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2021年10月15日 (金)

キャバクラは労働者性問題の宝庫

こういう記事がありましたが、

https://www.bengo4.com/c_5/n_13675/(キャバクラの女性従業員は「労働者」、さいたま地裁で和解成立 店が残業代含む「解決金」支払い)

14621_2_1 キャバクラ店で働いていた女性が、店に対して残業代などを請求していた裁判は、さいたま地裁で和解が成立した。

店側はこれまで「業務委託契約のため、残業代等は発生しない」という主張を続けたが、女性の「労働者性」を認める内容を和解条項に盛り込み、未払い分を解決金として支払うことが定められた。

女性側は10月14日、都内の会見で「キャバクラ店で働く女性は、労働者としての待遇を受けられないことが多い。労働者性が認められたことで、残業代や、深夜割増賃金なども会社が支払うべきだと明確にされた」とした。・・・・・

判例集だけ見てるとあんまり気が付きませんが、このキャバクラをはじめとする風俗営業適正化法において「接待飲食等営業」と呼ばれているような事業において歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすタイプの接客職というのは、一人親方や運転手と並んで労働者性問題が一杯詰まっている分野なんですね。

Kantoku_20211015084501 これは、私が今年2月に発表した報告書『労働者性に係る監督復命書等の内容分析』において明らかにしたことですが、全国の労働基準監督官の皆さんは結構この手の問題を取り扱っています。

https://www.jil.go.jp/institute/reports/2021/documents/0206.pdf

(イ) 労働者性ありと判断した事案

・監6 その他の飲食店のフロアレディ(申告監督):週1-2回、20時-25時勤務の接客サービスで、出退勤管理はタイムカード形式で行い、賃金は時間給で、指名料は5割、ドリンク代は2割という取り決め、特に契約書を交わすことなく、厚生費(10%)と呼ばれる事務手数料を控除している。申告人から解雇予告(手当)違反の申告があり、被申告人は、「解雇したことは間違いない」と言いつつ、申告人は労働者ではなく個人事業主であると主張。名目上は個人事業主であったとしても、労働者性が否定されるものとは認められないと判断し、解雇予告手当の支払いについて是正勧告。

(ロ) 労働者性なしと判断した事案

・監37 その他の飲食店のフロアレディ(定期監督):ラウンジのホステスやボーイについて、雇用契約ではなく個人事業主として接客等の業務を任せているだけであり、シフトに入ってもらいたい時間帯を依頼することはあっても強制はせず、人手不足の時には開店しないこともあり、税務面も個人事業主として確定申告させている。労働者性を高める客観的資料も確認できず、法違反なしと判断。

(ハ) 労働者性の判断に至らなかった事案

 接客職に係る監督復命書事案で、労働者性の判断に至らなかった事例はない。

(7) 申告処理台帳の事案

(イ) 労働者性ありと判断した事案
・申1 その他の飲食店のフロアレディ(申告監督):深夜割増の賃金未払いの申告。事業主は、申告人は個人事業主として演奏や自分の連れてきた客への接客をしてもらい、報酬を払う契約であると主張。ミュージックパブでバンドボーカル兼ホールスタッフとして勤務し、決められたシフトの時間内には一般の来店客の接客、店の開け閉めや掃除、買い出し等の雑務も事業主から命じられて行い、深夜割増込みで時給1000円で契約していることを総合的に考慮して、労働者性が強いものと判断し、是正勧告。

・申4 その他の飲食店のフロアレディ(申告監督):フィリピンクラブのホステスとして勤務。売上ペナルティの控除が違法との申告。事業主は申告人を個人事業主と主張し、過去は会計士の指示通り申告人に請求書を出させ、それに対して報酬支払後、印紙を貼った明細を渡していたが、面倒になったのでやめてしまい、源泉徴収票に報酬と記載している。申告人の売上が基準額に達しなかった場合に報酬額から控除していた。タイムカードを打刻している。個人事業主契約があったことを証明できないため、労働契約として判断せざるを得ないとして、是正勧告を交付。

・申5 その他の飲食店のフロアレディ(申告監督):解雇予告手当未払いの申告。労働者は男性マネージャー1名だけで、接客するキャスト6-7名は全員外注としているが、契約書はない。勤務は21時-24時半で、報酬は時給2300円とドリンクパックと指名料。キャスト同士のトラブルで契約解除。業務指示に対する諾否の自由があまりなく、報酬も時給制で、一定の労働者性が認められると伝え、予告手当の支払いで終了。

・申7 その他の接客娯楽業のフロアレディ(申告監督):キャバクラのホステスが解雇予告手当と罰金及び名刺代の控除の返還を求めて申告。役務提供契約を結び、税金もそう処理しているが、勤務時間は19:30-26:00(又は27:00)で週3-4日出勤、接客時間に対して時給3000円と同伴・ドリンク手当が当日現金払い。接客時間はキャッシャーが手書きで記録。勤務中は店長の指示に従い、接客時に座る席まで指示され、欠勤には許可が必要で、当日連絡の場合は罰金を払う等、個人事業主として業務委託契約であったと認めるのは困難と判断した。ただし退店のいきさつを解雇とは認めず、罰金と控除の返金を指導。

