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2021年9月 4日 (土)

建設安全と派遣禁止問題

Sankei_20210904214101 一昨日の産経新聞が「多発する建設現場の死亡事故 「安全軽視」脱却を」という記事を載せていて、全国紙がこういう記事を載せること自体珍しいので、大変いいことだと思うのですが、中にちょっと気になる記述がありました。

https://www.sankei.com/article/20210902-MZW42XNSFNI2XNOBM6DP66QVG4/

・・・構造的な問題もあるとされる。建設業では労働者の派遣が禁止され、元請けが下請けに対して作業の手順など細かい指示を出すことは認められていない。蟹澤教授は「会社を超えた情報や知識の共有が難しいことも背景にある」と話す。

いや、派遣との関係で指揮命令したら偽装請負だというのが流行したのは2000年代の製造業であって、建設業ではずっと長い間労務下請が普通に行われてきたし、労働基準政策もその実態を前提に、労働安全衛生法において、元請会社が下請やその労働者に必要な指示をしろ、下請側はその指示に従えという風にやってきたのであって、いまさら派遣が禁止だから元請が下請に指示できないなんて何馬鹿なことを言ってるんだろう、という話だと思うんですが、なまじそういう経緯をよく知らないと、単純に派遣はいけなくて請負だから指示しちゃいけないんだというおかしな発想が広がってしまうのかもしれません。

Isbn9784589031891_20210904215301 この問題については、2009年のまぼろしの労働法学会(神戸大学)で報告予定だった「請負・労働者供給・労働者派遣の再検討」で簡単に論じていますが、最近は偽装請負論じたいが火が消えたような状態なので、誰もあんまり真面目に考えなくなってしまっているようです。

Ⅰ 歴史的考察
1 労務請負としての労務供給事業
2 戦前期労働者保護法制における請負・労務供給
3 職業安定法と請負4要件
4 戦後労働者保護法制の盲点と労働者派遣法
5 建設労働法制という特異点

6 請負を前提にした労働安全衛生法制
 この点は労働災害補償法制と裏腹の関係にある労働安全衛生法制にも反映している。1964年の労働災害防止団体法は、重層下請関係で行われる事業(建設業と造船業)について、統括管理者の選任や協議組織の設置、作業間の連絡調整、安全巡視など元方事業者の義務を規定するとともに、注文者にも労働災害防止義務を課した。1972年の労働安全衛生法はこれを受け継ぎ、元方事業者による統括安全衛生責任者の選任が規定した。そして2005年の労働安全衛生法改正により、これが製造業一般に拡大された。すなわち、製造業等の事業の元方事業者に対しても、混在作業によって生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡調整、合図の統一等必要な措置を講ずる義務を課すとともに、分割発注の場合の発注者にも、この措置を講ずるべき者を一人指名することとされている。
 
Ⅱ 請負・労働者供給・労働者派遣の統一的理解に向けて
1 「偽装請負」の再検討
2 登録型派遣の本質
3 労働組合の労働者供給事業
4 臨時日雇型有料職業紹介事業
5 労働力需給システムの再構成

252_hp また建設労働法制の詳しい中身については、『季刊労働法』252号(2016春号)に載せた「建設労働の法政策」で紹介しているので、関心のある方はぜひ読んでみてほしいと思います。労働法に相当詳しいと思っている人でも、これも知らなかった、あれも知らなかった、という話がいっぱい出てくるはずです。

1 労災補償から始まった建設労働政策
2 その他の戦前・戦中の建設労働政策
3 労働者供給事業の全面禁止と建設業界
4 労務下請の復活
5 労働基準法と労災保険法
6 失業保険法・雇用保険法
7 災害防止と労働安全衛生法
(1) 建設業労働災害防止協会
(2) 建設業の特別安全規制

(3) 労働安全衛生法
・・・安全衛生管理体制(第3章)は綿密に規定されています。建設業と造船業で重層請負で作業が行われる事業の「特定元方事業者」には「総括安全衛生責任者」を選任する義務が課せられました(第15条)。災防団体法の統轄管理者は法律上は誰でも良かったのですが、今回は「当該場所においてその事業の実施を統括管理する者をもって充てなければならない」ので、概ね所長クラスとなります。また職務も請負人が行う安全衛生教育の指導援助が加えられました。これに対し、請負人の側では「安全衛生責任者」を選任して統轄安全衛生責任者との連絡調整等に当たらせる必要があります(第16条)。
 事業者の講ずべき危険防止措置のうち、建設業に関係するところを見ていくと、「元方事業主の講ずべき措置等」(第29条)が、関係請負人及び関係請負人の労働者が当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に「違反しないよう指導を行わなければなら」ず(第1項)、「違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行わなければならない」(第2項)上に、その「指示を受けた関係請負人又はその労働者は、当該指示に従わなければならない」(第3項)と規定しました。職業安定法施行規則第4条第1項は変更なく生きており、そこには「作業に従事する労働者を指揮監督するもの」は契約の形式が請負であっても労働者供給事業になると書かれていますので、さすがに労基研報告のように「指揮監督」とは書けず、「指導」とか「指示」と規定したのでしょう。しかしむしろ労務下請が実態であることを前提として、事実上安全衛生面に限って「指揮監督」させることを目指したものと見るべきでしょう。・・・

(4) 労働安全衛生法の改正
8 建設業退職金共済組合
9 改正建設業法
10 雇用関係近代化への検討
(1) 政府の検討
(2) 建設業界の検討
(3) 労働組合サイドの建設労働法案
11 建設雇用改善法
12 その後の建設労働に関する検討
13 労働者派遣・有料職業紹介のネガティブリスト
14 有料職業紹介事業と労働者派遣事業の部分的導入

 

 

 

 

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