生理休暇 スペインと日本
日本では76年前の1947年に労働基準法に規定された生理休暇が、このたびスペインで法制化されたというニュースが一部で話題を呼んでいるようですが、まずはそのスペインの話を見ておきましょう。ソースはユーロニュース紙。
Spain has just passed a law allowing those with especially painful periods to take paid "menstrual leave" from work, in a European first.
The bill approved by Parliament on Thursday is part of a broader package on sexual and reproductive rights that includes allowing anyone 16 and over to get an abortion or freely change the gender on their ID card.
The law gives the right to a three-day “menstrual” leave of absence - with the possibility of extending it to five days - for those with disabling periods, which can cause severe cramps, nausea, dizziness and even vomiting.
The leave requires a doctor's note, and the public social security system will foot the bill.
The law states that the new policy will help combat the stereotypes and myths that still surround periods and hinder women's lives.
スペインはヨーロッパで初めて特に苦痛な期間に有給の「生理休暇」をとることを認める法律を制定した。
木曜日に可決された法案は、16歳以上の者に妊娠中絶とIDカードにおける性別を変更する権利を与える性と再生産に関する権利のより広いパッケージの一部である。
この法律は三日間の「生理」休暇の権利、深刻な痙攣、吐き気、眩暈及び嘔吐を引き起こすほどの場合には五日間に延長可能、を与える。
この休暇には医師の診断書が必要で、公的社会保障制度が休業手当を支払う。
この法律は、新たな政策が女性の生活をめぐるステレオタイプと神話と戦うことを助けるであろう。
しかし、この法律をめぐっては国内に異論があったようです。
But the road to Spain’s menstrual leave has been rocky. Politicians - including those within the ruling coalition - and trade unions have been divided over the policy, which some fear could backfire and stigmatise women in the workplace.
Worldwide, menstrual leave is currently offered only in a small number of countries including Japan, Taiwan, Indonesia, South Korea and Zambia.
しかし、スペインの生理休暇への道は険しかった。連立与党を含む政治家や労働組合もこの政策をめぐって意見が割れたが、それはこれが職場における女性にとって逆噴射であり、烙印を押すことにならないかという危惧であった。
世界的には、生理休暇を規定する国はごくわずかで、日本、台湾、インドネシア、韓国及びザンビアである。
"It's such a lightning rod for feminists," Elizabeth Hill, an associate professor at the University of Sydney who has extensively studied menstrual leave policies worldwide, told Euronews Next.
The debates around menstrual are often intense, she said, with concern focused on whether such a policy can help or hinder women.
"Is it liberating? Are these policies that recognise the reality of our bodies at work and seek to support them? Or is this a policy that stigmatises, embarrasses, is a disincentive for employing women?"
「これはフェミニストにとって避雷針だ」と世界の生理休暇政策を研究するシドニー大学のエリザベス・ヒル准教授は語った。
生理休暇をめぐる議論は、それが女性を助けるのかそれとも妨げるのかという点に関心が集中してしばしば激烈だと彼女は語る。
「これは解放か?我々の職場における身体の現実を認識しそれを支援する政策か?それとも女性に烙印を押し女性の雇用へのディスインセンティブとなる政策か?」
Some Socialists have voiced concern a menstrual leave could backfire against women by discouraging employers from hiring them.
"In the long term, it may be one more handicap that women have in finding a job," Cristina Antoñanzas, deputy secretary of the UGT, a leading Spanish trade union, told Euronews Next when the draft bill was first unveiled.
"Because we all know that on many occasions we have been asked if we are going to be mothers, something that must not be asked and that men are not asked. Will the next step be to ask us if we have period pains?"
社会主義者の中には、生理休暇は使用者が女性を雇用する気を失わせることにより女性に対する逆噴射になるとの懸念を語る者もいる。
「長期的には、これは女性が就職する上でのさらなるハンディキャップとなりうる」と、スペイン最大の労働組合UGTのクリスチナ・アントニャンザス副事務局長は語った。
「我々はみんないつも母親になる気はあるのかと、本来聞いてはいけないし、男性は聞かれることのない質問を受けてきた。次に我々に聞かれるステップは、生理は苦痛ですか?だ」
少なくとも某国の某政党の地方議員さんが考えるほど、ただ素晴らしいだけの政策というわけではないし、そもそも我が日本国においても、76年前に生理休暇の規定が置かれて以来、その是非をめぐって様々な議論がいろんな立場から行われてきたものでもあるのです。
日本における生理休暇の歴史については、すでに様々な著書や論文が積み重ねられてきていますが、ここでは労働基準法施行直後に、当時の労働省婦人少年局が出したリーフレットを参考までに貼り付けておきます。
(参考)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2022/05/post-63a408.html
というのも、日本で1947年に労働基準法ができるときに、外国にその例がないのに生理休暇という制度が設けられたということはかなり有名で、『働く女子の運命』でも、p52にちらりとこう記述していました。
・・・このときに労働基準法が設けた生理休暇は、世界に類を見ない規定ですが、戦時中の女子挺身隊の受入時に実施されたことを背景に、戦後労働運動の高揚の中で生理休暇要求とその獲得が進み、行政内部でも谷野せつ氏が強く訴えたことから、実現に至ったといわれています(田口亜紗氏『生理休暇の誕生』青弓社)。
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