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« 中小企業の雇用システムについて@愛知県経営者協会『日本企業に「ジョブ型」は馴染むのか?』 | トップページ | 小島剛一『再構築した日本語文法』 »

2022年5月29日 (日)

松永伸太朗・園田薫・中川宗人編著『21世紀の産業・労働社会学』

604696 松永伸太朗・園田薫・中川宗人編著『21世紀の産業・労働社会学 「働く人間」へのアプローチ』(ナカニシヤ出版)を編著者3人の方々からお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.nakanishiya.co.jp/book/b604696.html

現代の労働の多面性を社会学で捉えるために
現代の労働の多面性を分析するために対象・方法論・アプローチが多様化した労働をめぐる昨今の社会学的研究を、「働く人間」に焦点をあてる人間溯及的視点という基礎概念から整理し、産業・労働社会学の独自性を再構築する最新テキスト。 

編著者のうち松永さんについてはその著『アニメーターはどう働いているのか』を紹介したことがありますが、

https://www.rodo.co.jp/column/99888/

編著者も執筆者も若手社会学者で、企業と労働市場、労働者と労働現場の二面からのアプローチに加え、理論と学説の再整理を行っています。

冒頭の序章「「働くこと」の社会学を再考する」の冒頭に、いきなり三菱ケミカルが管理職2900人対象に希望退職募集したという新聞記事がでてきて、そこに「ジョブ型」なる言葉が登場し、それもネタにしながら、

・・・上記のように、たった一つのニュースに対しても、「企業」「労働者」「理論・社会状況」による把握がそれぞれに可能である。・・・

と、労働をめぐる社会学の状況を説明していきます。

正直言って、部外者の眼からすると、学問分野の細かなデマケに関心が集中しすぎている感もなきにしもあらずですが、一つ一つの論文には興味をそそられる指摘がいくつも見られ、議論の発展を期待させるものがありました。特に、西田さんの「失業が作る近代」は、他の労働研究分野である労働法や労働経済ではあまりにも当然の前提にしている「失業」という概念の歴史的な相対性に目を開かせられます。また、テーマはおなじみですが、妹尾さんの「日本的な働き方と対峙する大学生」は面白かったです。

序 章 「働くこと」の社会学を再考する
 産業・労働社会学の21世紀的展開と展望

松永 伸太朗・中川 宗人・園田 薫

1 「働くこと」をめぐる視点の複数性と社会学の立場
2 労働をめぐる社会学の拡散状況
3 「働く人間へのアプローチ」という起源
4 企業と労働市場
5 労働者と労働現場
6 企業・労働市場と労働者をめぐる理論と学説

第1部 企業と労働市場

第1部 イントロダクション
 働く場の境界,構造,変容に迫る

中川 宗人

1 働く場への着目
2 日本的雇用システムの概要
3 日本的雇用システムの研究史
4 働く場へのアプローチの焦点としての組織

第1章 企業データの計量分析からみる新卒採用のジェンダー不平等
 WLB施策と企業の経営状況との関連から

吉田 航

1 問題設定:採用のジェンダー不平等を企業から捉える
2 先行研究と仮説:WLB施策の効果は,企業業績によって変わるのか?
3 方法:企業データの計量分析
4 分析結果:企業業績によって変化するWLB施策の効果
5 解釈:WLB施策をめぐる陥穽
6 結論:雇用の不平等生成メカニズムの解明に向けて

第2章 外国人を採用する日本企業の説明と認識
 社会の論理と企業の論理の交差点

園田 薫

1 日本企業は外国人とどのように向き合ってきたのか
2 企業の行動に潜む人間性を検討する意義
3 本章の扱うデータと対象
4 外国人の採用をめぐる二つの説明と認識
5 企業にとって望ましい外国人とは何か

第3章 経営モデルの企業組織への導入
 1940~60年代における「人間関係論」を対象として

中川 宗人

1 はじめに
2 課題と方法
3 人間関係論の導入過程の検討
4 おわりに

第4章 企業と地域の結節点としての「企業内コミュニティ」
 日立製作所における自衛消防隊の三つの機能

長谷部 弘道

1 企業コミュニティ論の課題
2 地域コミュニティをめぐる研究の課題と本章の目的
3 日立製作所における消防隊の発足とその機能
4 結論と展望

第5章 組織境界の複数性
 組織は多様な活動をどのように可能にしているのか

樋口 あゆみ

1 なぜ組織境界の境界が問題となるのか
2 先行研究と本章の立場
3 安定的境界から動態的境界へ
4 組織の開放性と閉鎖性はいかに記述可能か
5 「組織境界が複数ある」とはどのような意味においてか
6 動態的境界とつき合い続けるマネジメント

第2部 労働者と労働現場

第2部 イントロダクション
 「労働者であること」とはいかなることか?

