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2021年9月17日 (金)

EU諸国におけるプラットフォーム労働政策@『労基旬報』2021年9月25日号

『労基旬報』2021年9月25日号に「EU諸国におけるプラットフォーム労働政策」を寄稿しました。

 本紙3月25号に「EUのプラットフォーム労働における労働条件に関する労使への第1次協議」を書いた後、6月15日には労使団体への第2次協議が行われました。その中ではプラットフォーム事業者とそれを通じて就労する者との間の契約が雇用関係であるという反証可能な推定規定とか、司法手続きにおける立証責任の転換(プラットフォーム事業者を通じて就労する者は自動的に雇用関係とみなされるわけではないが、雇用関係が存在する証拠となるごくわずかな基本的事実(プリマ・ファシ)を提示すればよく、その場合その者が真に自営業者であることを立証すべきはプラットフォーム事業の側となる)といった提案がなされており、今年中にも欧州委員会からプラットフォーム労働指令案の提出が見込まれています。
 この第2次協議文書(C(2021)4230)には分厚い職員作業文書(SWD(2021)143)が付いており、加盟各国におけるプラットフォーム労働に対する諸施策や国内裁判所の判決の動向がまとめられています。今後予想される日本における議論にも参考になると思われるので、その一端を紹介しておきましょう。
 プラットフォームを通じて就労する者を対象とした立法を有するのはフランスだけで、2016年のエル・コムリ法により、プラットフォーム企業の保険料負担による任意労災補償、労働組合の権利、教育訓練の権利が認められています。さらに2019年のモビリティ法により、適切な労働条件を定める憲章を作成すれば、運輸業のプラットフォーム就労者を自営業者と認めるという誘導策もとっていましたが、後述のように破毀院(最高裁)は労働者性を認める判決を出しています。
 イタリアでは2019年、フードデリバリーの自営業者に対し、労働条件の通知、出来高給の禁止(時給は労働協約によること)、夜間休日割増などの権利を認める法律が成立しています。スペインの2021年5月の新法は、食料・荷物のデリバリーのプラットフォーム就労者を労働者と推定し、プラットフォーム側に立証責任を転換するとともに、その用いるアルゴリズムやAIについて労働組合に情報提供することを求めるもので、今年末に予想されるEU指令案の先行型と言えます。
 ドイツでも、2020年11月に連邦労働社会省が出した「プラットフォーム経済における公正な労働」において、プラットフォーム就労者の潜在的誤分類に対して挙証責任の転換を検討しているようです。オランダ政府は2020年10月、プラットフォーム就労者を労働者と法的に推定する規定を提起しました。ポルトガルも2020年11月の「労働の未来緑書」で、労働者の地位の法的推定と集団的代表の権利などを提案しています。
 加盟国の国内裁判所の判例の動向も見ておきましょう。こちらもフランスの破毀院(最高裁)が先行していて、2018年11月28日のTake Eat Easy事件判決でフードデリバリーのプラットフォーム就労者を労働者と認めた後、2020年3月4日のUber事件判決でタクシー型旅客運送のプラットフォーム就労者の労働者性も認めました。
 スペインでも2020年9月23日のGlovo事件最高裁判決で労働者性を認めており、さらに同年12月1日にはドイツの連邦労働裁判所がRoamler事件判決で、ガソリンスタンドの商品陳列のマイクロタスクを遂行するクラウドワーカーの労働者性を認めるに至っています。一方、イタリア破毀院(最高裁)は2020年1月24日のFoodora事件判決で、フードデリバリーのプラットフォーム就労者を、労働者でも自営業者でもない第三のカテゴリーの「lavoro eteroorganizzato(異種組織労働)」と判断しています。 既に最高裁判決に至ったのはこれら諸国ですが、ベルギーやオランダでもDeliveroo事件が最高裁に係っており、判決が出るのも間近なようです。
 なおもはやEU加盟国ではありませんが、イギリスの貴族院(最高裁)も2021年2月19日にUber事件判決で自営業者ではなく、(employeeとは異なるイギリス独特の概念である)workerであるとの判断を下しています。ちなみに、アメリカのカリフォルニア州では労働者性を認める最高裁判決の後、それを法制化したギグ法の制定、それをひっくり返す住民投票、さらにそれを違法と断じる高裁判決・・・と、自体が二転三転していますが、ここでは省略しておきます*1
 日本では今年3月に『フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン』を策定し、自営業者(フリーランス)であることを前提にした公正取引委員会による「優越的地位の濫用」規制で進め、労災保険の特別加入で補うという方向に進んでいますが、世界の潮流は必ずしもそれとは一致しない方向に進んでいるようです。 

*1「カリフォルニア州のギグ法」(本紙2020年2月25日号)

 

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