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2023年2月15日 (水)

だからいわんこっちゃない

K10013980391_2302141652_0214174353_01_02 毎度当たり前なことを報じる記事ですが、これが当たり前だと感じられない人がいるから困るんですね。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230214/k10013980391000.html“部活指導は労働時間” 未払い残業代支払うよう是正勧告 千葉)

千葉県にある私立の中学・高校で、休日などに教員が行った部活動の指導などの時間について、労働基準監督署は労働時間として認め、学校に対し、未払いの残業代などを支払うよう是正勧告を行いました。

これは千葉県浦安市にある東海大付属浦安中学・高校で、非正規の教員として働いていた20代の男性が会見で明らかにしました。

それによりますと、男性は去年3月までの2年間、休日や勤務時間外に部活動の顧問としての指導や大会の引率、学級の担任としての準備や生徒の対応などにあたっていたということです。

これについて、労働基準監督署は労働時間と認め、去年12月、学校に対して未払いの残業代や割増賃金の支払いを求める是正勧告を行ったということです。

男性は残業時間が80時間を超える月もあり、その後、体調を崩して学校をやめたということです。

男性は「これだけ多くの業務に追われてしまうと、生徒と向き合う姿勢が中途半端になり教育の質にも関わる。自分と同じような教員は多くいると思うので、学校には改善に努めてほしい」と話していました。

男性が所属する私学教員ユニオンは「公立校では、月給に4%を上乗せする代わりに、残業代は支給しないと定められ時間外も働かせ放題になっている。今回の是正勧告により、私立校では残業代が認められるのに、公立校で認められないという、『同一労働同一賃金』に反する実態が浮き彫りになった」としています。

学校は「これまで誠意を持って話し合いをしてきました。今後も話し合いを継続していきます」とコメントしています。

これが当然なのは、もちろんこの学校が私立学校だからです。

公立学校では、教師がやっていることの中身は100%変わらなくても、ただ教師が地方公務員であるからというそれだけの理由で、この私立学校がやったことが正当とされるのです。それはいかなる意味でも、教師の職務とは何ら関係がないのです。

ということを、繰り返し説明しているのですが、司法試験を通過してきたはずの裁判官ですら理解の乏しい判決を平然と書いたりしたりするので、権威に弱い私立学校の皆さんはついつい勘違いをしてしまうのでしょうね。

279_h1_20221215152301_20230215085501 (参考)「(公立学校)教師の労働法政策 」(『季刊労働法』2022年冬号(279号)

