石田信平・竹内(奥野)寿・橋本陽子・水町勇一郎『デジタルプラットフォームと労働法』
石田信平・竹内(奥野)寿・橋本陽子・水町勇一郎『デジタルプラットフォームと労働法 労働者概念の生成と展開』(東京大学出版会)をお送りいただきました。ありがとうございます。現下の最重要課題に対するもっともふさわしい人々の手による突っ込んだ研究書です。
http://www.utp.or.jp/book/b610767.html
ウ―バーイーツなどデジタルプラットフォーム・ビジネスの台頭は、単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」の登場など従来とは異なる社会現象を生み出し、労働法の世界にも新たな課題を投げ掛けている。この近時の大きな変化のなか、これらを近視眼的に捉え法技術的な議論を展開するだけでは、問題の本質に迫ることは難しい。そもそも労働法はどのような社会状況のなかで生成し、展開され、今日に至っているのか。プラットフォーム・ビジネスの出現と成長が、労働法の基盤や構造にどのような課題を投げ掛けているのか。そのなかで各国はどのような法制度の改革を行おうとしているのか。問題の解決に向け、本書は労働法の基底にある「労働者」概念にまで遡り、日本・ドイツ・フランス・イギリス・アメリカを対象に、歴史的・比較法的な視点からプラットフォーム・ビジネスがもたらす課題と展望を明らかにする。
プラットフォーム労働の本質を論ずるためには、まず労働者概念の根源に立ち返って考えよ、という骨太な本です。
政府のフリーランス新法は新聞報道によると紆余曲折しているようですが、まずはじっくりと本書を読み込むところから始めた方がいいのかも知れません。
本書の末尾で水町さん曰く:
・・・日本では、フリーランスの拡大をめぐる問題に対して、2021年3月にフリーランス・ガイドラインが策定され、現在、フリーランス保護新法の制定に向けた動きも進んでいる。しかし、その議論や改革の内容を比較法の視点から見ると、必ずしも十分なものとはいえない。プラットフォーム就業者、さらにはフリーランス一般をめぐり、労働法・社会保障法の一般的な適用対象とされる「労働者」概念をどのようなものとするか、そこで「労働者」に該当しないとされた独立自営労働者(個人事業者)に対してどのような社会的保護(人間としての保証)をどのように形で及ぼすかなど、労働法・社会保障法の根幹に関わる問題についても、検討すべき課題は山積している。本書でしめされた議論の方向性や課題を基礎としつつ、今後さらに建設的な議論が展開されることを期待したい。
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