フォト
2024年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ

« 『近江絹糸争議斡旋経過―中央労働委員会による―』 | トップページ | 海老原さんが来月刊行の本の宣伝でちらりと »

2022年3月24日 (木)

EUのデューディリジェンス指令案がついに提案@『労基旬報』2022年3月25日号

『労基旬報』2022年3月25日号に「EUのデューディリジェンス指令案がついに提案」を寄稿しました。

 本紙の昨年5月25日号で「EUのデューディリジェンス指令案への動き」について解説しましたが、その時文末で「欧州委員会の方は、上記一般協議を終了し、現在具体的な指令案を検討中です。2021年第2四半期には提出すると予告されているので、おそらく今年6月に公表されると思われます」と述べていました。ところがこれがずるずると遅れ、同年第4四半期になっても提出されませんでした。
 これに業を煮やした諸市民社会団体や欧州労連は、2021年12月8日に共同してフォン・デア・ライエン委員長宛の公開状を公表し、理由も明らかにされないまま延期が繰り返されていることに疑念を呈し、このままではグローバルサプライチェーンにおける強制労働が野放しになると懸念を表明しました。明けて2022年2月8日には、ダノンはじめ100以上の主要企業等が、デューディリジェンス指令案の早急な提出を求める公開状を公表し、その中で指令案の公表の深刻な遅延を深く懸念すると述べています。
 こうして、同年2月23日、欧州委員会はようやく「企業の持続可能なデューディリジェンスに関しかつ公益通報者保護指令を改正する欧州議会と理事会の指令案」(Proposal for a Directive of the European Parliament and of the Council on Corporate Sustainability Due Diligence and amending Directive (EU) 2019/1937)(COM(2022)71)を正式に提案するに至りました。半年以上も遅れたのは、企業サイドから相当なロビイングがあったからだと思われますが、内容的にも適用対象企業から中小企業が除外されるなど、企業サイドに相当配慮した内容になっています。
・主題(第1条)
 本指令案は、①潜在的な人権への悪影響(human rights adverse impacts)と環境への悪影響(environmental adverse impacts)に関して、企業自身の運営、その子会社の運営、当該企業が取引関係を樹立した(established)主体によって遂行されるバリューチェーンの運営に関する企業の義務、②上記義務の違反に対する責任(liability)について定めています。この「樹立した」取引関係の性質については、少なくとも12か月おきに再審査されます。
・適用範囲(第2条)
 本指令案が最も注目されたのはその適用範囲でした。まず原則として、従業員500人超かつ全世界での売上高が直近年度で1億5千万ユーロ超の大企業が対象となります。
 ただし、とりわけバリューチェーンの人権侵害が問題とされる業種についてはその対象がやや中規模企業にも拡大されています。すなわち、①繊維、皮革とその関連の製造業、これらの卸売業、②農林漁業、食品製造業とこれらの卸売業、③石油、ガス、石炭、金属その他の鉱山採掘業、金属・鉱物の製造業とこれらの卸売業の3業種については、従業員250人超かつ全世界での売上高が直近年度で4千万ユーロ超の企業まで対象となります。
 さらに、非EU企業、つまり第三国の法律によって設立された企業であっても、EU域内で直近年度で1億5千万ユーロ超の売上があるか、売上の半分以上が上記3業種に属して4千万ユーロ超である場合には適用されます。
・デューディリジェンスの義務
 本指令案は第4条以下で具体的なデューディリジェンスの義務を規定していますが、それぞれについてかなり詳しい規定がされています。
①デューディリジェンスの企業政策への統合(第5条)
②現実の及び潜在的な悪影響の確定(identification)(第6条)
③潜在的な悪影響の予防(第7条)
④現実の悪影響の解消(第8条)
⑤苦情処理手続(第9条)
⑥モニタリング(第10条)
⑦情報公開(第11条)
 これら義務の遵守のために、欧州委員会はモデル契約条項を作成するとともに、ガイドラインを示すことにしています(第12,13条)。
・その他の規定
 本指令が適用される非EU企業は権限ある代表者を指名しなければなりません(第16条)。
 加盟国は企業がデューディリジェンスの義務の遵守に係る監督機関を設置し(第17条)、当該機関が任務を果たせるよう適切な権限と資源を確保しなければなりません(第18条)。
 ある企業が本指令の義務を遵守していないと考える者がその旨(裏付けのある懸念(substantiated concerns))を監督機関に訴えることを確保するとともに(第19条)、本指令に基づく国内法の違反に対する罰則を定めなければなりません(第20条)。
 欧州委員会は欧州監督機関ネットワークを設置し(第21条)、ここが監督や制裁に関する調整を行います。
 加盟国はデューディリジェンスの義務を遵守しない企業に対する民事責任(civil liability)を規定し、同条に規定する責任が当該訴えに適用される法律が当該加盟国の法律でないというだけの理由によっては否定されない旨を定めなければなりません(第22条)。
 なお本指令上の全ての違反は公益通報者保護指令の対象であり、これに伴い同指令(2019/1937)も一部改正されています。

 

« 『近江絹糸争議斡旋経過―中央労働委員会による―』 | トップページ | 海老原さんが来月刊行の本の宣伝でちらりと »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 『近江絹糸争議斡旋経過―中央労働委員会による―』 | トップページ | 海老原さんが来月刊行の本の宣伝でちらりと »