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2022年9月16日 (金)

育児休業給付の法政策@『季刊労働法』2022年秋号(278号)

278_h1768x1086_20220916085401 『季刊労働法』2022年秋号(278号)に、「労働法の立法学」第65回として「育児休業給付の法政策」を執筆しました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2022/09/post-3ba57a.html

はじめに
 
 新型コロナウイルス感染症が急速に蔓延し始めたさなかの2020年3月に成立し、翌4月に施行された改正雇用保険法により、育児休業給付は失業等給付から独立し、子を養育するために休業した労働者の生活及び雇用の安定を図るための給付と位置付けられました。そしてこのため、育児休業給付の保険料率(1000分の4)を設定するとともに、経理を明確化し、育児休業給付資金を創設することとされました。
 その後の2年半の間、日本の雇用政策はコロナ禍に振り回されたこともあり、この育児休業給付の問題はあまり注目を集めることはなかったようですが、労働法政策の観点からは興味深い論点がいくつもあります。今回は育児休業給付の展開を中心に置きつつ、それに関連するさまざまな制度の来歴を見ていきたいと思います。なお、本誌2020年秋号(270号)で取り上げた介護休業等に関わる問題は原則として対象外です。
 
1 育児休業と関連制度の展開
 
(1) 育児休業法の制定
(2) 深夜業と時間外労働の免除請求権
(3) 子の看護休暇
(4) 有期雇用者の育児休業請求権
(5) 育児休業期間
(6) パパクォータから父親出産休暇へ
(7) 勤務時間の短縮と所定外労働の免除
(8) その他

2 少子化対策
 
(1) エンゼルプラン
(2) 次世代育成支援対策推進法

3 育児休業給付
 
(1) 育児休業奨励金
(2) 育児休業法制定時の議論
(3) 育児休業給付の創設
(4) 育児休業給付の展開
(5) 育児休業給付の実績
(6) 育児休業給付の独立
(7) 出生時育児休業給付金
(8) 雇用保険制度研究会

4 その他の子育て支援関連制度
 
(1) 健康保険法による出産手当金等
(2) 保育サービス

5 子育て支援に関する改革論
 
(1) 子ども・子育て新システム検討会議
(2) 産前・産後・育児休業給付案とその消滅
(3) 仕事・子育て両立支援事業
(4) 2022年の新たな議論

 2021年11月に官邸に設置された全世代型社会保障構築会議では、再び育児休業給付の位置づけの見直しの議論が提起されています。例えば2022年3月の第2回会合では、「育児休業給付を雇用保険制度の給付としていることを見直し、より個人としての取得の権利を確立し、非正規雇用者を含めて子育て支援を前面に出した制度に見直していくべき」という意見が示されています。同年5月にとりまとめられた「議論の中間整理」では、この考え方は明確には示されていませんが、「子育て・若者世代が子どもを持つことによって収入や生活、キャリア形成に不安を抱くことなく、男女ともに仕事と子育てを両立できる環境を整備するために必要となる更なる対応策について、国民的な議論を進めていくことが望まれる。その際には、就業継続している人だけではなく、一度離職して出産・育児後に再び就労していくケースも含め、検討することが重要である」という一節には、その発想が感じられます。今後どのような方向に進むかはまだ分かりませんが、子ども・子育て新システム構想で一時打ち出された案が再び登場する可能性は高そうです。実際、全世代型社会保障構築本部事務局総括事務局長の山崎史郎氏(前駐リトアニア大使)は、2021年11月に出版した小説『人口戦略法案』(日本経済新聞出版)の中で、育児休業給付等と児童手当を合体させた「子ども保険」の創設を訴えています。
 一方、内閣府の経済財政諮問会議では、2022年4月の第4回会議で有識者議員から「育児休業給付は、支給対象が雇用保険の被保険者に限定されている。必要な者には、制度にかかわりなく、子供の養育のために休業・離職していずれ復職するまでの間、給付が行われるようにすべき」との提起がなされています。同年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)では、「こども政策については、こどもの視点に立って、必要な層の理解を得ながら、社会全体での費用負担の在り方を含め幅広く検討を進める」とした上で、わざわざ「安定的な財源の確保にあたっては、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組みについても検討する」と述べており、育児休業給付等をベースにした新たな社会保険制度(=子ども保険)の導入がややぼかした表現ながら暗示されているように見えます。
 こういった動きが今後どのような法政策につながっていくのか興味深いところです。

 

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