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2023年1月23日 (月)

日本型職務給とはスキル給?

本日の岸田首相の施政方針演説では、防衛力の強化や子供・子育て政策に比べるとやや注目が低いようですが、構造的な賃上げの中に「日本型の職務給」というのが出てきます。

https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2023/0123shiseihoshin.html

(三)構造的な賃上げ
 そして、企業が収益を上げて、労働者にその果実をしっかり分配し、消費が伸び、更なる経済成長が生まれる。この好循環の鍵を握るのが、「賃上げ」です。
 これまで着実に積み上げてきた経済成長の土台の上に、持続的に賃金が上がる「構造」を作り上げるため、労働市場改革を進めます。
 まずは、足下で、物価上昇を超える賃上げが必要です。
 政府は、経済成長のための投資と改革に、全力を挙げます。公的セクターや、政府調達に参加する企業で働く方の賃金を引き上げます。
 また、中小企業における賃上げ実現に向け、生産性向上、下請け取引の適正化、価格転嫁の促進、さらにはフリーランスの取引適正化といった対策も、一層強化します。
 そして、その先に、多様な人材、意欲ある個人が、その能力を最大限活かして働くことが、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げにつながる社会を創り、持続的な賃上げを実現していきます。
 そのために、希望する非正規雇用の方の正規化に加え、リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革を、働く人の立場に立って、加速します。
 リスキリングについては、GX、DX、スタートアップなどの成長分野に関するスキルを重点的に支援するとともに、企業経由が中心となっている在職者向け支援を、個人への直接支援中心に見直します。加えて、年齢や性別を問わず、リスキリングから転職まで一気通貫で支援する枠組みも作ります。より長期的な目線での学び直しも支援します。
 一方で、企業には、そうした個人を受け止める準備を進めていただきたい。
 人材の獲得競争が激化する中、従来の年功賃金から、職務に応じてスキルが適正に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給へ移行することは、企業の成長のためにも急務です。
 本年六月までに、日本企業に合った職務給の導入方法を類型化し、モデルをお示しします

この「定義」からすると、岸田首相の目指す「日本型の職務給」というのは、ジョブ、つまり座る椅子に値札の付いているジョブ給ではなく、労働者がジョブを遂行するスキルに値札をつけるスキル給であるようです。つまり、椅子ではなく、人に値札をつけるという意味では厳密な意味での職務給ではないようですが、「従来の年功賃金から、職務に応じてスキルが適正に評価され」云々というところからすると、具体的なジョブのスキルから切り離された、年齢とともに上がっていく一方の人間力としか言いようのない特殊日本的「能力」ではない、という点に力点があるようです。

でも、ジョブでもなければ不可視の「能力」でもなく、きちんとジョブと対応した具体的なスキルに的確な値段をつけるというのは、本気でやろうとすると結構大変な作業になると思いますが、さてどのようにやるのでしょうか。

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コメント

ジョブごとに、君のスキルは「あくまで、このジョブに関しては、現状、この値段になります(ほかのジョブに関しては、知るところではない)。」という方向性であれば、言い方が違うだけで実質、ジョブ型でしょう。そうではなくて「無限定に様々なジョブ」に関するスキルを総合して、人に総合的な値段を付ける、ということだと、極めて差別的な態様ですね

いや、スキルを評価して人間に値付けするなんて、マジでやれば不満や軋轢、職場の対立を招くものでしょう。まさにそのような事態を回避するところにこそ、ジョブ型の妙味があるだろうに。本音と建前の使い分けが巧みな西洋人の本領発揮である。

日本人にはそのような芸当は到底できないから、本音ダダ洩れで、人間的な、あまりに人間的な真正直さで(お前のような人間には高い金は払いたくない!!)いくのが日本型ということなのだろうか。

先週土曜日、ある経済系の勉強会でリスキリングが話題になりました。
この勉強会でリスキリングはジョブ型雇用を前提にしているらしいから、メンバーシップ型雇用が多い企業が多数の日本ではリスキリングは難しいのではないか、と私が意見を述べたところ、賛同者が多かったです。

他に日本の中小企業は人材育成に金をかけないからリスキリングは難しい。
資金力があり、経営力もある大企業の方がリスキリングが上手く行くのではないか、とも。
この辺りは考えさせられました。
日本の中小企業はジョブ型雇用が、そしてメンバーシップ型雇用が多いことを考えると皮肉です。
もっとも私もこの意見には同意します。
日本のジョブ型雇用は会社外でのスキルアップが難しいので。
むしろ中小企業向けには職業訓練校を大幅に拡充してリスキリングに近い働きを持たせるのが早道かもしれないですね。

