早津裕貴『公務員の法的地位に関する日独比較法研究』
早津裕貴『公務員の法的地位に関する日独比較法研究』(日本評論社)をお送りいただきました。
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8735.html
雇用の不安や処遇格差が問題となっている公務員の非正規化について、日本とドイツの比較を通じてあるべき公務員の地位を探求する。
日本の公務員制度は複雑怪奇にして矛盾だらけですが、それをドイツの法制度を補助線にして切り込んでいく本です。ドイツがいい補助線になるのは、公法上の任用による官吏と、私法上の契約による公務被用者(かつては職員のアンゲシュテルテと労務者アルバイターに分かれていましたが、今は統一した扱いのようです)に分かれていて、それをめぐる議論がいっぱいあるため、末端の非正規に至るまですべて公法上の任用による公務員だという建前で運用しているために、私法上の非正規労働者に適用される最低限の雇止め法理や均衡処遇すらも奪われてしまうというようなさまざまな矛盾が噴出している日本の姿と比較すると、いろんなことが見えてくるからです。
はしがき
序 章
第1編 ドイツ法
序
第1章 基本法下における「複線型」公務員制度の意義
第2章 基本法下における職業官吏制度の基本理念と官吏の法的地位
第3章 基本法下における公務被用者の法的地位
第4章 「統一的」公勤務法と公務従事者の法的地位
第5章 ドイツ法の整理・分析
第2編 日本法
序
第1章 日本法の検討に際して必要となる基本的視点
第2章 雇用保障――「非正規」公務員を題材とした検討
第3章 労働条件決定
終章 残された課題と今後の展望
早津さんは、昨年11月の労働法学会のワークショップ「『非正規』公務員をめぐる現代的課題」 で報告兼司会をされていました。私も出席してちらりと発言しましたが、公務員の労働問題というめんどくさい問題に真摯に取り組む方として貴重です。
ちなみに、今月出る予定の『試験と研修』64号で、「公務員とジョブ型のねじれにねじれた関係」という小文を寄稿して、その最後のところで「非正規公務員というねじれの極み」にもちらりと触れております。
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