三吉勉『個別化する現代日本企業の雇用関係』
三吉勉『個別化する現代日本企業の雇用関係-進化する企業と労働組合の対応』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。
https://www.minervashobo.co.jp/book/b616614.html
日本の大企業セクターにおける個別化された雇用関係の現実とは――。労使関係論の方法である「どんな仕事をどれくらいやって、いくらもらうのか」という仕事に関する規則に着目、その規則を決定するために労使間でどのような合意形成のための取り組みがなされているのか、ある日本企業の企業別労働組合を事例に観察・分析、今後を展望する。
本書では一貫して「A社」といってますけど、2017年に大阪から東京に本社移転した日本の代表的電機企業といえばもちろんパナソニックです。
そして著者の三吉さんはパナソニックの労働組合にいた方なので(著者紹介には「民間電機メーカーにて技術者として勤務。労働組合の専従役員在任中に同志社大学大学院社会学博士課程修了」とあります)、実はご自分の関わった労使関係を描いた研究という面もあるのでしょうね。
第Ⅰ部 問題意識と分析枠組み
第1章 個別化された日本の雇用関係
1.1 分権化・個別化に関する国際的な状況
1.2 日本国内での労働条件の個別的決定
1.3 労働条件決定の個別化に対する労働組合の対応
1.4 課題の定義
第2章 個別化された雇用関係研究の方法
2.1 労使関係論の方法の適用──実体的ルールと手続的ルール
2.2 観察すべき個人単位の実体的ルール
2.3 ルールの構造を記述するためのフレームワーク
2.4 小 括
第3章 日本企業の組織モデルと労働者類型
3.1 現代企業の組織モデル
3.2 RE型への進化と労働者類型
3.3 労働者類型ごとのニーズ
3.4 小 括
第Ⅱ部 事例研究
第4章 個人別の仕事決定(目標設定と進捗管理)の実態
4.1 運営方針の伝達と個人業務目標の設定
4.2 日常の仕事決定のしくみ
4.3 上司部下の対話によるコミュニケーション(1on1)の取り組み
4.4 仕事決定に関するルールの構造と運用課題
4.5 小 括
第5章 労働時間決定への労働組合の関与
5.1 労働時間規制の分析枠組み
5.2 A社における労働時間管理の概要
5.3 A社-A労組における労働時間規制の実態
5.4 集団的な個人の労働時間規制
5.5 個人的な個人の労働時間調整
5.6 A労組組合員の労働時間に関する意識実態
5.7 労働時間決定に関するルールの構造
5.8 小 括
第6章 成果主義人事制度と労働組合
6.1 成果主義人事制度とは
6.2 A社-A労組の賃金制度改革の取り組み
6.3 成果主義人事制度導入時における労働組合の役割
6.4 個人別の評価の決定
6.5 個人の賃金を決定するためのルールの構造
6.6 小 括
第7章 持続可能な経営に向けた労使協議・経営参加
7.1 労働組合の経営対策活動の変遷
7.2 A労組の経営対策活動
7.3 経営対策活動に関連するルールの構造
7.4 経営対策活動のこれから
7.5 小 括
第8章 近年の経営環境の変化と労働条件決定への影響
8.1 労働時間決定の近年の変化
8.2 評価制度と目標面接の変化
8.3 企業文化・風土改革の取り組み
8.4 小 括
第Ⅲ部 総括と展望および今後の課題
第9章 日本企業の雇用関係の展望
9.1 RE型企業に向けて
9.2 企業別労働組合の針路
9.3 現代日本企業の雇用関係の研究課題
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