入り口はジョブ型、実体はメンバーシップ型
先日の吉岡さんの書評の中で、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2022/05/post-b781ae.html
・・・ただ、現実として、すでに日本でもジョブ型の雇用システムが採用されている分野があります。医師の世界と大学教員の雇用です。私もその中に入ります。大学教員でいえば、どのような学位を持っていて、あるいは、その学位相当の能力があり、どのような分野の授業がどのような言語でできるか、を明示した採用となります。そして、その職務記述書に沿ったお給料となるハズなのですが、なぜか、私の勤務する大学では年功賃金が支払われています。少しだけ謎です。
という一節があったことに関連して、しばらく前に『文部科学 教育通信』という業界誌のインタビューを受けた時に喋った中にそれにかかわる部分があったことを思い出しました。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2022/03/post-50dd60.html
入り口はジョブ型、実体はメンバーシップ型-- ジョブの帳票がディプロマ、という考え方は日本の大学文化には受け入れがたいかもしれません。大学は就職予備校ではない、とよく耳にするので。濱口 日本の大学人の大半を占める文化的エリートにとっての大学とは、世間で言う職業教育とは違う意味での職業教育機関の側面を持っています。東大や京大のような大学の文学部は、全国のさまざまな大学の先生を輩出しています。例えば、なんで東大哲学科というものが存在し得ているかというと、いろんな大学が哲学の授業をする人を募集しているからです。-- ジョブ型雇用が成り立っているように見えます。濱口 自分たちでは意識していないけど、ジョブ型です。医療の世界もジョブ型です。-- 確かにそうです。医学部で規定のカリキュラムを学んだ人が、国家試験を受けて医師になる。看護師も薬剤師もそうですね。濱口 そうです。看護師として10年病院で働いた後、「君も看護師としてベテランになったから、今度は医者やってみるか」なんてことはないですね。いやいや、これを言うと笑うけれども、日本の会社ではこういうことをやっているんですよ。-- たしかにそうですね(笑)。濱口 ただ、医療の世界は、雇用は完全にジョブ型ではあるけれど、病院の賃金表を見ると、処遇はメンバーシップ型で年功制なのです。-- 手術の技術が優れているとかではないわけですね。濱口 関係ない。学校教員の世界も似ています。こちらも教員免許が原則必須なので、ジョブ型であるように見えます。ところが、仕事の内容はメンバーシップ型です。昔は、教員は教えるのが仕事で、学校には事務職員もきちんと配置されていた。その仕事がどんどん教員の仕事になってしまいました。その結果、学校の中の仕事は全部教員の仕事です。処遇もほぼ完璧な年功制です。--入り口と中身の乖離ということですね。濱口 医師免許とか教員免許というものがないと当該業務ができないと法律で定められているために、法律に基づいたジョブ型があるわけです。-- 働きにくいし、働きがいのない社会であるようにも感じます。濱口 いや、働きやすいと思っているから、こういうふうに回っているのではないでしょうか。
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https://twitter.com/hahaguma/status/1525606877949984768
何と言うか、「ジョブ型とメンバーシップ型の対立」にも見えるし、「メンバーシップ型とメンバーシップ型の対立(アイデンティティ・ポリティクス)」にも見える訳ですが。さて?
投稿: 庄吉 | 2022年5月15日 (日) 13時48分
hamachan様
このエントリを紹介させていただきました。
投稿: kohchan | 2022年5月20日 (金) 07時01分
えっ?日本のアカデミアが、入り口だけはジョブ型ですって?まじで言ってます?
日本でもアカデミアは「基本が中途採用」であるために、その採用は日本の民間の中途採用と同様に、ジョブ型の要素も大きい、というだけでしょう。
> 法学あるいは関連する分野で博士の学位を有すること。
> キリスト者(教派は問わない)。例外的に、非キリスト者で、本学のキリスト教理念を深く理解し、その遂行に積極的信念を有する者を採用する場合がある。
示唆的なのは、こんな中途半端な中途採用市場を基本とする社会は、一般には受け入れ難いのでは?、と思われることです。これがリクルート辺りが、現実的に直面問題、いや、むしろ、そのビジネスモデルの源泉、ということなのでしょう。
投稿: hatebuuu | 2022年6月11日 (土) 10時08分