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2022年3月21日 (月)

左翼の名残というより正義への冷笑?

今回のロシアによるウクライナ侵略に対して、なぜか極東の日本で侵略者のロシアを擁護し、被侵略者のウクライナを非難したり揶揄したりする論者が結構湧いてくるのはなぜなのか。

一見、かつての左翼のアメリカといえば悪玉、ソ連や中国といえば善玉という冷戦時代のイデオロギー的信念が硬直的に固定化し化石化したものが露呈しているだけのようにも見える。そして、例えば消滅寸前の社民党の機関紙でプーチン擁護論をぶった社説の筆者の場合のように、そういう面もまだ間違いなくあるのだろう。

でも、それが今の日本で、ロシア擁護論というよりはむしろ専ら抗戦するウクライナを「無駄な抵抗しやがって、この馬鹿が」とけなしつけるたぐいの議論が他の先進諸国と比べて異様にたくさん湧いてきている理由をうまく説明できるようにも思われまい。

そういう議論、というかむしろ「気分」の源泉は、過去数十年にもわたって日本社会の隅々に広まってきたように思われる正義への冷笑感ではなかろうかと思われる。侵略者を侵略者として非難するという正義感を、何か愚かしくカッコ悪いことであるかのようにからかい揶揄するという冷笑しぐさが、現代日本人のある部分に定着してきてしまったことをあらわしているのではなかろうか。

ある種の日本人は、かつての左翼への熱狂から醒めて冷静に物事を判断できるようになることと、正義と不正義を分別する能力すら放擲して冷笑主義に逃げ込むことの区別もつかないまま、数十年の時を過ごしてきてしまったのではないのか、という疑いをぬぐい切れない。

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コメント

  もう一つ、「こういう事は背後に複雑な事情があるんだから、喧嘩両成敗とすべき」と言い出すパターンもありますね。喧嘩じゃなくて、見るからに強面の男が相手を一方的に殴り続けているだけなんですけどね。
 
 これも、自分が冷静な判断のできる人間と見せかけながら、一切面倒なことには関わりたくないという人間の処世術なのでしょう。

これはなかなか複雑な文脈がありそうですね。

戦後左翼的な反権力、反体制志向があらゆるものを相対化する冷笑主義的態度につながってる側面は確実にあるでしょうね。そのような態度のねじれと開き直りの果てに生まれた、個人主義的な利得追求にすべてを矮小化する日本的な新自由主義と、ウクライナに対する「現実主義」的非難とは通底していると思います。

欧米は正義や建前をうまく使って社会や国際関係を操作する経験を何百年と積んできたが、日本はその経験がほとんどない。これはヨーロッパが分立する主権国家(さらにそれ以前の分権的な封建関係)というシステムのもとに長年あったためだが、日本はそうではない(中国もそうではないし、ロシアは革命後そこから離脱した)。没入でも冷笑でもない正義というフィクションへの距離の取り方を日本人は習得できていない。まあこの経験の差が戦前の破局を生んだ一因であるし、そこに一抹の割り切れなさを日本人は感じつづけている。

欧米の正義を独占するイデオロギー上のヘゲモニーに対する日本のインテリの積年の不満というのも無視できないでしょう。ロシアや中国はまさにそのヘゲモニーに挑戦している。

今回のウクライナ危機に対する日本のインテリの態度には日本近代のさまざまな歪みが露呈しているように思えてならない。そしてその歪みを中国やロシアも部分的に共有している。

下手をしたら今回の事態は西洋と東洋(非西洋)の対立という世界史的転回のきっかけになるかもしれない。そこで日本がいかに振舞うか、難しいところでしょう。

hamachan先生にご紹介いただいた中根千枝先生の「タテ社会の人間関係」読了しました。
思い当たる節がありすぎて困りますが。この記事に関して申し上げるとすれば、「タテ社会」では個人と個人の間に理性的な、論理的な文脈での関係を築くのが困難であり、極めてパーソナルな人と人との関係しか築くことが出来ない。
 故に日本社会では論理よりも感情が優先されることになる。
 と言う事で「正義への冷笑感」が社会にまん延する、と言う事になってしまったのでしょうか。

 しかし明治以降、欧米からの論理的な思考、例えば法の支配、人権思想、西洋哲学などの導入は進んでおり、それらの論理や思考法を身に着けた個人も日本には相当いるはずなのですが。

 やはり「タテ社会」の構造が根強く残っているので個人がなかなか声を挙げにくい、と言う事なのでしょうか。

連投失礼します。
今回のロシアのウクライナ侵略の手口は2014年のクリミア併合、二つの傀儡政権の樹立とその承認、そして無茶苦茶な要求を突き付けた上での軍事侵攻・・・。

これはかつての大日本帝国が中国大陸を占領した手口と変わらないですね。
満州帝国、汪兆銘政権・・・

しかし「消滅寸前の社民党の機関紙でプーチン擁護論をぶった社説の筆者」のような「左翼」の方々は大日本帝国のこのような行為を批判していたような?

