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2021年12月 6日 (月)

まだ給特法の下にあると思い込んでいる国立学校への鉄槌

略して「給特法」といいますが、実は正式名称は17年前に変わっているんです。

1971年に制定されたときから2003年までは「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」でしたが、2004年に国立学校が非公務員型の独立行政法人になったことにより、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」となり、国立学校はこの法律の適用から外れて、純粋の民間の私立学校と同じ法的地位になっています。

ところが、そういうことが分かっていないまま漫然と日を過ごしていたために、こういう事態に立ち至ったようです。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/146988(未払い残業代8億7千万円 国立大18法人に労基署勧告)

Fae8254eefeceffe1ef31db020cd27fc_1 小中高校などを運営する全国56の国立大学法人のうち、埼玉大や高知大など20法人で、付属校に勤務する教員の時間外労働に対する割増賃金の未払いがあったことが5日、共同通信のアンケートで分かった。うち18法人が労働基準監督署から是正勧告を受けていた。未払いの残業代を明らかにした14法人の総額は計約8億6990万円に上った。
未払いがあったのは他に山形大、筑波大、京都教育大、長崎大など。
11月に勧告を受けて未払い額を算出中の三重大と、アンケートに金額を明らかにしなかった5法人を含めると、全体額はさらに増える。

もちろん、設置形態の如何を問わず、大学教授については(一定の要件の下に)専門業務型裁量労働制が適用されていますからいいのですが、小中高の教師はいかなる意味でも裁量労働制ではないので、当然こういうことに相成るわけです。 

まあ、しかし、こういうことになってしまうのにはやはり理由があって、それは現行法の建付けを全く理解しないまま、文部科学省のおかしな屁理屈をそのままオウム返しにするようなレベルの低い判決を出してしまう裁判官がいるからなんですね。

先日の埼玉県の給特法裁判の判決で、さいたま地裁は原告教師の訴えを退けました。現行法規定を前提にする限りその判断は正しく、超勤4項目以外の残業は給特法ではなく労基法37条が適用されるという原告の解釈は無理があります。しかし、この判決が正しいのはその結論のみであって、延々と書いている理屈づけは全て間違っています。曰く:

https://www.call4.jp/file/pdf/202110/678384c33434330ec38d7c82a13c81bf.pdf

ア すなわち,教員の職務は,使用者の包括的指揮命令の下で労働に従事する一般労働者とは異なり,児童・生徒への教育的見地から,教員の自律的な判断による自主的,自発的な業務への取組みが期待されるという職務の特殊性があるほか,夏休み等の長期の学校休業期間があり,その間は,主要業務である授業にほとんど従事することがないという勤務形態の特殊性があることから,これらの職務の特質上,一般労働者と同じような実労働時間を基準とした厳密な労働管理にはなじまないものである。例えば,授業の準備や教材研究,児童及び保護者への対応等については,個々の教員が,教育的見地や学級運営の観点から,これらの業務を行うか否か,行うものとした場合,どのような内容をもって,どの程度の準備をして,どの程度の時間をかけてこれらの業務を行うかを自主的かつ自律的に判断して遂行することが求められている。このような業務は,上司の指揮命令に基づいて行われる業務とは,明らかにその性質を異にするものであって,正規の勤務時間外にこのような業務に従事したとしても,それが直ちに上司の指揮命令に基づく業務に従事したと判断することができない。このように教員の業務は,教員の自主的で自律的な判断に基づく業務と校長の指揮命令に基づく業務とが日常的に渾然一体となって行われているため,これを正確に峻別することは困難であって,管理者たる校長において,その指揮命令に基づく業務に従事した時間だけを特定して厳密に時間管理し,それに応じた給与を支給することは現行制度下では事実上不可能である(文部科学省の令和2年1月17日付け「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」〔文部科学省告示第1号〕においても,教育職員の業務に従事した時間を把握する方法として,「在校等時間」という概念を用いており,厳密な労働時間の管理は求めていない。甲82)。このような教員の職務の特殊性に鑑みれば,教員には,一般労働者と同様の定量的な時間管理を前提とした割増賃金制度はなじまないといわざるを得ない。
 そこで,給特法は,このような見地から,教員に対し,労働時間を基準として一定の割増賃金の支払を使用者に義務付ける労基法37条の適用を排除し,その代わりに,前記のような教育的見地からの自主的で自律的な判断に基づく業務に従事することで,その勤務が正規の勤務時間外に行われることもあり得ることを想定して,その労働の対価という趣旨を含め,時間外での職務活動を包括的に評価した結果として,俸給相当の性格を有する給与として,教職調整額を支給するものと定めたものということができる。
イ ところで,労基法37条は,使用者に時間外労働への割増賃金の支払を義務付けて,時間外労働に従事する労働者への補償を行うとともに,使用者に経済的な負担を課すことで,時間外労働を抑制することを目的とした規定であるが,この規定の適用が排除されることによって,教員に無定量な時間外勤務が課され,教員の超過勤務の抑制という給特法の制定趣旨に反する結果を招来しかねないことになる。そこで,給特法は,教育職員に対して正規の時間勤務を超える勤務を命じることができる場合を,政令の基準に従って条例で定める場合に限定し(同法6条1項),これを受けた平成15年政令及び埼玉県の給特条例は,前記の場合を超勤4項目に該当しかつ臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限る旨を定めて,これにより,教育職員へ無定量な時間外勤務が課されることを防止しようとしている。
ウ このように,給特法は,教員の職務の特殊性を踏まえ,一般労働者と同じ定量的な労働時間の管理にはなじまないとの判断を基礎として,労基法37条の適用を排除した上で,時間外で行われるその職務を包括的に評価した結果として,教職調整額を支払うとともに,時間外勤務命令を発することのできる場合を超勤4項目に限定することで,同条の適用排除に伴う教員の勤務時間の長期化を防止しようとしたものである。
このような給特法の構造からすると,同法の下では,超勤4項目に限らず,教員のあらゆる時間外での業務に関し,労基法37条の適用を排除していると解することができる。

もしこの理屈が正しいのであれば、まったく同じ職務を遂行している私立学校や国立学校の教師についても全く同様の法制度が適用されていなければおかしいはずですが、もちろんそのようにはなっていません。

給特法という法律は、いかなる意味でも教師という職種の特殊性に着目した法律ではなく、もっぱら公立学校に勤務する地方公務員であるというその身分にのみ着目した法律であり、それゆえ私立学校の教師は歴史上一度も給特法が適用されことはなく、また国立学校教師はその経営形態の変更に伴って、その職務内容はいささかも変更がないにも関わらず給特法の適用下から非適用に移行したのです。

そんなことは立法経緯を一瞥すれば中学生でも分かりそうなことなのに、この裁判官は漫然と実定法上なんら根拠のない「教員の職務の特殊性」を振り回して恬然としているのですから、国立学校の皆様方が、自分たちがもう20年近くも前から給特法の適用下にはなくなっているという重大な事実に全く盲目であったことも、むべなるかなというしかないところです。

 

 

 

 

 

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