梅崎修・江夏幾多郎編著『日本の人事労務研究』
梅崎修・江夏幾多郎編著『日本の人事労務研究』(中央経済社)をお送りいただきました。
https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-45761-6
様々な学問領域で、あるいはそれらを跨ぐ形で展開されてきた日本の人事労務研究を振り返り、その成果を踏まえて将来の研究のあり方を展望。日本労務学会50周年記念の集大成。
というわけで、日本労務学会50周年を記念して、経済学、社会学、心理学、経営学、労働調査の5分野のこれまでの研究を振り返るという部分がメインで、その前と後に割と偉いクラスの方がエッセイ風の文章を寄せています。
はじめに(梅崎 修・江夏 幾多郎)
第Ⅰ部
日本の人事労務研究のこれからを展望する(江夏 幾多郎)
第1章 最近の人事労務研究における「管理」と「労務」(守島 基博)
1 12年前の問題提起
2 その後の展開
3 人事労務研究から人事労務が消えている?
4 労使関係テーマの衰退
5 おわりに
第2章 働く当事者からみた人事労務管理(久本 憲夫)
1 はじめに
2 「人事労務」研究の学際性と観点
3 気になる事実関係
4 おわりに
第3章 S ociety 5.0:新たな社会契約に向けて? (D.ヒュー・ウィッタカー著,江夏 幾多郎訳)
1 広い視野から見た日本の戦後モデル
2 バブル崩壊と一貫性の喪失
3 Society 5.0,DX,SX
4 Society 5.0の断層と持続可能な資本主義
5 おわりに
第Ⅱ部 日本における人事労務研究の50年を振り返る(梅崎 修)
第4章 人事労務研究にあらわれた市場と組織の理解:
経済学の観点から(勇上 和史・風神 佐知子・平尾 智隆・佐藤 一磨)
1 総 論
2 労働市場論による分析
3 組織の経済分析
4 非中核的な労働者に関する研究
5 今後の研究展望
第5章 社会の中の企業・生活の中の労働:
社会学の観点から(池田 心豪・山下 充・佐野 嘉秀・藤本 昌代)
1 人事労務管理をとらえる社会学的視座
2 研究レビューの方法
3 企業コミュニティ論の成立と展開
4 企業コミュニティの動揺と働き方・キャリア
5 今後の研究課題
6 おわりに
第6章 個人から捉えた人事労務研究:
心理学の観点から(坂爪 洋美・林 祥平・細見 正樹・森永 雄太)
1 人事労務分野における心理学研究とは何か
2 人事労務分野における心理学研究①:心理学分野の一領域としての人事労務研究
3 人事労務分野における心理学研究②:経営学への応用
4 人事労務分野における心理学研究のこれから
第7章 人事労務の定義・対象・手法の移り変わりを研究者はどう捉えてきたか:
経営学の観点から(江夏 幾多郎・田中 秀樹・余合 淳)
1 はじめに
2 経営学的な人事労務研究
3 人事労務研究における体系的文献レビューのレビュー
4 分析結果
5 発見事実の考察
6 おわりに
第8章 調査は人事労務研究をいかに更新してきたのか:
労働・職場調査の観点から
(梅崎 修・篠原 健一・南雲 智映・松永 伸太朗)
1 なぜ,調査がレビューの対象となるのか
2 先行する試みと本章のやり方
3 テキスト分析によるテーマの変遷
4 テーマ別に見た労働・職場調査の転機
5 労働・職場調査の未来
第Ⅲ部 人事労務研究と日本労務学会(梅崎 修)
第9章 人事労務研究の何がどう論じられてきたのか:
1 大会統一論題テーマの変遷(上林 憲雄)
2 時代の変遷に伴う人事労務研究の変容
3 おわりに
第10章 創設期の人物像やその後のいくつかの展開(白木 三秀)
1 はじめに
2 学会創設の趣旨
3 創設期の代表理事
4 研究奨励賞基金の創設の経
5 国際会議・国際交流の実施
6 学会名称変更の試みと結果
7 おわりに
実を言うと、この元になった2019年の公開討論会@早稲田大学には、この5分野に含まれない労働法政策に関して、わたくしも呼ばれて報告をしていますが,それは本書には含まれていません。
はじめのエッセイ風の文章のうち、久本憲夫さんの第2章では、メンバーシップ型雇用といっても、組織に対する積極的な関与、その中でも特に発言権が重要で、それがなかったらメンバーじゃなくてサーバントにすぎない、そんなものはサーバント型雇用だと言われていまして,それはそうなんですね。というか、所属型身分型雇用の原型はまさにサーバント型であり、ドイツの忠勤契約の退化形態としての僕婢契約(ゲジンデ・フェアトラーク)なわけですから、ほっとくとそういうのに陥ってしまうというのはその通り。逆に、そうではない戦後日本型のメンバーシップ型雇用というのは、戦後民主化の中で労働組合が経営を引っかき回す経営協議会とともに生み出されたなわけです。労働者の集団的発言権を,何に立脚して確保するかという点において、欧米の現場ブルーカラーがトレードやジョブにこだわったのに対して、戦後日本の労働者はメンバーシップにしがみついたのであって、それがなくなったら、言われるが儘に無限定の忠誠義務を負うただのサーバントではないか、ということになりますね。
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