不払いインターンシップは欧州社会憲章違反
本日付のPOLITICO紙に、「Belgium violates charter over unpaid internships, human rights body says」(ベルギーは不払いインターンシップについて憲章違反だと人権機関が言った)という記事が載っています。
Belgium’s failure to crack down on problematic internships violates a key human rights charter, the European Committee of Social Rights (ECSR) said in a ruling published Wednesday.
The human rights body said Belgium breached elements of the European Social Charter, a Council of Europe treaty guaranteeing fundamental socio-economic rights, because its labor inspectorate is not sufficiently effective in detecting and preventing “bogus internships” — disguised employment involving real work for the benefit of the employer.
ベルギーが問題のあるインターンシップを摘発しないのは人権憲章の違反だ、と欧州社会権委員会が水曜日に公表した決定は言う。この人権機関によれば、ベルギーは労働監督機関が「名ばかりインターンシップ」を十分効果的に探索し防止しなかったために、基本的社会経済的権利を保証する欧州評議会の欧州社会憲章に違反している。これは、使用者の利益のために本当は労働に従事している偽装された雇用だ。
これを訴えていたのは欧州若者フォーラムという団体で、その団体の副代表曰く:
“This decision should signal the end of unpaid internships not just in Belgium, but across Europe,” said EYF’s Vice President Frédéric Piccavet. “Unpaid internships are an exploitative practice.”
この決定はベルギーだけではなく欧州全体の不払いインターンシップの終わりを告げるべきだ。不払いインターンシップは搾取的慣行だ。
日本でインターンシップというと、見学会みたいなワンデーインターンシップか、せいぜい1週間くらいのままごとみたいな「いんたーんしっぷ」が大勢ですが、何にもできない素人を潜在力で採用するメンバーシップ型雇用社会と違い、具体的なジョブの募集にそのジョブを遂行しうるスキルがあることを証明してはじめて採用されるジョブ型社会では、インターンシップという名のもとに何年も無給で労働に従事させられるという状況が広範に広がっています。
採用されるためにはその仕事をできることを証明しなければならず、そのためにはその仕事に実際について実習しなければならない、というジョブ型社会故の状況を逆手にとって、いつまでも「お前は実習生であって労働者じゃない、だから給料はないからな」という建前で実習という名の無給労働がまかり通るというのは、おそらく圧倒的に多くの日本人には理解できないジョブ型社会の「闇」の側面でしょう。
もちろん、採用されるためにはその仕事をできることをいくら証明しても何の意味もなく、どんな仕事でも喜んでやり抜きますという「人間力」を売り込まなければならないというメンバーシップ型社会も、圧倒的に多くの欧州人には理解できないでしょうが。
今年に入ってからもマスコミやネット上では毎日のように見当はずれのジョブ型論が量産され続けていますが、ジョブ型社会の最大の特徴は、こういう雇用の入口に関わる部分にあるのだということを、本当に理解して喋っている人は暁天の星よりも少ないであろうことだけは間違いありません。
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