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2021年10月16日 (土)

自治体は雇用契約を結べないけれど、偽装請負だと雇用になってしまう件について

こういう増田が話題になっていて、

https://anond.hatelabo.jp/20211014160920(埼玉県ワクチン接種センターで働いていたのに労働者ではないと言われた話)

謝金扱いだから労働契約がないとのことだったが、時間や勤務場所が拘束されていること・この仕事をしろと指示されていることなどから、「使用従属関係」が発生するのではないか。 

こういう応答がされているのですが、

https://anond.hatelabo.jp/20211015101356

自治体が人を雇う場合、一般的な雇用契約をすることができない。少し前までは曖昧にされてたが、総務省が古い解釈を今更示したせいで、一時的であれ短時間であれ、明確に公務員として任用せねばならなくなった。令和2年度4月から施行された会計年度任用職員てやつだ。 

いや、それは教科書レベルの回答であって、も少しディープな話があるんだな。

確かに、使用者が労働者に指揮命令する雇用契約については、自治体は民法上の雇用契約を締結することはできず、正規であれ非正規であれ任用による公務員という形で使用しなければならない。それは確かなんですが、一方で、契約上は雇用契約じゃなく請負だの準委任だといった非雇用契約の形をとっていても、その実態が指揮命令していれば契約の文言に関わらず雇用とみなされるという法理もちゃんとある。問題は、これが自治体にも適用されるのか、それとして締結することはできない雇用契約が、偽装請負だという理由で結果的にできてしまうことがあるのか?という点にあるわけです。

そして、この点について「然り」と判断した裁判例がちゃんとあるのですよ。私が昨年6月に東大の労働判例研究会で評釈した浅口市事件判決です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-e462a4.html(浅口市事件評釈@東大労判)

御多分に漏れず、東大の労働判例研究会もリモート開催となっていますが、昨日は私の番が回ってきて、浅口市事件(岡山地倉敷支判平成30年10月31日)(判例時報2419号65頁)を評釈しました。

・・・このように、地方公共団体は自ら意図的に雇用契約を締結することはできないのであるが、本判決は労働者性に関する判断基準を用いることによって、その主観的意図としては労務参加契約という名の請負契約を締結したはずであったYが、客観的には雇用契約を締結していたことになるという筋道によって、結果的に雇用契約を締結することができる回路を付与したような形になっている。

 これは公務員法が想定していない帰結ではあるが、労働者性に関する判断基準を素直に解する限り回避することはできない理路である。なぜなら、公務員法が明示ないし黙示に禁止しているのは、雇用契約を雇用契約として締結することに限られるのであって、厳密に労働者性判断基準に照らせば雇用契約になりうる個人請負契約を締結することは自由であるし、それが結果的に雇用契約であることが判明したからといって、主観的に個人請負契約として締結された契約関係が無効になることもあり得まい。その意味では、法理的にはこれはもともと雇用契約であったものがその性質通りに判明したものではあるが、現実社会における存在態様からすれば、個人請負契約として締結されたものが労働者性判断基準という操作をくぐらせることによって雇用契約に転化したものと認識されることになろう。・・・

・・・以上から、地方公共団体が締結した個人請負契約がその実態に即して雇用契約であると判断されることを制度的に回避することは不可能であり、従って地方公共団体が個人請負契約を利用する限り、法律上存在しないことになっている公務員としての地位を有さず地方公共団体と雇用契約に基づいて労務を提供する者は常に生じうることになる。かかる存在が法理上存在可能であることは、国家公務員法上に外国人との雇用契約が明記されていることからも明らかであり、地方公務員法が想定していないからといって、法理上その存在を否定することもできない。

 本判決は、樹木伐採作業に従事する労務参加契約というやや特殊な地域性のある事案であったが、今後フリーランス等の雇用類似の働き方が増加し、国や地方公共団体においてもそうした人々を個人請負契約の形で活用することが増えるならば、その労働者性の判断を通じる形で、結果的に国や地方公共団体との雇用契約で就労する者が増加していく可能性もあり得る。これに対していかなる法政策的対応があり得るのか、検討をしておく必要もあるのではなかろうか。

この事件のインプリケーションは結構大きいものがあり、その後今年5月に刊行された『日本労働法学会誌』134号では、弁護士で信州大准教授の弘中章さんが、この判決にも触れながら、この問題を論じています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/05/post-17206c.html(『日本労働法学会誌134号』)

Isbn9784589041586_20211016202501  さて、学会誌には大会の記録以外の論文も載っています。その中でいささかびっくりしたのは、弁護士で信州大准教授の弘中章さんの「公共部門における「委託型就業者」に関する一考察」です。何にびっくりしたかというと、私が東大の労働判例研究会で報告したまま活字にすることなくひっそりとホームページに乗っけておいた評釈を引用されていたのです。浅口市事件((岡山地倉敷支判平成30年10月31日)(判例時報2419号65頁))という、市との労務参加契約の雇用契約該当性が問題になった事案です。・・・ 

 弘中さん曰く:
・・・しかし、最近の裁判例では、個人が行政主体と業務委託等の契約を直接に締結した場合において、その就労実態から当該契約を「雇用」と評価したものが見られ、注目される。また、研究者からも、個人請負契約によって公務に従事する者の存在に注意を促す指摘がなされるようになってきている。・・・
 まだほとんどだれも本格的に議論を始めていないテーマではありますが、これから結構出てくる可能性もあるように思われ、こういう形で正面から議論をする論文が学会誌に載ったのは大変うれしいことでした。 

 

 

 

 

 

 

 

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コメント

先日は拙著をご紹介いただきありがとうございました。すでにご承知と思いますが念のため書いておくと、国家公務員についても似たような現象があり、在外公館のシニアボランティアについて当職が担当した大阪高裁の判決があります。元人事院の方にその後聞いたところ、在外公館には直用のスタッフが結構いる、とのことでした。

はい、京都地判平27/4/10と、その控訴審大阪高判平28/6/29ですね。
理屈自体は同じですが、国家公務員法の方は、法律上外国人に限って雇用契約の存在を認めているという違いがあります。

改めて判決文を見てみたら、確かに「同訴訟代理人弁護士 渡辺輝人」とありました。

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