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2022年9月26日 (月)

賃金はなぜ上がらないのか-労使関係論的説明

747_10 『日本労働研究雑誌』10月号は「労使関係における集団の意義」が特集です。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/new/index.html

提言 労働組合運動再構築への視座 新川敏光(法政大学教授)

解題 労使関係における集団の意義 編集委員会

論文 日本的雇用慣行における集団─労使関係と賃上げを中心に 呉学殊(JILPT統括研究員)

労働法における集団の意義・再考─労働者代表による労働条件決定をめぐる法的課題 桑村裕美子(東北大学教授)

「男女平等参画」から「クミジョ」へ─労働組合における女性の代表性の現状と課題 本田一成(武庫川女子大学教授)

労使交渉におけるフォーマルとインフォーマル 青木宏之(香川大学教授)

経営側から見た「集団」の意義 田中恒行(社会保険労務士)

社会政策の形成と労働者集団の役割─戦後日本の労働組合による最低賃金制運動を中心に 兵頭淳史(専修大学教授)

「新しい働き方」における集団の意義─韓国20年間の軌跡からの示唆 安周永(龍谷大学教授) 

今回はどれも大変興味深い論考が揃っていますが、まずはJILPTの呉さんのは、今流行りの賃金はなぜ上がらないのかという話題にも言及しています。

・・・以上のように、日本の場合、労働組合が企業と締結した労働協約の拡張的適用がほとんどなく、また、賃上げ要求額を獲得するために労働争議に訴えることもない。その結果、集団力の発揮が限定されて、1990年代初頭バブル崩壊以降賃金が基本的に上がらなくなったと言えよう。しかし、企業の内部留保は積み上げられ、また、株主への配当金。配当率はほぼ一貫して増加している。結局、労働者・労働組合が集団の力を高めて、賃金を上げることができる企業の財務状況であるのにそれが実現されておらず、賃金が上がらなくなっているのである。労働組合が賃上げ要求とその実現に向けた運動を通じて、企業の発展を促す経営資源の役割をどこまで果たしたのか疑問が残らざるを得ない。もちろん、個別企業で労働組合ハ厳しい交渉を行うが、結果として自らの要求を獲得するほどの交渉力を発揮せず、企業の主張に理解を示し、寄り添ったからだと思われる。個別企業レベルで「よかれ」と思って行った労働組合の交渉力の抑制が日本全体の賃金引上げや経済にマイナス効果をもたらす合成の誤謬につながったのではないか。

この「個別企業レベルで「よかれ」と思って行った労働組合の交渉力の抑制が日本全体の賃金引上げや経済にマイナス効果をもたらす合成の誤謬につながった」という認識は、ほぼその通りだと思います。

また、田中さんの「経営側から見た「集団」の意義」では、今後専門能力保持者としてのジョブ型社員が増加してくると、「就労請求権やキャリア権が具体的に発生する可能性が高くなる」という指摘をしています。

 

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