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2022年1月13日 (木)

”採るべき人”と”採ってはいけない人”の間

毎度のことながらネット上はあちらでもこちらでも炎上ネタが転がっているようですが、その騒ぎをちょっと斜め後ろ方面から見ると、これもまたいろいろと興味深い視角が開けてきます。

https://kabumatome.doorblog.jp/archives/65990403.html

話の出発点は、某社人事部の方の

採用は"採ってはいけない人”を見極める仕事だ。最近意味が分かってきた。

というつぶやきで、これがなぜか大炎上したようですが、でも、ジョブ型じゃなくて、メンバーシップ型の採用の本質から言えば、これはなかなか本質を言い当てている感もあります。

もちろん、世界共通の雇用のベースラインモデルであり、日本以外の社会ではみなそうであり、日本だって法律の建前上はそうであるところのジョブ型雇用社会の原理からすれば、

採用は”採るべき人”を見極める仕事だ。

ということに尽きるのです。特定のスキルを要する特定のジョブに、もっともそれを的確に遂行しうると思われる人を当てはめることが採用であるならば、それ以外のことはすべてたわごとに過ぎない。

ごまんといる膨大な人の中から、特定のジョブを遂行しうる数少ない特定の人を選び出すという至難の業こそが採用だと思っている人からすれば、どんな仕事ができるかできないかなどとは何ら関係なく、ただトンデモな地雷を踏まないことが大事だなどというのは、採用の風上にも置けないはずでしょう。

でもね、それはジョブ型社会の話であって、メンバーシップ型社会ではそもそも特定のジョブを遂行しうる人を採用するんじゃないのだから、話の筋道がそれとは違うわけです。

会社の必要に応じてどんな仕事でも一生懸命取り組んでこなしていくような人材こそを求めているのである以上、そういう”採るべき人”とは、”採ってはいけない人”の補集合としてしか定義のしようがない。

そう、”採ってはいけない人”とは、採用から定年退職までの長期間会社のメンバーとしてやっていけそうもないトンデモな「地雷」のことを意味するのですから、この某社人事部の方のセリフはまさにメンバーシップ型採用の本質を言い当てているのであり、そう考えると「最近意味が分かってきた」というのも誠に意味深いものがありますね。

何なんだよ、あいつは。とんでもねぇ奴だな。誰だよ、あんな奴採用したのは。え?何年入社だって?そん時の人事課長は誰だよ。こんな奴だとわかって採用したのかね・・・

てなことの一つや二つが転がっていない会社はたぶんあんまりないはずです。みんな心当たりがあるでしょう。だって、みんなメンバーシップ型にどっぷり漬かってきているんだから。

何べんも言うけど、ジョブ型ってのは入口がアルファでありオメガであって、それ以外はすべてそのコロラリーに過ぎない。入口をそのままにして、賃金処遇だけジョブ型と称して成果主義にしてみたところで、”採ってはいけない人”を見極めることが人事部の最大の任務であるということには何の変りもないのですから。

 

 

 

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コメント


先日のテレビで
3億程度使うのだから見極めるという採用の話があった。
つまり、それこそメンバーシップ型なんだよな
また、総合職という 要はなんでもありなんだよ
という現実を学生が知らないということもあるんで
志望と違う仕事に配属されたっていって
ネットで騒いでいる
ないしは
退職しているという話もある。これは人事が騙したとか言っているが
総合職って というか
メンバーシップ型なら そうじゃんということを
学生が知らなすぎる。
いや、まあ
ジョブ型なら、そもそもその職種で
かつ 素人なら
その会社に採用されへんやん。
反面 学生も どの会社がいいって
memberの一員になりたいという
一方で就活の願望もあるんで
まあ ねじれてるなあ

一般論としては「大抵スキルを問題視してないショボい仕事だから人間性ぐらいしか見てない」というのはあると思うのですが、 SanSan 社とかの IT ベンチャーだと平均勤続年数もとても短かく社内での定期人事移動などもあまりなくてある程度はスキルに基いた採用をしていると思います(とはいえつきつめて内外比較すれば「スキルより人格」な日本的世界の要素はどうあれ大いにあるとは思いますが)。

また「採用」とおおざっぱにこの手の人達がインターネットで言うときほとんど「ソフトウェアエンジニアの採用」の話であることが前提になってると思います。普通の日常的な製品開発でも研究開発に近い性質があって、非常に嫌な言い方ですが、完全な人格破綻者とイノベーターを見分けるみたいなことはどうしても必要になってきます。あるいは言い換えれば「技術的な面はともかく協調性などのソフトスキルを定義、測定することができていない」というような命題となるかもしれません(これにかんしてはついては洋の東西問わずだと先生の著書などから私は読み取っております)。

「ギリギリを見極めて挑戦的な人間を採用していかないといけないが、ヤバいの採りたくない」という独特の問題意識があること、そしてそこにあるべき人権的な視座への無理解みたいな、なんというかこの界隈に特有の雰囲気があるというのは、お伝えしておきたいところです。

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