ジョブ型採用とメンバーシップ型採用の違い
こんなtogetterが転がっていたのですが、読んでみるとまさしくジョブ型採用を期待している現場の技術者と、メンバーシップ型採用しか眼中にない人事部との文化の違いがよく現れていました。
https://togetter.com/li/2025608(共同研究で大活躍してくれた大学院生が就活に来てくれたのに人事に話が回っておらず一次で落とされてしまった)
共同研究で大活躍してくれた大学院生、当社を第一に志望してくれて、私たちもぜひ来て欲しいと思っていたけど、どうやら一次面接で落としてしまったらしい。
ウチは推薦枠がないから仕方ないけど、この類のミスマッチは何とかして防げないのだろうか…採用活動をどう進めているのかよく分かりませんが、似たケースは過去にもあったようなので、部門との情報交換はできてない(あるいは、意図的にしていない)のだと思われます。取引先のご子息などは入ってきていますが…
ちなみに、本件は昨年の話で、真実を今週知りました笑
現場の技術者からすれば、まさに今現在必要なこのスキルのある人が欲しいというジョブ型採用が望ましいのでしょうが、人事部サイドからすればそんな枝葉末節のスキルなどどうでもよく、新卒採用から定年退職までの長期間何でもやらせられる柔軟な人災が必要なので、こういう事態が起こるのでしょう。
欠員募集と新卒採用
ジョブ型の社会では、企業がある仕事を遂行する労働者を必要とするときに、その都度採用するのが原則です。つまり募集とは基本的に全て欠員募集であり、応募とは全て具体的なポストに対する応募です。従って、その採用権限は、当然のことながら労働者を必要とする各職場の管理者にあります。英語でいうボスが採用するわけです。人事部に採用権限はありません。
これに対してメンバーシップ型の社会においては、読者の多くが経験しているように、学校から学生や生徒が卒業する年度の変わり目に、一斉に労働者として採用します。いわゆる新規学卒者一括採用(新卒採用)が日本の特徴ということになります。新卒採用が社会の主流であることを示す言葉が、中途採用という不思議な言葉です。ジョブ型社会では、全て欠員募集による採用なのですから、どんな仕事をするのかさっぱり分からない新卒採用などということは、そもそもありえません。これは、ジョブ型社会では新卒者を採用しないという意味ではありません。超エリート校の卒業生であれば、卒業証書が最強の職業資格なので、卒業と同時に採用することはありえます。しかし、それはあくまでも特定のジョブを遂行する高いスキルを持っているとみなされたがゆえに、フライングゲット的に採用されているのです。内定が既に雇用契約のメンバーシップ型
しかし、日本的新卒採用の奇妙さはそれだけではありません。日本では非常に多くの場合、実際に仕事を開始する数か月前から内定と称する雇用契約に入ります。内定が雇用契約そのものだといっているのは、1979年7月20日の大日本印刷事件最高裁判所判決です。民法によれば、雇用契約とは労働に従事することと報酬の支払いの交換契約のはずです。ところが、内定した人は労働に従事もしませんし、報酬も払われません。労働と報酬の交換のない雇用契約というのは訳が分かりません。本来ならこれは雇用契約ではなくて、雇用契約の予約のはずです。しかし、これは予約ではなくて雇用契約そのものだとされています。メンバーシップ型の社会においては、具体的に労働に従事したり報酬が支払われたりすることよりも、会社の一員であるという地位ないし身分を設定することの方がはるかに重要であるということを、この内定という概念が雄弁に物語っているということもできましょう。
日本において一番重要なのは、採用権限が、ある仕事をする労働者を必要とする現場の管理者ではなく、本社の人事部局にあるということです。なぜ採用権限が本社の人事部局にあるかというと、それは個々の職務の遂行ではなく、長期的なメンバーシップを付与するか否かの判断だからです。これが日本の採用法理の根源にある考え方です。
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