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2023年6月14日 (水)

水島治郎『隠れ家と広場』

09558_1 水島治郎さんより『隠れ家と広場 移民都市アムステルダムのユダヤ人』(みすず書房)をお送りいただきました。

https://www.msz.co.jp/book/detail/09558/

 アンネ・フランクとスピノザは、ともに迫害されて故国を離れ、アムステルダムにたどり着いた移民二世だった。世界から人々を引きつけるこのグローバル都市は、すでに400年にわたって移民や難民を受け入れてきた「寛容」な街だ。とくにユダヤ人の受容では、西欧でも有数の規模を誇る。そして街の随所にある広場は、市民の日常生活の場であると同時に、移り住んだばかりの新参者にとっても、都市社会になじみ、人と繋がる重要な空間だった。アンネも引っ越してから8年間、思いっきり広場で友だちと遊んでいた。
 しかし1940年、ナチ・ドイツが侵攻してユダヤ人迫害がはじまると、アンネ一家のように隠れ家に潜んだ人たちもいたが、最終的にはオランダから10万人を超えるユダヤ人がアウシュヴィッツなど強制収容所に送られ、その多くが死亡した。
 他方アムステルダムでは、保育士、大学生、法律家などさまざまな人々が、命がけでユダヤ人を支援するレジスタンス活動に加わった。現在、世界のあちこちで戦火は絶えず、難民が増えつづけている。日本にとっても、この街の経験は示唆的だろう。
 なお、アンネとオードリー・ヘプバーンは同い年。このふたりの人生は、意外なかたちで交差する。戦争に翻弄されるなかで、いくつもの物語が生まれた。

水島さんといえば政治学者で、最近はポピュリズム関係で有名な方ではありますが、出発点はオランダ政治で、オランダにはいろいろと思い入れの深いものがあるのでしょう。本書は、アンネ・フランクを縦軸にアムステルダムの近現代史を行き来する歴史エッセイで、なかなかしみじみとした味わいのにじむ本になっています。

序章 「隠れ家」と「広場」
第2章 「寛容の国」オランダ共和国の光と影
第3章 19世紀アムステルダム、都市改革の夢――サルファーティの「約束の地」
第4章 メルウェーデ広場の青春――広場の少女アンネ
第5章 「涙の館」、オランダ劇場にて
第6章 保育士たちのレジスタンス
第7章 学生たちのレジスタンス――大時計の下で
第8章 カルマイヤーのリスト――法律家たちのレジスタンス
第9章 オードリー・ヘプバーンとアンネ・フランク――魂の邂逅
第10章 隠れ家、その後――アンネと仲間たちの「命のバトン」
第11章 終戦と解放――『アンネの日記』が刊行されるまで
第12章 戦後補償と歴史認識の新展開
終章 明日もきっと、元気でね――トークショーの女王、ソンヤ・バーレント

いまから四半世紀以上前に、当時隣国ベルギーのブリュッセルに勤務していた私はときどき車を飛ばしてオランダに行き、アムステルダムの街を歩いたこともあるので、本書を読みながらかすかな記憶を呼び起こしていました。

本書第4章で描かれる隠れ家生活以前の広場で愉しく遊ぶアンネの姿は、同じみすず書房から水島さんらが訳して出したリアン・フェルフーフェン『アンネ・フランクはひとりじゃなかった アムステルダムの小さな広場 1933-1945』の表紙にでています。さて、この女の子たちの誰がアンネでしょうか。答えは本書の64ページにあります。

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