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2023年3月16日 (木)

学校法人早稲田大学事件

Waseda_main1 本日届いた『労働新聞』は、私の書評が載っているわけではないのですが、判例解説のページに大変興味深い裁判例が載っていたので、ご紹介しておきたいと思います。労働新聞社のサイトに冒頭部分が載っています。

https://www.rodo.co.jp/precedent/146658/

学校法人早稲田大学事件(東京地判令4・5・12) 教員公募試験に不合格、公正でないと賠償請求 選考過程の開示義務負わず

公募された専任教員の選考過程の情報開示を求めたが、拒否された非常勤講師が損害賠償を求めた。書類選考で不合格だった。東京地裁は、職安法は根拠になり得ないなどとして請求を退けた。仮に開示が必要な個人情報としても、開示すれば採用の自由を損なうおそれがあるなどとしている。労働組合の団交要求も、義務的団交事項に当たらず応諾義務を否定した。

事案の概要

 原告Aは、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科が平成28年1月に行った専任教員の公募(本件公募)に応募したが、書類審査の段階で不合格となった者である。

 (1)原告Aが、被告には、本件公募の応募者に対して本件公募の採用選考過程や応募者がどのように評価されたかについて情報を開示し説明をする義務があるにもかかわらず、被告は、開示を拒否し続け、原告Aの透明・公正な採用選考に対する期待権および社会的名誉を侵害したと主張して、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料等を請求した。また、(2)原告Aの加入する原告組合が、被告に対し、本件公募の採用選考過程や原告Aの評価等に関する情報開示および説明を団体交渉事項とする団体交渉を申し入れたところ、被告が正当な理由なくこれを拒否したと主張して、団体交渉事項について団体交渉を求める地位にあることの確認を求めるとともに、被告の団体交渉拒否により団体交渉権を侵害され、労働組合としての社会的評価を毀損されたと主張して、不法行為に基づき、無形の財産的損害等を求めた事案である。

この事件の原告の方は、私は個人的によく知っている方なのですが、それは別にしても、募集とは何か、採用とは何か、という基本的なところで、大変いろんなことに関わるような重要な素材的意義のある判決だと思います。

とりわけ、採用の自由論との関係でこういうふうに論じているところは、

・・・被告は、採用の自由を有しており、どのような者を雇い入れるか、どのような条件でこれを雇用するかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるところ、大学教員の採用選考に係る審査方法や審査内容を後に開示しなければならないとなると、選考過程における自由な議論を委縮させ、被告の採用の自由を損ない、被告の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるからである。したがって、被告は、個人情報保護法28条2項2号により、これらの情報を開示しないことができる・・・

大学教授というのは、本来「その仕事ができる人がいますか?」というジョブ型採用の典型的なものだとすると(日本の裁判官は大学教授の整理解雇事件の判決なんかを見る限りそうは思っていないようですが)、本当にその仕事を最もよく遂行しうる人を選んだのか、そうじゃないのか、というのは重大な論点になるはずですが、全くそういう感覚はなさそうです。まあ、現実の大学教授の方々はメンバーシップ型雇用の中で生きているという実態があるからかも知れません。

本判決は、残念ながら判例雑誌では『労働判例ジャーナル』に概要が載っているだけですが、ぜひちゃんとした評釈で突っ込んで議論をしてみたいところです。

 

 

 

 

 

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コメント

本人による開示請求は28条ではなくて、33条のようです。
まあ、裁判官様も(糞仕事に追われて?)お疲れってことなの
かもしれませんね。

大学でいえば鈴鹿大の話もあるが
それより雑誌courierで
仏紙の疑問「日本では“機会の平等”が失われたのに、どうして階級や格差があまり認識されないのか」
てのがあるが
日本はストライキを起こすよりネットで憂さ晴らしするという弱い(?)連中が多いのかもしれないけど、それよりメンバーシップ型で若年層の失業率が低いから怒りのパワーを鎮める仕組みなんじゃないのか、と穿った見方になるわけで。

この件に関しても全くの素人ですが、

>本件公募の応募者に対して本件公募の採用選考過程や応募者がどのように評価されたかについて情報を開示し説明をする義務があるにもかかわらず、
>大学教授というのは、本来「その仕事ができる人がいますか?」というジョブ型採用の典型的なものだとすると

ジョブ型社会の欧米でも大学教授の公募はあると思いますが、欧米ではそのような公募において
  応募者に対して公募の採用選考過程や応募者がどのように評価されたかについて情報を開示し説明をする
義務があるのでしょうか?
私は、公募ではオーディションと同じように主催者は
  応募者に対して公募の採用選考過程や応募者がどのように評価されたかについて情報を開示し説明をする
義務はないと思うのですが。

> 本当にその仕事を最もよく遂行しうる人を選んだのか、そうじゃないのか、というのは重大な論点

「新卒採用で美男美女を優遇する」ことは、ルッキズムではないようです。
多くのフェミニストが強く依拠しているメンバーシップ感覚でやっている
限り、このように迷走するしかないのでしょう。

> 日本は整形大国。一方で、ルッキズムを問題視する意見も少なくありません。矛盾しているようにもみえます。
> 矛盾しているとはいえません。ルッキズムとは、人種や年齢、障害を持つ人などに対する偏見や差別のこと。単に『美男美女か、そうでないか』の話ではなく、もっと根深い問題です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d500bba4cd9207f8d5c5533493050d247749381d

“選考はブラックボックスで本当の採用基準は不明”という根本の部分は温存したまま、というのが如何にもですな

> 「選考はブラックボックスで本当の採用基準は不明。それなのに就活関連企業は『採用側がどう思うかわからないから化粧しておいた方がいい』と言い、就職率を気にする大学側は『だったらそうした方がいい』とする」と指摘。「大学側は本来、学生の側に立って『こういう表現は性差別だから駄目です』と言うべき。でもそれを受け流して差別を拡散・再生産している。そして一番弱い立場の学生が主体性を奪われる」と批判する。
https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2024/02/13/gender-149/

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