これぞジョブ型、丸亀製麺@アメリカ
インチキジョブ型論への解毒剤として、昨日はアカデミックな自動車産業労働研究を紹介しましたが、も少し下世話なレベルでジョブ型ってものの本質がよく分かる記事がありました。
https://blog.btrax.com/jp/japan-dx-challenges/(アメリカの丸亀製麺から考える日本でDXが進まない本当の理由)
「めっちゃ人多くない?」と。それも、お客さんだけではなくて、従業員の数が。
従業員がめっちゃいる。列に並んでいる客と同じぐらいに。そして、それぞれのスタッフが “一つ” の作業しかしていない。
・・・そう、それぞれの工程がきっちりと分業されており、それぞれの “担当者” が決まっている。言い換えると、一人につき一つの作業が割り当てられているのだ。
- オーダーを取る人
- 麺を準備する人
- 麺を茹でる人
- 茹でた麺を渡す人
- 麺を冷やす人
- 麺をお椀に入れる人
- お椀に汁を入れる人
- お椀にトッピングを入れる人
- お椀をお客さんに渡す人
- 天ぷらを揚げる人
- 揚げた天ぷらを並べる人
- 会計をする人
これだけでも12人。
つまり、一杯のうどんがお客さんの手元に渡るまでに12人のスタッフが関わっていることになる。これは凄い。F1のピットストップを彷彿とさせる超分業スタイルだ。
これに加え、テーブルを片付ける人や後ろのキッチン、マネージャーなどを含めると相当の従業員数になるだろう。
これはもちろん、最低賃金レベルで雇うシングルタスクの労働者の話であって、もっと上の方のクラスに行けば、このタスク、あのタスクと書き並べたジョブ・ディスクリプションってものがでてくるわけです。でも、ものごとの本質はこういうこと。
リンク先でも嘆息しているように、同じような最低賃金レベルで雇うカジュアル労働力に対する要求水準が日本では超絶的に高くなる。
・・・これが日本だとどうだろう?例え決して時給の高くないコンビニのバイトであったとしても、少人数で超マルチタスクが求められる。
レジ業務はもちろん、棚卸しや各種支払い、宅配便の手配、簡単な調理、清掃などなど、数十種類のタスクを、一人のバイトがまかなうことも少なくはない。
言い換えると、コンビニは一人の人間が超マルチタスクで運営している。
いやいやそれどころか、雇われたばかりで教えられてもいないことを現場で即座に判断して店舗を回すことすら求められるわけですね。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/ojtposse25-bdaa.html(すき家流究極のOJT?@『POSSE』25号)
・・・その後、実際に店舗に入りましたが、商品の作り方については全く教わっていない状態で、入ってからも、時々優しい先輩が教えてくれる程度で基本的にはあまり教えてもらえません。そのような状況にもかかわらず、5回目くらいの勤務で深夜帯の「ワンオペ」をやることになりました。その日に出勤したらマネージャーがいて、「今日ワンオペね」といきなりいわれたんです。それで、いつ何をしたら良いかよくわからない状態のままワンオペになって・・・・・・・。商品の盛りつけ方がわからず、仕方がないのでメニューを客席から取って、メニューの写真を見ながら盛りつけをしました。後で知り合った大学1年生のアルバイトは、2日目でワンオペになったらしく、電話でマネージャーに聞きながら盛りつけをしたと言ってましたね。
一番ピンチだったのは、初日に「牛丼ライト」を注文されたときです。作り方がわからなくて、どうしようかと焦りました。・・・どうしようもなくて、インターネットで「すき家 牛丼ライト 作り方」というようなキーワードで検索してみたところ、「ヤフー知恵袋」で同じような質問をしているような人を見つけました。・・・
世界広しといえども、現場の労働者に何も教えず、ヤフー知恵袋で調べさせるほどにまでOJTをとことんつきつめた企業はすき家くらいではないでしょうか。
仕事の技は先輩から盗めということわざはありますが、ヤフー知恵袋で調べて対応しろというのは、まことに究極のOJTといえましょうか。
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本題と少しずれてしまうのですが、そのようなマルチタスクが求められる今、休憩時間が一斉付与の原則を保っているのは、おかしい、見直すべきという議論はないのでしょうか。
気が向いたら、hamachan先生の休憩時間に関するご意見も拝見したいものです。
投稿: 工場法の窓から | 2022年2月28日 (月) 23時16分