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2022年8月 1日 (月)

「技人国」の矛盾

Asahi_20220801111501 今朝の朝日が1面トップに「技人国」の話題を取り上げています。

https://www.asahi.com/articles/DA3S15374166.html(「技人国」29万人、外食にITに 「高度人材」在留、実習生並みに拡大)

https://www.asahi.com/articles/DA3S15374128.html(広く根おろす「技人国」 留学生から移行「親日の大卒人材」)

この「技人国」の問題、先日の吉野家の時にも本ブログで若干コメントしましたが、昨年5月にWEB労政時報に寄稿した「ジョブ型「技人国」在留資格とメンバーシップ型正社員の矛盾」がまとまっていますので、改めて再掲しておきます。

 日本の外国人労働政策は至るところに矛盾を孕(はら)孕(はら)んだ形で展開してきました。その代表格は「労働者として」入れるのではない定住者という在留資格の日系南米人と、最初は「労働者ではない」研修生で、次は一応労働者ではあるが主目的は国際貢献という触れ込みの技能実習生ですが、留学生の資格外活動(アルバイト)を週28時間まで認めているのも、ローエンド技能労働者のサイドドアであることは確かです。この労働需要に対しては、2018年12月の入管法改正により、ようやく特定技能という在留資格が設けられ、それなりのフロントドアが作られたといえます。
 
これらに対して、日本政府はずっとハイエンドの外国人は積極的に受け入れるという政策をとってきました。その中でも、いわゆる普通のホワイトカラーサラリーマンの仕事に相当する在留資格が技術・人文知識・国際業務、いわゆる「技人国」です。出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)の別表では、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」と、定義されています。
要するに、理科系と文科系の大学を卒業し、そこで学んだ知識を活用して技術系、事務系の仕事をする人々ということですから、ジョブ型社会における大卒ホワイトカラーを素直に描写すればこうなるという定義です。つまり、日本の入管法は他の多くの法律と同様に、欧米で常識のジョブ型の発想で作られているといえます。
 
ジョブ型の常識で作られているということは、メンバーシップ型の常識は通用しないということです。法務省の「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」には、「従事しようとする業務に必要な技術又は知識に係る科目を専攻していることが必要であり、そのためには、大学・専修学校において専攻した科目と従事しようとする業務が関連していることが必要」と書かれています。
何という職業的レリバンスの重視でしょうか。これは、専門技術職は積極的に受け入れるけれども、単純労働力は受け入れないという原則を掲げている以上当然のことです。ところが、それが日本のメンバーシップ型社会の常識と真正面からぶつかってしまいます。今まで留学生の在留資格だった外国人が、日本の大卒者と同じように正社員として採用されて、同じように会社の命令でどこかに配属されて、同じように現場でまずは単純作業から働き始めたとしたら、それは「技人国」の在留資格に合わないのです。大卒で就職しても最初はみんな雑巾がけから始める、などというメンバーシップ型社会の常識は通用しないのです・・・しないはずでした。
 
 ところが、それでは日本企業が回らないという批判を受けて、法務省は2008年7月「大学における専攻科目と就職先における業務内容の関連性の柔軟な取扱いについて」という局長通達で、「現在の企業においては、必ずしも大学において専攻した技術又は知識に限られない広範な分野の知識を必要とする業務に従事する事例が多いことを踏まえ、在留資格『技術」及び『人文知識・国際業務』の該当性の判断に当たっては、(中略)柔軟に判断して在留資格を決定する」ことと指示したのです。とはいえ、あくまでもジョブ型の大原則は変えていないので、「例えばホテルに就職する場合、研修と称して、長期にわたって、専らレストランでの配膳や客室の清掃等のように『技術・人文知識・国際業務』に該当しない業務に従事するといった場合には、許容されません」と、それなりに厳格さは維持されていました。
しかし、それでもまだ足りないという批判が繰り返され、あっさり本来のジョブ型制度が後退してしまったのです。上記2018年12月の入管法改正を受けて同月に策定された外国人材受入れ・共生対応策では、留学生の就職率が3割強にとどまっていることから、大学を卒業する留学生が就職できる業種の幅を広げるために在留資格の見直しを行うとされ、翌2019年5月の告示改正で、「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」という名目の下、飲食店、小売店等でのサービス業務や製造業務も特定活動46号として認めることとしたのです。同時に出されたガイドラインの具体的な活動例を見ると、以下のとおり、
よほどの単純労働でない限り、普通の技能労働レベルのものがずらりと並んでいます。
ア飲食店に採用され、店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務を行うもの(日本人に対する接客を行うことも可能です)。
※厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。
イ工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うもの。
※ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。
ウ小売店において、仕入れ、商品企画や、通訳を兼ねた接客販売業務を行うもの(日本人に対する接客販売業務を行うことも可能です)。
※商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません。
エホテルや旅館において、翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設、更新作業等の広報業務を行うものや、外国人客への通訳(案内)を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの(日本人に対する接客を行うことも可能です)。
※客室の清掃にのみ従事することは認められません。
オタクシー会社において、観光客(集客)のための企画・立案や自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの(通常のタクシードライバーとして乗務することも可能です)。
※車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。
※タクシーの運転をするためには、別途第二種免許(道路交通法第86条第1項)を取得する必要がありますが、第二種免許は、個人の特定の市場への参入を規制することを目的とするものではないことから、いわゆる業務独占資格には該当しません。
カ介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、日本語を用いて介護業務に従事するもの。
※施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。
キ食品製造会社において、他の従業員との間で日本語を用いたコミュニケーションを取りながら商品の企画・開発を行いつつ、自らも商品製造ラインに入って作業を行うもの。
※単に商品製造ラインに入り、日本語による作業指示を受け、指示された作業にのみ従事することは認められません。
 
 ハイエンド労働者は入り口からハイエンドの仕事をし、ローエンド労働者はずっとローエンドの仕事をするというジョブ型社会の常識が、ハイエンド(に将来なる予定/なるかも知れない/なるんじゃないかな)の労働者が入り口ではローエンドの仕事をするという日本社会の常識に道を譲ったわけです。それは、もしその就職した留学生たち全員が本当にハイエンド労働者になることを予定しているのであれば、ジョブ型の制度趣旨に反するというだけで、否定されるべきではないのかもしれません。しかしながら、日本の外国人政策における留学生の位置づけを振り返ってみると、その点にもかなりの疑問符が付きそうです。なにしろ、いまや本家の「技人国」ですら、中国人を抑えて、一番多いのはベトナム人になっているのですから、どこまでハイエンド労働者なのか、大変疑わしい状況になりつつあります。

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