(ロ) 労働者性なしと判断した事案

・申15 一般飲食店の仲居(申告監督):配膳接客をする仲居として勤務してきた申告人が未払いの残業代を求めて申告。事業場側は申告人を芸能人と同じで雇用契約ではなく、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」という個人事業主に対しての源泉徴収を行っていた。社会保険、雇用保険等の控除をせず、仕事の依頼に諾否の自由があり、勤務時間、出勤日等指定はないことから、労働者ではないと判断し、ただ申告人と同様の勤務形態である仲居については、委託契約書を結び、労働の態様を明らかにするよう指導。

(ハ) 労働者性の判断に至らなかった事案

・申23 その他の接客娯楽業のフロアレディ(申告監督):キャバクラのホステスが解雇予告手当を求めて申告。雇用契約書はなく、就労開始時に日給45000円等の条件を交わしている。事業場側は、店舗という場所を各個人事業主に貸している(「箱貸し」)だけと主張。「来なくて大丈夫ですよ」を断定的に解雇と判断できないため、処理を終了。

・申29 その他の飲食店のフロアレディ(申告監督):ラウンジのママが、賃金から売上不足や調整と称して控除されていると申告。事業場側は申告人が個人事業主と主張。臨検監督を行う前に、会社が一部支払うことで申告取り下げ。労働者性は特定に至らず。

・申31 その他の飲食店のフロアレディ(申告監督):接客キャストが解雇に伴う賃金未払いを申告。キャスト契約書には専属請負契約であることが書かれている一方、所定労働時間は20時-翌2時で、時給2250円と労働者性も見受けられるが、労働者であると断定できないことから、処理を終了。

・申32 その他の飲食店のフロアレディ(申告監督):ホステスが賃金未払いを申告。時給2000円及び指名料1人1500円。事業場側は申告人が個人事業主と主張。出勤を強要したことはなく、営業日はいつ来てもらってもよいが、開店から2時間後の20時以降は受付せず。タイムカードは打刻させていたが、昼に他の事業場で働くことは妨げていない。ただし本人以外のものが来ることは認めていなかった。契約内容が客観的に分かる書面もなく、労働者性を肯定しかねることから処理を終了。

・申33 その他の飲食店のフロアレディ(申告監督):キャバクラのキャストが賃金未払いを申告。勤務時間は20時-25、26時で、フロアキャスト業務請負支払報酬によれば、時給2300円で指名数に応じた時間給やボトルバック、同伴バック、欠勤控除がある。時間管理や欠勤控除など労働者性を補強する要素も認められるが、事業場から申告に係る給料が振り込まれたので処理を終了。

・申40 その他の飲食店のフロアレディ(申告監督):ホステスから賃金未払いの申告。報酬は時給+ボトル注文による歩合制。労働日1週間ごとに本人から希望させ、勤務の指示はしていない。報酬から個人事業主として10.21%の税金を引き、確定申告は本人が行っている。服は自前で準備。月1回程度本人に対し個人事業主であると説明していた。書面契約はなく口頭のみの契約。以上から労働者性があるとは断定できないため、処理を終了。

 

(8) 分析

 伝統的に労働者性に係る問題の一つの焦点となってきた傭車運転手を含む運転手と同数の事案が接客職に見られるというのは、訴訟に至った事案の裁判例を中心に労働者性の問題を見てきた研究者にとってはやや意外に思われるかも知れない。しかし、以上の各事案を概観しても分かるように、こうした風俗営業適正化法において「接待飲食等営業」と呼ばれているような事業において、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすタイプの接客職が、今日における労働者性に係る事案の少なからぬ部分を占めているということは、注目に値する発見であろう。
 一人親方や運転手といった他の職種の事案と比較すると、キャバクラやパブといった歓楽的飲食店の店内で夕方から深夜に至るまで接客しなければならないという業務上の必要性からであろうが、報酬を時給で定めているケースがかなり多く、そのことが個別事案によって違いはあるが、労働者性ありと認めるものが相対的に多くなっていることの背景として存在しているように思われる。しかし、時給制であるにもかかわらず労働者性の判断に至っていないケースも少なくない。接客の具体的態様がいちいち事業場側の指揮監督下にないため労働者性の判断に踏み切れないことがその背景にあるようにも見られるが、時間的空間的に拘束された下で客を歓楽的雰囲気で接待しなければならないという従属性の観点がやや軽視されている感もある。

(9) 労働基準監督行政への示唆

 労働基準監督官が労働者性の判断基準としている1985年の労働基準法研究会報告は、「報酬が時間給を基礎として計算される等・・・報酬の性格が使用者の指揮監督の下に一定時間労務を提供していることに対する対価と判断される場合には、「使用従属性」を補強する」としており、これが接客職に対するやや積極的な労働者性判断をもたらしているようである。一方、事業特性からか、申告者本人や事業場との連絡が必ずしも円滑にいかないケースがまま見られ、労働基準監督官としてはいささか扱いにくい分野なのかも知れない。その意味で、労働者性の紛争がこれだけの事案数に上る職種でもあり、労働基準法研究会報告における傭車運転手等のように、具体的事案として取り上げて当該職種特有の観点も含めて判断基準を示すことも考えられよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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