 結局、たまたま地方公務員の身分を有するところの原告に関するかぎり、超勤4項目以外の時間外・休日労働を行わせたことが給特法違反の問題を生じさせることは格別、また適用除外されていない36協定無締結の問題を生じさせることはあり得ても、少なくとも完全適用除外されている第37条に基づく割増賃金の請求は不可能であると言わざるを得ません。
 繰り返しますが、これは原告がたまたま地方公務員の身分を有しているからであって、それ以外のいかなる理由によるものでもありません。もし原告が私立学校の教師であったり、国立学校の教師であったり、公立大学法人附属学校の教師であったりしたら、教師としての職責には全く何の違いもないにもかかわらず、原告の訴えは認められていたはずです。
 しかしながら、さいたま地裁の裁判官も東京高裁の裁判官も、そのような深く突っ込んだ考察は一切ないまま、恐らく教育委員会側から提出された資料を何も考えずに丸写しにするような判決文を書いています。
・・・教員の職務は、使用者の包括的指揮命令の下で労働に従事する一般労働者とは異なり、児童・生徒への教育的見地から、教員の自律的な判断による自主的、自発的な業務への取組みが期待されるという職務の特殊性があるほか、夏休み等の長期の学校休業期間があり、その間は、主要業務である授業にほとんど従事することがないという勤務形態の特殊性があることから、これらの職務の特質上、一般労働者と同じような実労働時間を基準とした厳密な労働管理にはなじまないものである。例えば、授業の準備や教材研究、児童及び保護者への対応等については、個々の教員が、教育的見地や学級運営の観点から、これらの業務を行うか否か、行うものとした場合、どのような内容をもって、どの程度の準備をして、どの程度の時間をかけてこれらの業務を行うかを自主的かつ自律的に判断して遂行することが求められている。このような業務は、上司の指揮命令に基づいて行われる業務とは、明らかにその性質を異にするものであって、正規の勤務時間外にこのような業務に従事したとしても、それが直ちに上司の指揮命令に基づく業務に従事したと判断することができない。このように教員の業務は、教員の自主的で自律的な判断に基づく業務と校長の指揮命令に基づく業務とが日常的に渾然一体となって行われているため、これを正確に峻別することは困難であって、管理者たる校長において、その指揮命令に基づく業務に従事した時間だけを特定して厳密に時間管理し、それに応じた給与を支給することは現行制度下では事実上不可能である(文部科学省の令和2年1月17日付け「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」〔文部科学省告示第1号〕においても、教育職員の業務に従事した時間を把握する方法として、「在校等時間」という概念を用いており、厳密な労働時間の管理は求めていない。甲82)。このような教員の職務の特殊性に鑑みれば、教員には、一般労働者と同様の定量的な時間管理を前提とした割増賃金制度はなじまないといわざるを得ない。
 これら判決によれば、労働基準法第37条の適用除外は「教員の自律的な判断による自主的、自発的な業務への取組みが期待されるという職務の特殊性」によるものであり、それゆえ「教員には、一般労働者と同様の定量的な時間管理を前提とした割増賃金制度はなじまない」のだそうです。そうした教員の職務の特殊性は、いうまでもなく私立学校や国立学校の教員にもあるはずですが、これら判決を書いた裁判官の目には彼らの存在が映っていなかったのでしょうか。令和2年度の学校基本調査によれば、給特法の対象に相当する高校までの教員数は、私立学校は158,758人、国立学校は4,618人です。公立学校の834,191人に比べれば若干少ないとはいえ、無視していい数ではありません。
 しかも、当然のことながら労働基準法がフルに適用されている彼らについては、労働基準監督機関が法違反を容赦なく摘発しに来ます。2022年8月に厚生労働省労働基準局監督課が発表した「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」には、賃金不払残業の解消のための取組事例として私立学校のケースが載っています。
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 公立学校にでもなったつもりで4%の教職調整額を払い、時間外割増賃金を払わなかった私立学校が、部活動の時間も含めて不払い残業代を払わされています。現行法上当然のことではありますが、もしこの私立学校の経営者が上記さいたま地裁や東京高裁の判決文を読んだらどう思うでしょうか。我が校の教師たちも、「教員の自律的な判断による自主的、自発的な業務への取組みが期待されるという職務の特殊性」はなんら変わることはなく、「教員には、一般労働者と同様の定量的な時間管理を前提とした割増賃金制度はなじまない」のではないのか。労働基準監督署の監督指導は不当だ!と思うのではないでしょうか。そして、そう思った私立学校が、上記判決文を根拠として、職種としての教員にはなじまない割増賃金制度を、法律に書いてあるからといって押しつけてくるのは違法だと言って訴えを提起してきたら、これら判決を書いた裁判官たちは一体どういう判決を下すつもりなのでしょうか。恐らく、そんなことはかけらも脳裡に浮かばなかったのでしょう*8

 

 

 

 

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コメント

> 非正規の教員として働いていた

「教員という業務の特殊性である!」という方々の頭の中では
正規と非正規という区分は、どう整理されているのでしょうか

非正規の教員なんかいない。教員はみな、正規である。これも
教員の業務の特殊性から来るものだ、という感じでしょうかね

労働基準法に正規とか非正規という文字はなく、労働者である限り一律に適用されます。
法律上の回答は以上ですが、社会学的にはもう少し違いが出てきます。
違いがあるとすれば、雇用が安定した正規の私立学校教員であれば、給特法が適用されない以上明白な労働基準法違反であってもそれを労基署に訴えてもめ事を起こすのは、生涯稼得期待賃金額への配慮から思いとどまるディスインセンティブが高くなるのに対し、いつ切られるかわからない非正規労働者であれば、よりそれを訴えて取り戻すインセンティブが高くなるという点でしょうか。

> 生涯稼得期待賃金額への配慮から思いとどまるディスインセンティブが高くなるのに対し、いつ着られるかからない非正規労働者であれば、よりそれを訴えて取り戻すインセンティブが高くなる

違法性を認識していたら、そのような区分になるのでしょうが、裁判官も含めて、
「そもそも、適法、違法の認識が怪しいぞ」というのが趣旨ですかね。
それにしても(教員は経営者と同様に)「自律的だ」と本当に思ってるのかしら?

高裁で止まっているところからしましても、実際問題としては、
「その理屈付けは追認せずに、高裁の判決自体は妥当」として
控訴棄却みたいな感じになるだけのような気はするんですけど。
どこまでが裁判例として認められるのか、よく分からない問題。
きっと、裁判官様もお疲れなんでしょう。

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