松永 伸太朗

1 社会秩序を形成する主体としての労働者
2 労働者になること:社会化の問題
3 労働者であることと社会的役割との葛藤
4 労働現場における労働者の多面性

第6章 教育システムと労働市場のリンケージ
 日本の職業教育の強さに関する社会階層研究からのアプローチ

小川 和孝

1 本章の目的と構成
2 社会階層研究における「労働」の捉え方
3 教育システムと労働市場の関連性
4 学校から仕事への移行に関する日本社会の制度的文脈
5 教育システムの国際比較における日本の位置づけ
6 ミクロレベルで教育–職業のリンケージを捉えるアプローチ
7 結 論 

第7章 日本的な働き方と対峙する大学生 
就職活動過程の検討を通じて

妹尾 麻美

1 問われてこなかった就職活動
2 ライフコースと仕事
3 状況の定義という視座
4 大学生の就職活動過程
5 「サラリーマン」になること

第8章 不妊治療と仕事の両立の葛藤をめぐる計量テキスト分析
 職種の違いに着目して

寺澤 さやか

1 不妊治療という盲点
2 職種を問う必要性
3 「不妊治療と仕事の両立」という課題の特異性
4 不妊治療の経験についての計量テキスト分析
5 職種ごとの特徴
6 女性労働研究に不妊治療を位置づける

第9章 新型コロナウィルス感染症の影響下における年休取得行動
 コロナ禍で実施したアンケート調査の計量テキスト分析から

井草 剛

1 日本の年休取得
2 コロナ禍で年休を残す理由
3 年休に関する先行研究
4 調査の概要と主な集計結果
5 アンケートの分析
6 年休取得行動の変化と今後の課題

第10章 日本の外国人労働者問題
 単純労働力としての留学生労働者を中心に

1 少子高齢化と外国人労働者の受け入れ,そして留学生
2 先行研究分析
3 先行研究の問題点と解決策:重層的存在としての留学生
4 現場研究の具体例:サービス職パートタイマー留学生に対する参与観察研究
5 パンデミック以降の外国人受け入れ政策の変化:留学生を中心に
6 結論:今後の変化と留学生労働研究の課題

第11章 労働時間の弾力化と「リズムの専門性」
 フリーランス労働における無収入リスクへの対処を事例として

松永 伸太朗

1 労働時間の弾力化と個人による労働時間管理
2 産業・労働社会学における労働の「時間経験」と「リズムの専門性」
3 アニメーターの仕事の特徴
4 「リズムの専門家」としてのアニメーター
5 労働時間の社会学的記述

第3部 企業・労働市場と労働者をめぐる理論と学説

第3部 イントロダクション
 社会学はいかに「働くこと」を捉えるのか

園田 薫

1 社会学で「働くこと」はどのように捉えられてきたのか
2 日本の社会学は何を明らかにしてきたのか
3 社会構造の変容と「21世紀の産業・労働社会学」の構築に向けて

第12章 日本の産業・労働社会学の学説史的反省
 経済現象を捉える領域社会学との関係性に着目して

園田 薫

1 問題関心と先行研究の整理:多様化する領域社会学の俯瞰と学説史的分析の意義
2 労働現象を扱う領域社会学の現在
3 「産業・労働社会学」はいかに形成されたのか
4 「21世紀の産業・労働社会学」の構築に向けて

第13章 「当事者の論理」を記述するとはいかなることか
 マイケル・ブラウォイの同意生産論のエスノメソドロジー的再考

松永 伸太朗

1 産業・労働社会学における方法論的議論の欠如
2 ブラウォイの同意生産論
3 規則–実践の関係の記述へ
4 「当事者の論理」と労働社会学

第14章 失業が作る近代
 戦中・戦後日本の社会政策思想はなぜ西洋由来の失業概念を用いたのか

西田 尚輝

1 失業概念をめぐる歴史と政治
2 社会的構築物としての失業カテゴリー
3 戦間期と戦後改革期の日本における失業問題と社会政策思想
4 カテゴリーという現実への批判的視座

第15章 「新しい社会運動」論と労働運動論
 労働運動の質的転換と社会運動論的変数の検討

中根 多惠

1 労働社会学と社会運動論の乖離
2 労働社会学の視座から:労働運動の質的転換と河西宏祐の運動論
3 社会運動論の視座から:理論的パラダイムシフトによる労働運動の等閑視
4 労働社会学で「社会運動論的変数」を検討する

終 章 21世紀の産業・労働社会学の構想に向けて
 領域社会学における境界認識の転換とプラットフォーム化

園田 薫・中川 宗人・松永 伸太朗

1 「働くこと」をめぐる視点の複数性と社会学の立場について
2 労働現象の社会学をめぐる拡散状況について
3 人間溯及的視点について
4 論じられていないもの
5 労働研究にたいして 

 

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コメント

この手の本は基本的に大学でのテキスト使用を意識した構成となるものと考えていましたが、目次を見るとそういうわけでもなさそうですね。まだ読んでいないので批評などはできませんが、それでも21世紀の産業・労働社会学の領域では労働組合、労働運動の存在感は皆無となっているということは感じられました。運動が無ければ研究がないのも当然ではあるのですが。

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