「復職可能」の「職」とはザ・ジョブか、ア・ジョブか?
先日、某所の判例研究会でシャープNECディスプレイソリューションズ事件(横浜地判令和3・12・23)の議論に参加したのですが、改めて読み返してみて、出てくる医者がことごとくこの原告さんを「復職可能」と言っているのは何なんだろうか、と感じました。もちろん、判決文から間接的に事態を推測することしかできないとは言いながら、とてもまともに仕事ができそうにないこの人を「復職可能」とするのは、結局日本型雇用システムの故としか言いようがないなあ、と感じたところです。
日本以外のジョブ型社会であれば、傷病によって職務遂行不能に陥っていた人が「復職可能」かどうかを判断する基準は、その人の雇用契約に明記されている当該職務、ザ・ジョブ以外にはありえず、その当該職務を十全に遂行することができないのであれば、ほかの容易な単純労働がいかにできようがそんなことは何ら関係なく「復職不能」としか言いようがないはずです。
ところが日本のようなメンバーシップ型社会では、その人の雇用契約上限定されたザ・ジョブはなく、会社の中にやれそうな仕事(ア・ジョブ)を切り出してあてがうことが可能であれば、安易に「復職可能」と言ってしまいがちです。
そもそも、当該会社の中の具体的な仕事をよく知らない医者が安易に「復職可能」と言えてしまうのも、ア・ジョブならできますよ、という意味でしかありえないでしょう。
昨今、この手の事案が大変多くなってきていて、企業の人事部も苦労が絶えないようですが、そもそもそうなってしまっている根源は、やはり雇用システムに遡るのでしょうね。
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