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2022年1月18日 (火)

アジア・パシフィック・イニシアティブ『検証 安倍政権』

Img_31cdd25c71df06e2da4e42c5b3b01b8b1160 アジア・パシフィック・イニシアティブ『検証 安倍政権』(文春新書)をお送りいただきました。

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166613465

史上最長政権の内部で何が起きていたのか?
安倍、菅、岸田、甘利、石破など政権キーパーソン54人への徹底インタビューが明かす内幕!

 アベノミクス、選挙での圧勝、戦後70年談話、さまざまなスキャンダル、憲法改正をめぐる騒動、TPP……。7年8カ月という例をみない長期政権の評価は、いまも定まっていない。この間、日本の政治をとりまく見方は「反安倍」か、さもなくば「親安倍」かに二分された。
 では、この第2次安倍政権は、結局、何をやろうとし、何を残したのか? 『新型コロナ対応民間臨時調査会』『福島原発事故10年検証委員会』など、話題を集めるレポートを次々発表しているアジア・パシフィック・イニシアティブが、政権当事者に対する徹底インタビューを軸として、その政権の内幕に迫る。

という本なんですが、この集団に私は全く縁がなく、どういうわけで送られてきたのかな?とおもって読んでいくと、どうもこれかな、という章がありました。

辻由希さんの書かれた第8章の女性政策が、女性活躍推進法や同一労働同一賃金に触れていて、そこの関係で私にも送られてきたのでしょう。

本書はほかの章もそうですが、徹底した当事者へのインタビューによって一体何が起こっていたのかを明らかにしようという意図が貫かれています。あらかじめ脳内に作った枠組みで裁断するようなことをしないというその姿勢は大変立派だと思いますが、一方で当事者へのインタビューによる歴史叙述は、その当事者自身によるバイアスから逃れられないという問題もあります。この章の叙述を読んでいて、若干そういう傾向を感じました。

同一労働同一賃金の政治過程については、本書でも引用されている朝日新聞の澤路記者らによるものがありますが、そちらがもっぱら官邸における政治過程に着目しているのに対し、本書は当時の塩崎厚労相の証言をかなり使っている点が特徴です。そして、読んでいくと、官邸の進める政策に対して、塩崎厚労相が異なる意見を持ち、議論の結果決着したというようなストーリーになっていますが、いささか疑わしいと思います。

官邸主導といった場合、官邸で方向が決められる段階と、決められた方向性が各省庁に降りてきて詳細が決められる段階があり、ここでの話は前者の段階であって、実際にはほぼ完全な官邸主導の決定であったと考えられます。特に、当時は厚労省の幹部が内閣に併任発令され、官邸幹部から直接に指示される体制であり、意思決定プロセス自体が官邸に包摂される状況だったので、塩崎大臣の個人的な意見が入りこむ余地はほとんどなかったのではないかと思われます。

当時、官邸の働き方改革推進会議と並行する形で厚労省に設置された同一労働同一賃金の検討会も、委員の人選については塩崎大臣の意思がはいっていると思われますが、その議論はほぼ官邸主導になっていたようです。このあたり、もう少し細かく微妙なところをみていく必要があるでしょう

この辺、当事者のインタビューによって事実を再構成する場合の注意点ではないかと思われます。

その他の章もそれぞれに興味深いものがあります。人によってどこが面白いかというのもさまざまでしょうが、ここでは第1章のアベノミクスについての最後のところに書かれた、「リフレ政策の『失敗』ゆえの『成功』」というやや皮肉な春秋の筆法めいた結論の部分を引いておきます。

・・・結果論であるが、リフレ派の教祖的存在の岩田規久男が副総理に就任し、自ら政策決定に携わったことが、日本銀行に対する政界やリフレ派からの批判を封じ込めるのには最も効果的であった。・・・

異次元緩和を唱えた雨宮は、一部のOBから強い批判にさらされている。だが雨宮は、異次元緩和を実施し、その限界を明らかにすることで、金融政策の主導権をリフレ派から取り戻した。このことによってリフレ派、さらには政界やメディアによる故なき批判から、日本銀行を解放したとも言える。・・・

 

 

 

 

 

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