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2022年3月23日 (水)

公務員とジョブ型のねじれにねじれた関係@『試験と研修』64号

Image0_20220323152701 公務人材開発協会というところが出している『試験と研修』の第64号に、「公務員とジョブ型のねじれにねじれた関係」というまことにひねた文章を寄稿しております。

2020年には突如として「ジョブ型」という言葉が流行し、2年後の今になっても「ジョブ型」を売り込もうとする経営コンサルたちの駄文が紙媒体でも電子媒体でも続々と湧いてきている。十数年前に日本とそれ以外の諸国との雇用システムの違いを表す学術的概念として筆者が作ったこの言葉が、インチキな成果主義を売り込む薄っぺらな商売ネタにされているのを見るのは、いささか辛いものがある。本来の「ジョブ型」がいかなるものであり、そしていかなるものではないのかは、昨年9月に上梓した『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)に詳述したので、是非そちらを見ていただきたい。本稿はそれを前提にして、公務員制度とジョブ型雇用とのねじれにねじれた関係について述べていく。本誌の主たる読者層は公務員人事にかかわる人々であろうから、思い当たる節は山のようにあるはずである。

1 純粋ジョブ型で作られた(はずの)公務員制度
 
 本稿の執筆依頼には「ジョブ型雇用を日本、特に公務に導入する際の課題」云々という表現があった。現代日本の公務員の世界がほぼ完全なメンバーシップ型で動いており、ジョブ型とは対極的な有り様であるというのは、誰もが同意する判断であろう。それゆえ、かくも対極的な「ジョブ型」を日本の公務員制度に導入するにはどうしたらいいのか、というのが最大の問いになるのも、これまた極めて常識的な認識と言えよう。さはさりながら、普通に公務員として日々働いているだけの者であれば格別、その職務上公務員制度に関わりを持つ者であれば、そこになにがしかのわだかまりを感じるはずである。いや感じてくれなければ困る。なぜなら、日本国の国家公務員法は今から75年前に、アメリカ直輸入の純粋ジョブ型の制度として作られたものだからだ。そして、2007年改正で条文として消えるまでの60年間、国家公務員法は(少なくともその条文上は)職階制というジョブ型の見本のような仕組みを中核とし、それに基づく任用制度と給与制度によって組み立てられてい(ることになってい)たはずだからだ。実際の運用とは真逆の看板を掲げ続ける後ろめたさからは解放されたとはいえ、現在の国家公務員法の基本構造はなお生誕時のジョブ型の母斑を残している。公務員制度とジョブ型雇用というテーマは、今なおねじれにねじれたものであり続けているのである。・・・・
 
2 「能力主義」を掲げてジョブ型制度を廃止した2007年改正
 
・・・徹底したジョブ型の制度を法律上に規定していながら、それをまったく実施せず、完全にメンバーシップ型の運用を半世紀以上にわたって続けてきた挙げ句に、それが生み出した問題の責任を(実施されてこなかった)職階制に押しつけてそれを廃止しようという、まことに意味不明の「改革」である。
 今日、後述の非正規公務員問題を始めとして、公務員制度をめぐる諸問題の根源には、さまざまな公務需要に対応すべき公務員のモデルとして、徹底的にメンバーシップ型の「何でもできるが、何もできない」総合職モデルしか用意されていないことがあるが、それを見直す際の基盤となり得るはずであった徹底的にジョブ型に立脚した職階制を、半世紀間の脳死状態の挙げ句に21世紀になってからわざわざ成仏させてしまった日本政府の公務員制度改革には、二重三重の皮肉が渦巻いている。
 
3 公務員定年延長のパラドックス
 
・・・民間企業が高齢者雇用を迫られる中で年功制の見直しを余儀なくされつつある時期に、もともと純粋のジョブ型で設計されていたはずの国家公務員法が、メンバーシップ型の民間企業を見習って年齢差別的な規定を法律の条文に堂々と掲げるというのは、公務員法の歴史を知る者からするとこれ以上ない痛烈な皮肉と感じられるが、恐らく今ではそのような認識を有している者自体、きわめて少数派なのであろう。
 
4 非正規公務員というねじれの極み

・・・今日、「ジョブ型雇用を日本、特に公務に導入する際の課題」を論じる必要があると考える人々が一体いかなる「ジョブ型」を想定しているのかは、なかなか興味深い論点である。「ジョブ型」を本来の意味で理解している限り、上述のような議論以外にはあり得ないはずであるが、上記拙著で批判した経営コンサル流のインチキ「ジョブ型」を真に受けていると、またぞろ「成果主義」を掲げて本来ジョブ型の公務員制度を叩くという意味不明の「改革」を繰り返す虞なしとしない。読者諸氏がそのような落とし穴に嵌まらないよう、本稿が一服の清涼剤の役割を果たせるならば、これに過ぎる喜びはない。

 

 

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コメント

「とあるフェミ団体の実態が貧困ビジネスなのでは?」という噂に関連して
ちょっと思ったんですけど、公務員が「生活保護の水際対策」に熱心なのは
ジョブに張り付いているのではなく、当該自治体に張り付いているメンバー
シップ型だから、ではないですかね。当該自治体の財政状況が悪化すると、
人減らしが起こって、賃金が上がらないのに、労働強化が起こる、という。

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