「左翼」のロシア擁護論と言うのは彼らがかつて批判していた戦前の「ブルジョア新聞」が中国大陸を侵略した「わが皇軍」の快進撃ぶりをさんざん煽っていたのとそんなに変わらないという事になります(^^;

かれら「左翼」は気付いているのでしょうか、斯様な矛盾に。

・・・気付くわけないですね。
戦後の「左翼」も所詮はナショナリスト。戦前の「ウルトラナショナリスト」が看板を架け替えただけだった、と言う事を見事に証明したことになりましょうか。

笑うしかありませんねえ(^^;

2週間前に「「左派」とは帝政ロシアを崇めボリシェビキを非難する人々のことであったか」と嘆息した私も似た感想です。

戦後左翼のある部分は、本質的には東洋的専制主義が大好きで西洋的民主主義が大嫌いなだけなのに、それをもっともらしく社会主義バンザーイ、アメリカ帝国主義ハンターイ!と反米ナショナリズムに塗りこめていただけだったのかもしれません。

少なくとも、以前私を目の敵のように罵倒していた自称戦後進歩派代表の「世に倦む日々」と称する御仁が、ここのところ毎日のようにプーチンの大ロシア主義を熱狂的に擁護し、ウクライナの「ネオナチ」を口を極めて非難している姿を見るにつけ、そういう感想が湧いてきますね。

仰るようにプーチンを支持する左翼の方もいらっしゃいますが、大部分の左翼はプーチンに批判的だと思います(日本共産党は自他ともに認める左翼ですがプーチンを批判しています) プーチンを支持する左翼の方がいるという事は、左翼だから支持するという事ではなく左翼にも変な人がいるという事だと思います。
左翼ではなく専門家としての立場からウクライナを批判する方もいます。
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/22976
   国家が扇動して「市民よ銃をとれ」というのは、現代ではやってはいけないことだ。
   プーチンも狂っているかもしれないが、ゼレンスキーはもっと狂っている。それをヒーローといっている。
   なぜ先の大戦で国家のために一般市民があれほど犠牲になった日本国民がそれを応援するのか?
   「市民は死ぬな」という応援ならいいが、「市民よ、銃を取れ」という国家をなぜ応援するのか?
https://news.yahoo.co.jp/articles/0d68b81c8ba03236df02e8ef94f9969a785fbe13
「反ロシア、負けるなウクライナ」世論の熱狂は停戦合意の“足かせ”
 伊勢崎教授は「停戦とは悪魔と握手をすること」と自身の経験から述べると、
  停戦合意を阻む3つの足かせについて「武器供与、義勇兵、熱狂」を挙げた。
この方は、国連派遣団としてシエラレオネでの武装解除部長や日本政府特別代表としてアフガニスタンでの武装解除を担当されたので、左翼かは不明ですが紛争解決の専門家だと思います。このような方にとっては、”正義”等という素人の感情論ではなく専門分野の体系や専門家としての経験に基づいて対応すべきだという考えかもしれません。
この方の考え方は分野は異なりますが、未成年の娘に何年間も性的虐待をしていた男性を
   被告人は被害者を精神的な支配下においていたものの、
   被害者が服従・盲従せざるを得ない強い支配関係にあったとまではいえない
という理由で無罪にした裁判官と似ているのかもしれません。

>以前私を目の敵のように罵倒していた自称戦後進歩派代表の「世に倦む日々」と称する御仁が、
 
まさか濱口先生のブログでヨニウムの名前を見かけることになるとは思ってもみませんでした。
ヨニウム氏はわりと最近も先生について言及されているんですね。
https://critic20.exblog.jp/32433796/
https://critic20.exblog.jp/32167581/

まあ、田中宇と競うようにプーチンの侵略と虐殺を擁護してやまないヨニウム氏にあれだけ口を極めて批判されているというのは、それだけで、並の人に褒められるよりも遥かにパンチの効いた絶賛の賛辞になりますので、私としては有り難い限りです。

日本には中共と闘ってくれるとトランプ前大統領を熱狂的に支持している一派(通称Jアノン)もいますが、こっちの方がまだ筋が通っているということでしょうか?(苦笑)

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