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2022年7月30日 (土)

技能実習制度の見直しへ

昨日、古川法務大臣が技能実習制度の見直しの開始を述べたということですが、

https://www.asahi.com/articles/ASQ7Y0G29Q7XUTIL02D.html(技能実習制度「目的と実態が乖離」 本格見直しを検討へ 法相)

Asa_20220730160601 開発途上国への技術移転を目的とした「外国人技能実習制度」について、古川禎久法相は29日の閣議後会見で、本格的な見直しに向けた考え方を示した。実習生が日本の人手不足を補う労働力になっている実態を踏まえ、「目的と実態に乖離(かいり)がない仕組み」づくりなどを打ち出した。 

政府は今秋にも関係閣僚会議の下に有識者会議を設置し、今回の考え方を踏まえた具体的な制度設計を検討する。古川氏は「長年の課題を歴史的決着に導きたい」と述べた。・・・ 

ちょうど『労基旬報』の7月25日号に、「技能実習制度の見直し」という記事を寄稿したばかりだったので、何かの参考までにお読みいただければと。

 今年の1月14日、古川禎久法務大臣は閣議後記者会見で、「特定技能制度・技能実習制度に係る法務大臣勉強会」を設置し、「両制度の在り方について,先入観にとらわれることなく,御意見・御指摘を様々な関係者から幅広く伺っていきたい」と述べました。記者の質問に対しては、「虚心坦懐に勉強会を進めていきたい」、「あらかじめ予断を持って,このような方向性であるとか,こういう論点でということを決め打ちして始めるというものではありません」、「様々な御意見にしっかり耳を傾けながら,改めるべき点があれば,勇気を持って,誠実さを持って改めていくという姿勢でこの勉強会に臨む」と回答しており、何らかの制度改正は必要だという認識はあるようです。
 ただ、この勉強会はあくまでも私的な会合という扱いのようで、法務省や入国在留管理庁のホームページ上にはこの勉強会に関する情報はほとんど載っていません。ただ、大臣記者会見で、1回目は政策研究大学院大学学長の田中明彦氏で、以後、国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長の是川夕氏、移住連(移住者と連帯する全国ネットワーク)代表理事の鳥井一平氏、日弁連人権擁護委員会委員長の市川正司弁護士、タレントのパトリック・ハーラン氏、 一般社団法人国際人道プラットフォーム代表理事の菅野志桜里氏(国会議員時代は山尾志桜里名義)、東京大学名誉教授の養老孟司氏、政策研究大学院大学特別教授の西村清彦氏、多摩大学学長の寺島実郎氏、自由民主党元総裁の谷垣禎一氏という名前が示されているだけです。
 政治的にセンシティブな問題でもあるだけに、去る7月10日の参議院選挙までは具体的な動きはできるだけ外に出さないようにしていたのだろうと思われますが、与党の勝利によって今後3年間政治的な安定期間が確保されたことから、これからいよいよ本格的な見直しの検討が進められていく可能性があります。現時点では、政府からは全く具体的な見直しの案は示されていませんが、この問題に関心を持つ人々からはいくつかの提起がされてきています。
 ここでは、今年の4月15日に、日本弁護士連合会が公表した「技能実習制度の廃止と特定技能制度の改革に関する意見書」を見ておきましょう。これは、技能実習生の人権擁護に活躍してきた指宿昭一弁護士らが中心になってとりまとめられたものです。この意見書はまず、「技能実習制度を直ちに廃止する」ことを要求した上で、特定技能制度を以下の条件を満たす制度に改革するよう求めています。
(1) 特定技能1号と2号を一本化して,特定技能制度により,現在は技能実習生として受け入れている技能レベルの非熟練分野の外国人労働者の受入れを開始し,在留期間更新を可能とする制度を導入して定住化を進める。
(2) 特定技能で受け入れた当初から,家族帯同の可能性を認めた上で,永住審査の要件である就労資格をもった在留の期間に含める。
(3) 転職の実効性を確保する。
(4) ブローカーによる労働者からの中間搾取を禁止することを前提とする。
 さらに、外国人労働者の権利保障のための施策と,外国人労働者及びその家族の定住化支援のために次のことを実施するよう求めています。
(1) 賃金等の労働条件における国籍や民族を理由とする差別の禁止を徹底する。
(2) 労働者の権利の保障等のための相談,紛争解決の仕組みを充実させる。
(3) 日本語教育を含む職業訓練や職業紹介制度を充実させる。
(4) 医療,社会保障,妊娠,出産,育児,教育,生活習慣等に関する情報を外国人労働者及びその家族に提供する。
 一つ目の技能実習制度の廃止論は、「名目上は,労働者受入れ制度ではなく,開発途上国等へ日本の高度な技術等を移転することにより国際貢献を果たす」ための制度とされながら、「現実には,日本の深刻な労働者不足を補うための労働者受入れ制度として機能しながら,労働者不足の深刻化とともに制度が維持拡大してきて」おり、「制度の名目と実態の乖離が甚だしい」からです。とりわけ、「技能実習生に対し,入国後3年間は技能を同一の雇用主の下で一貫して習得するとの名目の下に雇用主変更を制限する仕組みにつながっている」ために「制度の構造が悪質な人権侵害の温床となっている」点や、「送出し機関による保証金の徴収や送出し国の法令の規定を超える高額な手数料徴収の事例が後を絶たず,技能実習生が来日前に高額な借金を作って来日する」点を、その弊害として厳しく批判しています。また、コロナ禍による経営状況の悪化により技能実習を継続できない技能実習生について、「特定活動」への在留資格変更を認め,事実上異業種への転職を認めたことを捉えて、「技能実習制度の制度上の目的は既に維持できていない」ではないかと、鋭く指摘しています。
 技能実習制度廃止後は、基本的には現行の特定技能制度を修正改良して対応すべきというスタンスですが、そのうち一番深刻で、そして一番対処が困難なのが、ブローカーによる中間搾取の問題でしょう。意見書はまず、韓国の雇用許可制に倣って、「民間を通さない政府間の受入れ(いわゆるGtoG)による仕組みの導入」を提示していますが、過去30年間、世界的に労働市場ビジネスに対する規制が緩和され、公共から民間へという流れが進んできている中で、これはいわば逆行する動きになり、なかなか難しいといわざるを得ません。
 実は、2009年7月の入管法改正に向けた2008年6月の厚生労働省の研修・技能実習制度研究会の報告書においては、「あっせん行為を公的機関が一元的に管理する方法」も検討しつつも、結論としては「現実的な方策としては、あっせん行為は従来通り民間に委ねつつ、これを適正にコントロールする方策を探ることが適当」としていました。しかし、国内の業者であれば職業安定法やその上乗せ的な法規制は可能でしょうが、海の向こう側で(場合によっては現地政府の黙認の下で)行われる事実上の中間搾取行為を有効に規制するのはなかなか難しいでしょう。
 今後の外国人労働者法政策がどういう方向に進んでいくことになるか、注目して行きたいと思います。

 

 

 

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