ダークサイドに落ちた生存競争の落伍者
隠岐さや香氏と東浩紀氏の間の半ば感情的な一連のやりとりに関わる気は毛頭ありませんが、隠岐氏の恐らく無意識に漏らした片言隻句がどういう人々の心にぐさぐさと刺さったのだろうかということを考えると、第一線で活躍中の東氏なんかよりも百万倍、非正規労働でその日を支えながら暮らしているテニュアをとれないまま中高年化した人文系知識人の人々にであろうし、これは位相をすこしずらすと(もう15年も前のことになりますが)赤木智弘氏が当時の『論座』で「丸山眞男をひっぱたきたい」と叫んだことにつながり、さらには戦前の帝国議会で斉藤隆夫がいわゆる粛軍演説の中で、当時の右翼的革新運動を「生存競争の落伍者、政界の失意者ないし一知半解の学者」と罵っていたことにまでつながっていきますね。
松尾匡さんの言うレフト2.0、格差や貧困を糾弾するレフト1.0とは対照的に、もっぱら政治的に正しいアイデンティティポリティクスやダイバーシティを追求するレフト2.0が、まさにダークサイドに落ちた生存競争の落伍者に対して投げかける侮蔑的眼差しが、どういうどろどろした「魔」を水底から引きずり出してくるのかといういい実例かもしれません。
ピケティの言うバラモン左翼に踏みつけられた者が商売右翼の培養土となっていくという因果応報の世界。その意味では、このつぶやきは(そのまなざしの冷酷さまで含めて)それ自体がその構図を的確に描き出している。
https://twitter.com/okisayaka/status/1489455501968830467
ところで最近、2000−2010年代に大学改革の犠牲になった(ようにみえる)人文系論客がダークサイドに落ちてオルタナ右翼っぽい論調でダイバーシティを叩いて客集めをしているようで、なんともディストピア。是非本来の敵に立ち向かってほしいのだが、はけ口がそっちに行っちゃうんだな…
(参考)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_2af2.html(赤木智弘氏の新著その2~リベサヨからソーシャルへ)
>男性と女性が平等になり、海外での活動を自己責任と揶揄されることもなくなり、世界も平和で、戦争の心配が全くなくなる。
>で、その時に、自分はどうなるのか?
>これまで通りに何も変わらぬ儘、フリーターとして親元で暮らしながら、惨めに死ぬしかないのか?>ニュースなどから「他人」を記述した記事ばかりを読みあさり、そこに左派的な言論をくっつけて満足する。生活に余裕のある人なら、これでもいいでしょう。しかし、私自身が「お金」の必要を身に沁みて判っていながら、自分自身にお金を回すような言論になっていない。自分の言論によって自分が幸せにならない。このことは、私が私自身の抱える問題から、ずーっと目を逸らしてきたことに等しい。
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> 労働者供給元的な権力構造も垣間見えたりして、いささか興味深い面も無きにしも非ず
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2022/01/post-c2d14d.html
> 本来の敵に立ち向かってほしい
> 地道な交渉と抵抗の積み重ね
https://twitter.com/okisayaka/status/1489455501968830467
https://twitter.com/okisayaka/status/1489458780777906178
学者としてのお仕事というより、「隠れ労働者供給事業者」としてのお仕事ですわね。敵だと言ってるのは、「供給先のリストラ勢力」、及び、「ライバル事業者」辺りでしょう。東君みたいに新規の供給先を開拓するのも、お仕事だと思うのだけど、それの何が気に入らないのかしら
投稿: たくらま | 2022年2月 5日 (土) 20時31分
ジェンダー研究者の皆さまへ:「男が暴言を吐いていいように、女だって吐いていいわよね」というリベラルなフェミニズムが衰退して、「女の暴言は弱者の声だから、よく聴いて上げるべき、男の暴言は強者の暴力であり、そのようなことを働く男はキャンセルされるべき」というバラモンなフェミニズムが拡大している構造については、分析を進める価値がある、と思うんですけどね
> 政治的に正しいアイデンティティポリティクスやダイバーシティを追求するレフト2.0が、まさにダークサイドに落ちた生存競争の落伍者に対して投げかける侮蔑的眼差し
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2022/02/post-712ad5.html
> 人をクズ呼ばわりするのに法的な根拠は一切いらないと思うぞ。あえて言えば表現の自由
https://twitter.com/Cristoforou/status/1294121624724070400
> フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html
投稿: 手前味噌 | 2022年2月 6日 (日) 09時15分
> 怒りを感じたらみんなで集まり、デモや示威行動で表現すればいい
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/06/post-9979b9.html
> 女性差別の存在を利用して自分の影響力を拡大しようとする
https://twitter.com/hazuma/status/1489438395499966467
バラモンさんに広く見られる傾向として、
騒ぎを大きくできれば、より良い方向に変化する蓋然性が高くなる
みたいに思っている節があるようですね。
良い方向=自分の影響力が増大をする
だとすれば、多分、間違ってないですね。ただ、ときどき、逆方向に爆発しますよ、と。
投稿: プラスα | 2022年2月12日 (土) 11時23分
なるほど
> 日本にとっても他人事ではない
https://twitter.com/hahaguma/status/1500287683931013120
> 「俺が無職で収入がない」から
https://twitter.com/ry355828_e/status/1500363664490393601
投稿: エイター | 2022年3月 6日 (日) 23時52分
> リベラルな規範を努力して身に着けたのだ。ゆえに良いポジションについてしかるべきだ。だらしない快楽や欲望を制御できていない人々が良き社会から転落するのは当然である
https://twitter.com/GoITO/status/1522742677149986816
この件については、そうなんでしょうが、気になるのは
これって日本(のバラモン)に特有なのでしょうかね?
> 低所得者の選好は学歴によって二分され、低学歴の者はルペン(極右)に、高学歴の者はメランション(左翼)に投票した
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/05/post-3616d9.html#comment-121327113
高学歴なのに学んだことが収入に結びついてない、その
ときに大学院で一体、全体、どんなことを学んだか?と
いうことに重要なヒントがありそうな気もするのですが
投稿: わたがし | 2022年5月 8日 (日) 14時10分