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2022年12月15日 (木)

(公立学校)教師の労働法政策@『季刊労働法』279号(2022年冬号)

279_h1_20221215152301 『季刊労働法』279号(2022年冬号)が届きました。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/10385/

私の「労働法の立法学」は、今回は「(公立学校)教師の労働法政策」です。給特法の話が中心ですが、ややひねった議論を展開しています。

はじめに
 初めに断り文句を明記しておかなくてはなりませんが、日本国には教師という職種に着目した特別の労働法政策はほとんど存在しません。そのようなものが存在するという思い込みは、さいたま地裁や東京高裁の裁判官の脳内にも濃厚に漂っているようですが、それはいかなる実定法上の根拠も有していません。もちろん社会学的には、教師は医師と並んで一般的に「先生」と呼ばれる尊敬すべき高度専門職とみなされ、場合によっては「聖職」と呼ばれることもありますが、それに対応するような実定法上の特別扱いは存在しないのです。
 にも関わらず、教師は特別な職種であるから労働法上の特別な扱いが存在するという思い込みが実定法に基づいて判決を下すべき裁判官たちにも瀰漫してきたのには理由があります。現在もなお学校教師の大多数を占める公立学校の教師は地方公務員という身分を有しており、この地方公務員たる公立学校教師という特定の法的地位を有する教師についてのみ、地方公務員法を経由した労働法の特別扱いが存在しているからです。この特別扱いは、かかる身分を有さない私立学校や国立学校の教師には全く適用されないものである以上、それはいかなる意味でも職種としての教師に着目したものではありえませんが、これらの存在を脳内で消去してしまうことによって、地方公務員という身分に着目した特別扱い-給特法-を、あたかも教師という職種に着目した労働法であるかのように誤認してしまう者が絶えないのでしょう。
 本稿では、こうした誤認を生み出す元となっている給特法-現時点における正式名称は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」-をめぐる法政策の推移を、それに先立つ時期に遡って概観していきたいと思います。話がややこしいのは、給特法は1971年5月に制定されたときには「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」であり、(労働基準法がまったく適用されない)国立学校の教師に係る規定がメインで、(労働基準法が原則適用される)公立学校の教師はそれが準用されるに過ぎなかったのに、2004年度から国立大学法人化して民間人となった前者が適用対象から外れたため、後者だけが適用対象となったことです。このことが、給特法をめぐる奇怪なねじれを生み出しています。

1 労働基準法制当時の経緯

2 教職員の給与をめぐる経緯

3 教員超勤訴訟

4 1968年教育公務員特例法改正案

5 1969年の自民党案

6 人事院意見

7 中基審の審議

8 法案の国会審議

9 1971年給特法

10 国立大学法人化による改正

11 働き方改革のインパクト

12 2019年給特法改正

13 埼玉県事件の地裁・高裁判決

14 専門職としての教師にふさわしい労働法制の可能性

 

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