今の日本の議論はいろいろ混線していますね。

まずもって、リスキリングが大事というのは、ほっとくと就職する前に身につけた特定のジョブのための特定のスキルでもって一生食っていこうとしがちなジョブ型社会の労働者を相手に、それじゃぁ駄目だぞ、もっと新たなスキルを身につけていかなきゃいけないぞと𠮟りつけるジョブ型社会ならではの政策なので、メンバーシップ型の日本でなかなか伝わらないのはその通りなのですが、

そもそもそれは、日本のしくみでは会社に素人として入った若者を上司や先輩がビシビシ鍛えて「スキリング」していき、2,3年すると別の部署に移されて、そこでまた素人として新たな上司や先輩から叩かれながら「リ・スキリング」していき、という、OJTによる社内リスキリングを常時やり続けているからで、

そういうメンバーシップ型の性質が希薄な(しかしジョブ型が確立しているわけでもない)中小零細企業では、そういう社内常時リスキリングも希薄なので、別に昨今出てきた話ではなくそれこそジョブ型社会のような意味でのリスキリングが必要です。というか、そのために職業訓練校などの公的施設がある。

でも、今世の中のエリート層に近い人々が念頭に置いてるのは、メンバーシップ型大企業で行われてきたような社内常時リスキリングが機能不全になりつつあるのではないかという危惧感なのではないかと思われます。

その中には、現場の余裕がなくなって、管理職の方も昔のように素人の失敗を温かく見守りながらOJTで育てていこうということができなくなったとか、会社の年齢構成がピラミッド型方逆ピラミッド型になり、(働かないおじさんを山のように鎮座させつつ)少数の若手をフル活動させないと回らないとか、あるいは情報通信技術には上司や先輩もスキルがなく、OJTで教えることもできず、といって社外でしっかり学ぶ余裕も与えないために、昔はそれなりに回っていた社内常時リスキリングのサイクルが空回りして、全然スキルが身に付かないまま時がたっていく、とか、まあいろんな要因が複合しているんだと思いますが、だからそれではうまくいかないからということで、いまさらのように、古めかしいリスキリングなんてことを言いだしてみているんじゃないかと思うんですね。

ジョブ型っていうのは、「そのジョブに関するスキル」を評価して
水準を満たしていれば、「そのジョブの資格」を発行するものです
よね。多くは、「職業的な学校教育」で行われるのでしょうけれど。
「そのジョブ」の値段=「そのジョブのスキル」の値段なる等式が
ほぼ成立するように感じますが

リスキリング1つ
迷走しそう。

定期購読している経済学の専門誌「経済セミナー」2・3月号の特集は「成長のカギはスタートアップにあり?」。
 特集の冒頭がSNSを運営するミクシィの代表取締役だった朝倉祐介さんと経済学者の伊藤雅俊さんの対談です。
 
 途中まで読み進めましたが、朝倉さんが面白い事を話しています。
 「私は「再チャレンジしにくい」と言う事自体を止めた方が良いと思っています。この言葉は「メンバーシップ型」の企業社会にいた人が、そこから1度飛び出してしまうと元の世界には戻れない」と言う意味では真かもしれません。しかし、それで社会復帰できなくなるとか、一生食っていけなくなるとか、そんなことは全然なくて、本当は何度でも再チャレンジできます。少なくともスタートアップの世界では、人々は引く手あまたで動き回っています。(略)」
 この発言の前で日本でスタートアップ企業が活性化することで雇用形態がなし崩し的に変革していくことを考えても良いのではないか。政治がリーダーシップをとって日本の雇用慣行を変えていくのは私は無理だと考えています、との趣旨の発言を朝倉さんはしています。
 ・・・こっちの方がメンバーシップ型からジョブ型への移行過程としては現実的なのでしょうね。

 もっともこのやり方ではメンバーシップ型雇用を取る企業をリストラ、あるいは自主的に辞めて転職した場合の給与の大幅な減収、非正規雇用しか再就職先がない、と言う問題は解消されないままなし崩し的に雇用形態の変化が進行してしまい、メンバーシップ型雇用形態を保証されていた労働者の待遇の悪化が大きな社会問題になるのは避けられないでしょう。
 と言う事で労働者の待遇の悪化を改善するための政治的リーダーシップがやはり求められる、と言う事になるでしょうか。

国家公務員から先にやってみればいいじゃないかと思ってしまうけれども、言わないのは先生なりの優しさですか。

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