岩波書店の『図書』12月号で「著者からのメッセージ」
岩波書店の広報誌(だよね)の『図書』12月号の「著者からのメッセージ」に、『ジョブ型雇用社会とは何か』についての簡単な自己紹介文を寄稿しております。
昨今ジョブ型という言葉が氾濫しています。日本的なメンバーシップ型と対比してこの言葉を作ったのは私自身ですが、マスコミに溢れるジョブ型論はほとんど一知半解で間違いだらけです。
中でも目に余るのが、労働時間ではなく成果で評価するのがジョブ型だという議論です。頻繁に紙面で目にするためそう思い込んでいる人が多いのですが、九割方ウソです。むしろ、ジョブ型社会では一部の上澄み労働者を除けば仕事ぶりを評価されないのに対し、メンバーシップ型では末端のヒラ社員に至るまで評価の対象となります。ただその評価の中身が能力や意欲に偏り、成果による評価が乏しいために、日本の管理職はぬるま湯に安住しているという批判が出てくるのです。
ジョブ型、メンバーシップ型というのは、現実に存在する雇用システムを分類するための学術的概念で、本来価値判断とは独立のものです。世に横行するジョブ型論者はあたかも新商品の売り込みネタとでも心得ているかのようで、本書はいい解毒剤になるのではないかと思います。
なお、本日岩波の編集部から連絡があり、第4刷が決まったようです。これもすべて皆様の熱いご支持の賜物と感謝申し上げます。
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本日(24日)に開催される労働政策審議会・人材開発分科会(議題:「今後の人材開発政策について(『リカレントガイドライン(仮称)』の策定等)」の資料が公開されています。
その資料の中で前回分科会でのリカレントガイドラインに関する委員意見の中に「ジョブ型雇用の間違った捉え方の中で」と記載されていました。
この発言をした委員も貴書『ジョブ型雇用社会とは何か』を読まれたのでしょう。貴書を岩波新書から出版された意味は大きいと、あらためて思いました。
「ジョブ型雇用という言葉の使い方は考えていく必要あり。不安定雇用につながらないようにすべき。リカレントガイドラインは、むしろ労働者を不安定雇用にしないための将来の働き方をしめすものであるべき。不透明の時代にあって、変幻自在な職業人生を選んでいくという[プロティアンキャリアプロティアンキャリア』に近い。ジョブ型雇用の間違った捉え方の中で不安定雇用にいくよりは、特に日本人は組織の中で活かされる安定雇用の中でこそ生産性が上がるというところもあるので、そういった(観点から、)日本の職業能力開発にあるべき姿を考えさせていただきたい。」(「資料2 前回の分科会の議題2に対するご意見」より)
投稿: 佐伯博正 | 2021年11月24日 (水) 05時10分