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2022年10月13日 (木)

安藤優子『自民党の女性認識-「イエ中心主義」の政治指向』書評

71oxatttlml-1 例によって月一回の『労働新聞』の書評コラムですが、今回は安藤優子『自民党の女性認識-「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店)です。

https://www.rodo.co.jp/column/138093/

 安藤優子という著者名に聞き覚えのある方は多いだろう。テレビ朝日やフジテレビのニュースキャスターとして長年活躍してきた彼女は、一念発起して上智大学大学院に入学し、博士号を取得した。その博士論文が本書である。彼女は1958年生まれで筆者と同年齢。つまり均等法以前の世代であり、初めは男性司会者に「うなずく」アシスタントという役割から、政治の現場を取材し、メインキャスターを務めるようになる中で、政治家の、とりわけ自民党の女性認識に問題意識を持つようになったことがその背景にある。
 この手の議論ではだいたい、伝統的な価値観が残存しているため云々という話になるのだが、彼女は意外なところに目をつける。1970年代後半から1980年代にかけての時期の自民党政権の思想的再編成に着目するのだ。この着目は、筆者の労働政策の時代区分とみごとに一致する。それまでの高度成長期における欧米ジョブ型社会を理想像とする近代化主義がやんわり否定され、それよりも優れたモデルとして日本的な集団主義(あるいはむしろ「間柄主義」)が称揚され、封建的だと否定的なまなざしを向けられがちだった「イエ社会」原理が、欧米よりも競争力の高い日本の強さの源泉として賞賛されるようになった時代だ。
 労働政策においては、この転換は労働力流動化政策から雇用維持・社内育成重視政策への転換として現れたが、社会保障政策においては日本型福祉社会論、すなわち福祉の基盤は家庭であり、主婦が「家庭長」として外で働く男性を支え面倒を見、余った時間はせいぜいパートとして働くというモデルの称揚として現れた。彼女が引用する自民党研修叢書『日本型福祉社会』(1979年)には、「このような日本型社会の良さと強みが将来も維持できるかどうかは、家庭のあり方、とりわけ『家庭長』である女性の意識や行動の変化に大いに依存している。簡単にいえば、女性が家庭の『経営』より外で働くことや社会的活動にウエートを移す傾向は今後続くものと思われるが、それは人生の安全保障システムとしての家庭を弱体化するのではないか」といった記述が頻出する。皮肉なことに、国連の女性差別撤廃条約が成立し、男女均等法に向けた動きが始まるこの時期に、性別役割分業論を宣明する政策文書が作成され、それが配偶者特別控除やパート減税、第3号被保険者等に結実していくことになる。
 一方政治の世界では、それまでの派閥解消を掲げる政党近代化論が「古臭い」と否定され、派閥という「大イエ」の連合体としての自民党こそが日本型多元主義の現れとして称揚される。曰く「日本の保守党は、日本社会の組織的特質にしっかりと立脚した個人後援会-派閥-政党というゆるやかな組織原則を堅持するべきだ」(グループ1984年「腐敗の研究」)。そして、この時期に再確立した「イエ中心主義」が、いまや国会議員の過半数を占める二世三世などの血縁による議席継承を生み出していると説くのである。本書の後半はこの観点からの自民党議員のキャリアパス分析なのだが、ここの評価は人によってさまざまであろう。個人的にはかなり疑問がある。むしろ、同じ共産党一党独裁でありながらソ連と異なり共産党幹部二世の「太子党」が政治権力を握る中国との比較があってもよいのではないかと感じた。

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