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2022年2月23日 (水)

国立学校には給特法は適用されない件又はさいたま地裁裁判官の勘違いについて

Ym_20220222572oyt1i50131l_thum800 読売新聞に、国立大学の付属校で残業代未払で是正勧告という記事が載っていて、

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220222-OYT1T50196/

国立大が法人化した2004年以降、24法人で付属学校の教員に対する時間外労働などの割増賃金(残業代)の未払いが生じ、遡って15億円超を支払っていたことが22日、文部科学省の初調査でわかった。各法人は労働基準監督署から是正勧告などを受けていた。・・・

法人化後の国立大は、労働基準法に基づき、付属校の教員に残業代を支払うことが義務付けられた。一方で法人化より前は、公立校と同じく、月給の4%相当の「教職調整額」を残業代の代わりに支給していた。法人化後もこの対応を変えなかったため、残業代の未払いが生じたという。

細かな法律の適用構造については以前本ブログで詳しく解説したのでここでは省略しますが、要するに、

1.国立学校であれ公立学校であれ私立学校であれ、全ての学校の教員には労働基準法が適用されている。

2.ところが1971年の給特法により、上記3種類の学校のうち、国立学校と公立学校の教員については労働基準法37条が適用除外され、残業代は払われない代わりに4%の調整額が払われることになった。私立学校は従前と何ら変わらず労働基準法がフル適用のまま。

3.ところが2004年の国立大学法人化により、上記3種類のうち、国立学校は私立学校扱いとなり、給特法は適用されず、労働基準法37条が適用されるので、残業代を払わないと違法となる。公立学校は給特法適用のまま、残業代を払わなくても合法。私立学校は労働基準法フル適用のまま。

という3か条に尽きます。

こういう(それ自体としては極めて明快な)法律の適用関係を少しでもわきまえていれば、到底かけないような信じられないような判決を下したのが、昨年10月1日のさいたま地裁の判決なんですね。いや、結論自体は正しい。公立学校の教師である原告には残業代は払われないというのは、立法それ自体の当不当は別として、法律の適用関係からすれば当然の結論です。

しかし、この判決は、何を取り違えたのか、給特法で残業代を払わないことの理由付けを、教員の職種としての特殊性に求めているんですね。

・・・教員の職務は,使用者の包括的指揮命令の下で労働に従事する一般労働者とは異なり,児童・生徒への教育的見地から,教員の自律的な判断による自主的,自発的な業務への取組みが期待されるという職務の特殊性があるほか,夏休み等の長期の学校休業期間があり,その間は,主要業務である授業にほとんど従事することがないという勤務形態の特殊性があることから,これらの職務の特質上,一般労働者と同じような実労働時間を基準とした厳密な労働管理にはなじまないものである。・・・

このような業務は,上司の指揮命令に基づいて行われる業務とは,明らかにその性質を異にするものであって,正規の勤務時間外にこのような業務に従事したとしても,それが直ちに上司の指揮命令に基づく業務に従事したと判断することができない。・・・・

教員の業務は,教員の自主的で自律的な判断に基づく業務と校長の指揮命令に基づく業務とが日常的に渾然一体となって行われているため,これを正確に峻別することは困難であって,管理者たる校長において,その指揮命令に基づく業務に従事した時間だけを特定して厳密に時間管理し,それに応じた給与を支給することは現行制度下では事実上不可能である。・・・

・・・このように給特法は、教員の職務の特殊性を踏まえ,一般労働者と同じ定量的な労働時間の管理にはなじまないとの判断を基礎として,労基法37条の適用を排除した上で,時間外で行われるその職務を包括的に評価した結果として,教職調整額を支払うとともに,時間外勤務命令を発することのできる場合を超勤4項目に限定することで,同条の適用排除に伴う教員の勤務時間の長期化を防止しようとしたものである。・・・

実をいえば、こういうロジック自体はそんなにおかしなものではありません。現実の学校の教員の仕事の実態がそうであるかどうかは別として、教育という職種についてこういう議論を展開すること自体は十分可能です。しかしながら、現在の実定法としては3種類の学校のうち公立学校にしか適用されておらず、国立学校にも私立学校にも適用されていない給特法の理屈付けを、ここまで平然と教員という職種の在り方に求めていられる神経が正直信じられないものがあります。

法律の適用関係になんかあんまり関心のない教育哲学者とかならともかく、六法全書の条文が判断の根拠でなければならないはずの裁判官が、「教員の職務の特殊性」などという無造作で雑駁な言葉一つで公立学校の教員のみにしか適用されない給特法を説明した気になれるのか、不思議でなりません。国立学校の教員であれ私立学校の教員であれ公立学校の教員と何ら職務内容において異なるところがないはずですが。

というわけで、公立学校の教員とまったくその自主性や自律性において変わるところがなく、それ故このさいたま地裁の裁判官の理屈からすれば「一般労働者と同じ定量的な労働時間の管理にはなじまない」から「時間外で行われるその職務を包括的に評価した結果として 」残業代を払ってこなかったのに、それが労働基準法違反だと𠮟りつけられるのですからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

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