎月勤労統計調査の回収率が低下するという事態を招いた。
 しかし、500 人以上事業所の抽出率を 1 とするルールは、2004 年当時存在せず、たとえ抽出率 1 を全数調査と解したとしても、この引下げは全数調査するというルールに違反するものでもなかった。なぜなら、このルールは 2017 年 2 月に作成され、2018年 1 月分の調査から適用されたものであり、2004 年には存在しなかったからである。この引下げを巡る報道・議論は、根拠のない風説に過ぎなかったのである。今後、このような過ちを繰り返さないためには、なぜ、このような根拠のない報道・議論が行われたか、なぜ誰もルールを確認しなかったのかを明らかにする必要がある。この論文はその試みである。 

高原さんによれば、抽出率を3分の1とした2004年当時には新統計法ではなく旧統計法が適用されており、旧統計法の下では抽出率は厚生労働大臣に委ねられており、違法ではなかったのに、ほとんどすべての人々が当時もあたかも新統計法下であったかのように勘違いして、違法だったと主張し、厚生労働省の設置した第三者委員会の報告書も当時の法制をきちんと確認することなく、漫然と違法であったかのように非難したのは、間違った認識であったというのです。

抽出率をどのように設定するのが適当であるのかないのかといったことについては判断するだけの見識を有しませんが、法制的に違法でなかったことを違法であったかのようにフレームアップしたとするならば、それはきちんと是正されるべきでありましょう。

 

 

 

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コメント

 ひどい話ですね。
 日本の社会、あるいは日本国民には「厚生労働省、そして政府は悪い事ばっかりやってる」と言う抜き難い不信感があるのでしょうか。
 
 他省庁の話になりますが、数年前に金融庁の報告が「老後の資金として2000万円」が野党陣営に捻じ曲げられて政府攻撃の材料にされかけた、と言うのがありました。
 これは現役引退後も現役時代と同じ生活をしたければ、と言う前提でそのためには2000万円の貯金が必要だ、と言う話でした。
 現にファイナンシャルプランナーの人たちの間ではこの報告書は妥当なものである、と言う評価だったそうです。

 「毎月勤労統計不正」問題では同時に政府の統計部門の人材不足、と言う深刻な問題点も明らかになっていますが、こちらも解消されてないですね。
 政府を攻撃できればいい加減でも何でもよかったという事でしょうか。

 政府への不信感は恐らくは第二次世界大戦が大失敗に終わり、日本政府、そして官僚などエリート層が信用できなくなってしまった、と言うのがあるのでしょうけれども。
 しかし今は国民主権なのですから自ら信用ある政府を作るのは主権者たる国民でもあるはずです。
 不信感を募らせるだけではダメだ、と言う事にいい加減気付いてほしいです。

 

この問題に関してはWikipedia に解説があります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%8E%E6%9C%88%E5%8B%A4%E5%8A%B4%E7%B5%B1%E8%A8%88%E8%AA%BF%E6%9F%BB

また当時の報道の例としては以下の記事があります。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4248/
クローズアップ現代 問題の核心は!?徹底検証・統計不正


>高原さんによれば、抽出率を3分の1とした2004年当時には新統計法ではなく旧統計法が適用されており、旧統計法の下では抽出率は厚生労働大臣に委ねられており、違法ではなかったのに、

違法であればもちろん批判されるべきですが、違法でなければ(合法であれば)批判すべきでないのでしょうか?高原氏の理論では、抽出率は厚生労働大臣に委ねられているので、厚生労働大臣が抽出率を(3分の1 ではなく)1000分の1に変更しても合法だという事になりますが、抽出率を1000分の1に変更したら批判されても仕方がないと思います。
また上記のNHKの取材によると、抽出率を変更した発端は調査を担う都道府県からの「負担を減らしてほしい」という要望に基づく部下からの提案を当時の課長が決裁した事だそうですが、この課長は後任の課長に変更を引き継いでいなかったそうです。この課長が大臣の判断を仰いでいれば多くの書類がやり取りされたと思うので、後任の課長が知らないはずはないと思います。つまり
  旧統計法で抽出率の決定を委ねられていた厚生労働大臣が知らないうちに課長の独断で抽出率が変更された
という事になると思いますが、そのような状況でも抽出率の変更は違法ではないのでしょうか?


>毎勤の問題は2018年から2019年にかけてマスコミやとりわけ国会で炎上状態になりましたが、そこで前提とされていたことは当時の法制度に照らして間違っていたというのが高原さんの主張です。
>法制的に違法でなかったことを違法であったかのようにフレームアップしたとするならば、

この問題が大きくなった(炎上した)のは、
 1.抽出率の変更が違法である
という事の他に
 2.担当課長が外部の有識者が集まる会議で、「全数調査を行っている」という、虚偽の説明をした
 3.全数調査でなく抽出調査を行う場合には復元処理が必要だが、行っていなかった
 4.復元処理を行わなかったため、誤った値が正式な統計データとして記録された
 5.統計データが誤っているため、雇用保険や労災保険が本来より少ない額しか支給されない事例が発生した
という理由があると思います。
私は、問題が大きくなった理由を(2.~5.を無視して)1.だけに限定する事は、法制的に違法でなかったことを違法であったかのようにする事に勝るとも劣らないフレームアップであると思います。

この記事とは直接関係はありませんが、この問題の関する特別監察委員会の委員長の 樋口 美雄 という方は、 (独)労働政策研究・研修機構理事長 となっていますが、hamachan先生と同じ職場でしょうか?(先輩?)

ご紹介いただき、ありがとうございました。

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