フォト
2021年12月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

« 古賀茂明氏の偉大なる「実績」+α(再掲) | トップページ | 出来たばかりの国家の初年度予算・・・・ »

2021年11月12日 (金)

牛島信さんの拙著への感想が面白い

71cahqvlel_20211112195401 法律家たる小説家という割と稀有な立ち位置におられる牛島信さんが、拙著『ジョブ型雇用社会とは何か』について感想を述べておられるのですが、その一言一言がいろんな意味で面白いのです。

https://japan-indepth.jp/?p=62918(「メンバーシップ型日本を消去する?できる?しないと・・・」 続:身捨つるほどの祖国ありや11)

 「世の中の圧倒的に多くの人々が、そういう実定法の思想の建前をまったく認識せず、労働者こそが会社のメンバーであり、株主こそ会社にとって外部の第三者だと思い込んでいる」(濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書2021年)
「そういう実定法の思想の建前」とは、「会社とはそのメンバーである株主の所有物であり、経営者とは株主の代理人として利潤の最大化に挺身すべきものであり、労働者とは会社の外部の第三者であって、雇用契約によって労働を提供し報酬を受け取る債権債務関係にあるに過ぎません」というものだと、濱口氏自身によって解説がされている。
濱口桂一郎氏とは、「日本的なメンバーシップ型と対になるジョブ型という言葉を造ったのは私自身です。」という方である(1頁)。
私は、その濱口氏が、現在形をつかって圧倒的に多くの人々の思い込みを説明しているという事実に、少なからざる衝撃を受けた。
会社法の世界に住む者にとっては、濱口氏のいう「建前」こそが当たり前だと考えられていると知っていたからである。
しかし、濱口氏の考えそのものは意外ではない。現実にも、私のまわりにいる多くの経営者はそう考えているのではないかと思うことがあるからだ。・・・

この「少なからざる衝撃を受けた」という言葉と、その直後の「意外ではない」という言葉は、一見矛盾しているようですが、これはおそらく牛島さんが属している二つの文化圏の違いであり、その一方の法学部で教えられ学ばれる概念体系は、法律家としての牛島さんにとっては全ての出発点である以上、そこからの「少なからざる衝撃を受けた」という言葉は確かに真実であると同時に、小説家として世間の市井の人々の感覚によりそう牛島さんにとっては、それはあまりにもなじみのあるもので、「意外ではない」というのもまた当然なのでしょう。

この本には、大塚万丈という名前が出てくる(270頁)。読者のなかにはその名をご存じのかたもあるに違いない。設立当時の経済同友会で活躍された方である。
経済同友会が1947年に『企業民主化試案』を書く際の中心人物だった。
「そこに書かれた思想は戦後日本の根本思想となりました。」と濱口氏は言う(271頁)。すぐに忘れられてしまった本ではあっても、その「イデオロギーが全ての日本人の頭の中を支配するミーム(文化的遺伝子)となった。戦後日本社会の根本思想となりました。」(同頁)
全ての日本人である。私も、読者であるあなたも含まれることになる。我々そういう文化的遺伝子を持っているということらしいのである。 

この「らしいのである」といういかにも「いや俺は知らんけど、世間ではそうらしいね」といわんばかりのデタッチトな感じは、法律家としての牛島さんの魂が言わせている文句なのでしょうが、でもここでもそのすぐ後で、

実のところ、私はそういうミームなるものがあると言われても、さしたる違和感はない。むしろ、そうなのだろうなと思うのである。 

と、やはり市井の感覚がじわりと滲み出してきます。

その「雇用システムの根っこから物事を見直すと、かくも世の中の見え方が代わってくるのか、という驚きの体験が待っている」本がこの本だと、濱口氏は「はじめに」で語られる(ii頁)。
しかし、私は驚かなかった。 

そう、当然法律家として日本国の法律の建前を熟知し、それに則って法律家としての行動をしてきた牛島さんにとって、本書が驚かせる相手として想定している、六法全書にはそもそもどういうことが書かれているかなどは全然知らず、ただただ世間一般の市井の感覚だけで生きている人々とは異なり、そんなことで驚くはずはありません。

ところが、そこには驚かない牛島さんが、法律家としてのあるべき姿からすればむしろそこにこそ驚くべきところに、まずは「少なからざる衝撃を受けた」とか「らしいのである」と驚いて見せながら、そのすぐ後に、実は全然驚いていないということをちらりと明かしてしまう、というところに、この問題の一筋縄ではいかない構造が垣間見えているようにも思われます。

 

 

 

« 古賀茂明氏の偉大なる「実績」+α(再掲) | トップページ | 出来たばかりの国家の初年度予算・・・・ »

コメント

いつも拝見させていただいています
大学の卒論に西ドイツの経営参加について述べています(論じるまでは言っていません)
先生の最近の2冊を拝読し、勉強不足を痛感しています

形式上労働者代表制みたいな組織はありますが、労働組合のない会社に入社(正しくは雇用され)し定年まで勤務し、現在は駐車場管理の仕事をしています。

下記のような、togetter.を見ましたので参考までに
”米国大で「米国で成果主義を普及させるには」というお題に同級生が皆頭を抱えていた→ 「成果主義の国」という固定観念の日本人として大混乱した経験”
https://togetter.com/li/1802541

なるほど、面白いですね。日経新聞をはじめとするいんちきジョブ型に騙されて、ジョブ型のアメリカこそ成果主義のメッカに違いないと思い込んでいる日本国民のなんと多いことか・・・
しかし、『ジョブ型雇用社会とは何か』をちゃんと読んでるチコちゃんは知っています。
でも読んでない人々は、いまだにそう思い込んでいるので、こういう事態に陥るんですね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 古賀茂明氏の偉大なる「実績」+α(再掲) | トップページ | 出来たばかりの国家の初年度予算・・・・ »