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« 人文系研究職の雇用構造が垣間見えて面白いんだが | トップページ | 一人自営業者労働協約ガイドライン案@『労基旬報』2022年1月25日号 »

2022年1月23日 (日)

ラスカルさんの拙著書評

今まで何回も拙著をブログで書評してきていただいているラスカルさんが、『ジョブ型雇用社会とは何か』について大変長い-一つのエントリも長いのに、さらに連続して2つのエントリをアップ-書評を書かれています。

https://traindusoir.hatenablog.jp/entry/2022/01/22/141827(濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と転機』)

https://traindusoir.hatenablog.jp/entry/2022/01/22/141902(高学歴化と労働者の学歴構成)

第1のエントリでは、本書の内容を手際よく説明しますが、

 2009年に刊行した『新しい労働社会』において、著者は日本とは異なる欧米諸国の雇用システムを「ジョブ型」と名付け、それとの対比から、日本の雇用システムを「メンバーシップ型」という観点で説き起こした。近年、日立など日本の大企業が目指す賃金・雇用管理制度の見直しに関し「ジョブ型導入」との報道がなされ、その内容が日本的雇用慣行に染まる文脈から抜け切れず、ジョブ型への誤った理解をもたらしかねない危うさを孕むものであったことから、著者は「覚悟を決めて」本書を「世に問うことにした」とのことである*1。
 本書では、本来のジョブ型とはどのようなものかを確認しつつ、日本の雇用システムを入口から出口、賃金、労働時間制度や労使関係に至るまで、細部に渡り、「メンバーシップ型雇用」という観点から徹底的かつ過不足なく論じ切る。

その終りの方で私の整理にやや異を唱える形で次のエントリにつなげていきます。

・・・・これらの動きを鑑みると、このところの(日本版)ジョブ型雇用をめぐる動きは、必ずしも中高年の賃金是正を意図したわけではなく、むしろ労働供給側の変化を踏まえ、日本の雇用システムの入口における変革を意図したものであるとも捉えられる。

もっとも、この第2エントリは論ずるというよりもその前提となるデータの確認になっていて、おそらくこの後本格的な議論が展開されるのではないかと思われます。実をいえば、昨今のジョブ型狂想曲の主要モチーフは「働かないおじさん」対策であるとしても、その背後に基調低音として(ある意味一国二制的なイメージではあるけれども)入口から高処遇の専門職コースの構築という意図が垣間見えるのも事実なので、そこは食い違う話でもないと思うのですが、後者は少なくとも現時点で予見しうる将来にわたってマジョリティになるような話ではなく、まさに一国二制的な形でしか現実化していかないであろうと思われるので、一般向けの本書ではあまり強調しなかったという経緯があります。

いずれにしても、このラスカルさんの議論が今後どのように展開されていくのか、素材にされたわたくしとしても大変興味がありますので、引き続き見ていきたいと思います。

 

 

 

 

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