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2021年10月22日 (金)

定年制があるのは日本だけ?

人事界隈で「なぜ日本にだけ「定年制」があるのか」が話題になっているようですが、この命題の真偽は「定年制」の定義によります。

もし、英語でいう「mandatory retirement age」という意味で言うならば、この問いはそもそも間違った認識の上に成り立っているといえます。一定の年齢で雇用関係を終了するという意味での退職を強制することを「定年制」と呼ぶならば、世界にはそれを禁止している国も増えていますが、依然として一定年齢以上では認めている国もあります。

C4d4f66a こういう話題を見たら、すぐにOECDのサイトで確認する習慣を身につけておきたいものですが、2019年に刊行されたOECDの「Working Better with Age」という統合報告書では、

https://www.oecd-ilibrary.org/employment/working-better-with-age_c4d4f66a-en

その55頁にこのように記述しています。

A careful review of age-specific labour-market regulations or social policy legislation is also required. For instance, several countries have either abolished mandatory retirement ages as a valid reason for terminating labour contracts (Australia, Canada, the United Kingdom and the United States along with two EU countries, Denmark and Poland), or have raised the applicable age limits.
Getting rid of mandatory retirement altogether is not without controversy. In particular, employers often argue that their businesses could not be run as efficiently without mandatory retirement practices. As it is difficult to objectively measure the performance of older workers, mandatory retirement provides an easy mechanism to dismiss less productive workers. Ultimately, it comes down to a point of fairness. Why should someone still performing well be forcibly retired just because of age?

注意深く年齢特有の労働市場規制や社会政策立法を見ていくことも必要だ。例えば、労働契約を終了する正当な理由として定年制を廃止したり(オーストラリア、カナダ、イギリス、アメリカに加えてEUのデンマークとポーランド)あるいはその年齢を引き上げる国もいくつかある。

定年制を廃止するのは論争を呼ばざるを得ない。とりわけ、使用者はしばしば彼らの事業が定年制なしには運営できないと主張する。高齢労働者のパフォーマンスを客観的に測定することは困難なので、定年制はより生産性の低い労働者を解雇するのに容易な手段を提供する。究極的には、これは公正さの問題に帰着する。なぜなおちゃんと成果を上げている者を年齢のみを理由に無理矢理退職させねばならないのか?

読めば分かるように、年齢ゆえにパフォーマンスの落ちた労働者を個々にいちいち指摘せずにまとめて簡単に追い出すために強制退職年齢としての定年制を使う国は、減りつつあるとはいえ、OECDが繰り返し疑問を呈してきているとはいえ、まだ結構あります。

では、「定年制」があるのは日本だけというのは間違いかというと、必ずしもそうとはいえないのです。というのは、今の日本の法体系では、「定年」という言葉はもはや強制退職年齢という意味ではないからです。

このあたりの消息は、拙著『ジョブ型雇用社会とは何か』の第2章の3に詳しく解説しましたので省略しますが、要するに今の日本では法律上認められた強制退職年齢は65歳であって、60歳で年齢を理由に雇用関係を解消してしまうことは許されません。

ところが、依然として圧倒的多数の企業は60歳定年だといって、その時点で賃金労働条件をがくんと下げています。年功賃金で嵩上げされた高給とパフォーマンスが釣り合わないからですが、この「定年」とは強制退職年齢ではなく、労働条件精算年齢に過ぎないのです。そういう意味での「定年制」は、確かに世界中見渡してもその例を見ることはできません。その意味では、確かに、特殊日本的「定年制」は日本だけにしかないので、上記命題は正しいと言うこともできます。ただし、そういう用語法は日本を一歩出るとほとんど誰にも通じないので(つうか、英語でmandatory retirement ageといった瞬間に、そういう意味以外では絶対に認識されないので)、あまり意味のある議論ではありません。

 

 

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コメント

> 労働者のパフォーマンスを客観的に測定することは困難なので、定年制はより生産性の低い労働者を解雇するのに容易な手段を提供する。究極的には、これは公正さの問題に帰着する。なぜなおちゃんと成果を上げている者を年齢のみを理由に無理矢理退職させねばならないのか?
 
「単なる統計差別」と「メンバーの新陳代謝」という違いはあるかな。
前者を認めてるのは「社会全体で面倒を見ている」という理屈ですな。
後者にはそれがないとすると「シバキとしての機能を有する」という。

特殊日本的定年は30才とか、40才とか、でも別にいいんじゃないか、という気はしますね。

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