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2023年1月15日 (日)

ソフトスキルの過小評価、過大評価

昨年末にEU閣僚理事会と欧州議会の間でほぼ合意に達した男女賃金格差に係る賃金透明性指令案の文言を眺めているのですが、

https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-15997-2022-ADD-1-REV-2/en/pdf

全文の訳はそのうちまとめて公表しますが、その中で興味を惹かれたところだけちょっとメモ的に報告。

元の欧州委員会の指令案にはなくってこの合意案に入っている文言のうち、第4条(同一労働又は同一価値労働)の第3項の最後のセンテンスが面白い。

3. Pay structures shall enable the assessment of whether workers are in a comparable situation in regard to the value of work on the basis of objective, gender-neutral criteria agreed with workers’ representatives where these exist. These criteria shall not be based, whether directly or indirectly, on workers’ sex. These objective criteria ▌ shall include skills, effort, responsibility and working conditions, and, if appropriate, any other factors which are relevant to the specific job or position. These criteria shall also be applied in an objective gender-neutral manner, excluding any direct or indirect discrimination based on sex. In particular, it shall be ensured that relevant soft skills are not undervalued.

3 賃金構造は、労働者が労働の価値に関して比較可能な状況にあるかどうかを、存在する場合には労働者代表と合意した客観的かつ性中立的な基準に基づいて評価することができるようなものとする。これら基準は直接であれ間接であれ労働者の性別に基づかないものとする。これら客観的な基準は技能、努力、責任及び労働条件、並びに適当であれば特定の職務又は職位に関連する他のいかなる要素をも含むものとする。これら基準はまた、性別に基づく直接または間接のいかなる差別も除き、客観的かつ性中立的な方法で適用されるものとする。とりわけ関連する対人能力(ソフトスキル)が過小評価されないよう確保するものとする。

ソフトスキルってのは、英辞郎によれば「対人的な交渉・指導・意思疎通などをうまく行える能力(または知恵)。ハードスキルと異なり、能力の測定が困難」ですが、ジョブ型社会では測定できるハードスキルばかりを高く評価してしまい、ソフトスキルはどうしても過小評価されてしまいがちなので、ちゃんとそれも評価しろよ、とわざわざ条文に書き込もうとしているわけです。

それが賃金透明性指令の文言にまで出てくるということは、ハードスキル偏重だと男性優位になりがちなので、女性の能力をちゃんと評価するためにはソフトスキルも重視しろよという文脈であるわけですね。

非ジョブ型社会の日本からみてこれが皮肉なのは、今までの男性優位型組織において評価される基準がむしろハードスキルよりもソフトスキル、つまり「あいつは根回しがうまい」みたいなものであり、そういう社会の中で女性はむしろ夜の席に付き合いもせずに平場で根回しもせずに正論ばかり言うみたいな目で見られがちだと言われていることです。話が一回りして裏返しになってしまっているというか。

 

 

 

 

 

 

 

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コメント

何だか、よく分からないですね。

 1:女性はソフトスキルが優位である(事実判断)
 2:だからソフトスキルを過少評価するべきでない(価値判断)

この価値判断って性中立的なんでしょうか。まあ、1の事実判断は、明示的に書き込まれてはいないようですが。ただ、

 欧州:ソフトスキルが「軽視」されているため、女性が不利になっている
 日本:ソフトスキルが「重視」されているため、女性が不利になっている

なのだとすれば、そもそも、1の事実に普遍性がない(女性差別的偏見?)のかもしれません

この修正は欧州議会の意見によるものですが、その元になった欧州議会意見では、
「to exclude any form of discrimination, and to ensure that skills associated with female-dominated jobs are not undervalued」
となっていて、看護や介護など女性が圧倒的に多い職場で求められるソフトスキルが(男性優位のマッチョな職なで求められるスキルと比べて)過小評価されないようにせよ、という趣旨のようですね。

1:(例えば、医者のような)高い価値を持つ職業において
ハードスキルの過大評価とソフトスキルの過小評価によって
女性の排除と男性による独占が発生している。是正すべきだ

2:(例えば、セックス・ワークや介護職のような)ソフト
スキルが重要な「職業の価値」が過小評価されて、不公正な
男女間格差が発生している。是正すべきだ

全く方向性が異なりますよね。1の方はバラモン感が満載の
ような気もいたしますが

セックスワーカーの労働者性に関する覚書
https://cir.nii.ac.jp/crid/1050287142174009344

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