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2023年4月17日 (月)

鈴木恭子「労働に「将来」を読み込む思考はどう構築されたか」@『社会政策』第14巻第3号

620543 社会政策学会の学会誌『社会政策』の第14巻第3号に掲載されている投稿論文、鈴木恭子「労働に「将来」を読み込む思考はどう構築されたか:工場法制定過程におけるジェンダーの差異化」は、恐らく多くの読者にとって思いもよらぬ視角からの論文で、いくつも考えさせられる点を発見できるのではないかと思われます。

https://www.minervashobo.co.jp/book/b620543.html

【投稿論文】
労働に「将来」を読み込む思考はどう構築されたか:工場法制定過程におけるジェンダーの差異化 (鈴木恭子)

今日雇用労働におけるジェンダー格差の一つの原因となっている「人材活用の仕組みと運用」の背後に、「将来にわたる可能性を含む転勤・昇進の有無」といった「将来を読み込む思考」があると考え、この「思考」がどこで雇用労働に組み込まれたのかを遡っていって、工場法に至り着く、というまことに知的スリリングな論文です。

具体的に工場法のどこがどのようにというのは是非この論文を見て欲しいのですが、元になったイギリス等の工場法では、既婚女性が家を空けたため家庭が崩壊したじゃないか、女性を家庭に戻せ、というのが女子労働規制の根拠であったのに対して、日本の工場法では、未婚女性について将来一家の主婦となり母親となるのだからというのが規制根拠となったという大きな違いがあり、「ヨーロッパの丸写しのようなもの」(@渋沢栄一)といわれながら実は日本独特の思想をインストールするものであったという発見が語られています。

・・・日本の雇用におけるジェンダー平等を目指す上では、私たちがかつてインストールした「将来を読み込む思考」を解除し、現在の処遇から切り離していくことが重要な課題となる。また、そうした思考が女性の役割を本質主義的に捉えることに由来することを認識し、将来にわたる役割期待を根拠とする「コースの異質性」による人事管理が「性差別」であるということを、改めて申し立てていく必要がある。

 

 

 

 

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コメント

> ジェンダー平等を目指す上では、私たちがかつてインストールした「将来を読み込む思考」を解除し、現在の処遇から切り離していくことが重要な課題

「将来を読み込む思考」が「ある(正規の)労働」と「ない(非正規の)労働」は同一な労働ではないから、待遇格差は合理的だ、という主張は結構、見られるような気がします

> どこで雇用労働に組み込まれたのかを遡っていって、工場法に至り着く

というのは、今まで、ほとんど指摘されて来なかった、ということですね

> ほぼ全員が男性で占められている総合職のみに社宅制度を設けているのは事実上の性差別にあたる
> 転勤の有無にかかわらず、社宅制度が適用されていた
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240513-OYT1T50224/

今回の訴訟物については、ということで偏った判決に見えるだけで
筋としては「ほぼ全員が男性で占められている総合職」がそもそも
性差別であるということですかね

ただ、そうすると、何らかの統計的な偏りがあれば、統計的差別に
なるようにも思われます

> 役割を本質主義的に捉えることに由来することを認識し、将来にわたる役割期待を根拠とする「コースの異質性」による人事管理

素人の質問で申し訳ありませんが

>元になったイギリス等の工場法では、既婚女性が家を空けたため家庭が崩壊したじゃないか、女性を家庭に戻せ、というのが女子労働規制の根拠であった
>日本の工場法では、未婚女性について将来一家の主婦となり母親となるのだからというのが規制根拠となった

イギリスでは、(問題になるほど)多数の既婚女性が雇用されていたが、日本では雇用されているのは未婚女性が多かった
という事でしょうか?素人考えでは既婚女性より未婚女性のほうが(年少なので)賃金が安く家事を行う必要も少ないので、雇用主にとって都合が良いように思います。日本では少ない既婚女性がイギリスでは雇用されていた というのはイギリスでは未婚女性だけでは工場女性労働者の需要をまかないきれなかったという事でしょうか?

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